所得拡大促進税制を使うための3つの要件とその税額メリットについて説明しています。

事業規模が拡大し、人材投資を積極的に行っている企業では非常に大きなメリット優遇税制になります。

国内の従業員に支払った給与で、平成24年度の給与額が増加している場合など3つ要件を満たした場合、使うことができる法人税と所得税の優遇制度です。

法人の場合も、個人事業主の方も共に利用できる制度です。

内容が長くなりますが、所得拡大促進税制のメリットと所得拡大促進税制を利用するための3つの要件について説明しています。

 

所得拡大促進税制の税額メリット

所得拡大促進税制の税額メリットの内容は、以下のようになります。

・(当期の従業員への給与額-平成24年度の従業員への給与額)×10%(法人の場合は、地方税を合わせると11%超)

設立1期目、当期で初めて従業員に給与の支給を開始した場合には、次のようになります。

・(当期の従業員の給与額-1)×10%(法人の場合は、地方税を合わせると11%超)の法人税、所得税を控除することができます。

その年の法人税、所得税の20%(資本金1億円以上の法人は10%)が控除できる限度額となります。

この所得拡大促進税制は、税額控除と呼ばれる優遇税制で最終的な法人税、所得税から直接控除する制度になり、給与の実質11%負担減につなげることができます。

仮に、平成24年度の給与額が1000万円で平成29年度の給与額が4000万円の場合、この所得拡大促進税を使った法人税の控除額は最大で次の金額になります。

その年の法人税の控除額=(平成29年度の給与額4000万円-平成24年度の給与額1000万円)×11%=330万円

このように事業拡大スピードが速く、利益が多額になっているほどメリットの大きい税制です。

所得拡大促進税制を利用するための3つの要件

但し、この制度を利用するには以下の3つの要件が必要となりますが、この要件が分かりにくく、細かく定められているので、以下で説明していきます。

以下の①~③は国内の従業員に対する給与のみが対象となり、国外の従業員の給与は対象とならないためご注意ください。

①雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が増加促進割合以上になっていること
…大まかには平成24年より当期の役員以外の給与額が3%以上(資本金1億円以上の法人は5%以上)増加していること

②雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること
…大まかには当期の役員以外の給与額が前期より増加していること

③平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えること
…大まかには当期の一人あたりの平均給与が前期に比べ増加していること

①~③について以下でその要件について詳しく説明していきます。

①雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が3%(増加促進割合)以上になっていること

簡単に言うと、当期の給与と賞与の合計金額が平成24年度の給与と賞与の合計金額に比べ、3%以上増加していることが①の要件です。

(当期のⅠ雇用者給与等支給額Ⅱ基準雇用者給与等支給額)÷Ⅱ基準雇用者給与等支給額≧Ⅲ増加促進割合3%(資本金1億円以上の場合は5%)

Ⅰ雇用者給与等支給額

雇用者給与等支給額とは、経費として計上されている給与等の金額のことを言います。

具体的には以下のような範囲になっており、年間の給与及び賞与から役員に関して支払った金額を控除した金額になっています。

 雇用者給与等支給額に含まれるもの 雇用者給与等支給額に含まれないもの
・賞与
・非課税枠の交通費(継続適用が条件)
・役員、役員の親族に支払った給与
・退職金
・社会保険料
・給与に充てることを目的として支給された助成金

 

Ⅱ基準雇用者給与等支給額

基準雇用者給与等支給額とは、設立又は事業開始時期が平成25年4月1日より前か平成25年4月1日以降の設立の場合かでⅡ基準雇用者給与等支給額が次のように異なります。

・平成25年3月31日以前の設立又は事業開始の場合…平成24年度(平成25年4月1日以前に開始する事業年度)に支給したⅠ雇用者給与等支給額になります。
この場合、平成24年度に役員しかいなかった場合など従業員への給与が無かった場合には、基準雇用者給与等支給額は1円とすることができます。

 

・平成25年4月1日以降の設立又は事業開始の場合…最も古い年度のⅠ雇用者給与等支給額70%になります。

Ⅲ増加促進割合

増加促進割合とは所得拡大促進税制を利用する条件となる当期のⅠ雇用者給与等支給額のⅡ基準雇用者給与等支給額と比べた最低限の増加割合のことで所得拡大促進税制を利用する年度によって異なります。

平成28年度は3%(資本金1億円以上は4%)、平成29年度は3%(資本金1億円以上は4%)となっております。

設立1期目、当期で初めて役員以外の従業員に給与の支給を開始した場合には、①の要件は自動的に満たすことになります。

 

②雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること

簡単に言うと、当期の給与と賞与の合計金額が前期の給与と賞与の合計金額以上であることが②の要件です。

当期のⅠ雇用者給与支給額≧Ⅳ比較雇用者給与等支給額

Ⅳ比較雇用者給与等支給額

比較雇用者給与等支給額とは、前年度の雇用者給与支給額のことです。

当期の従業員給与が前事業年度の従業員給与を超えている場合には②を満たすことになります。

前期に従業員給与の支給が無い場合には自動的に②を満たすことになります。

①の要件との違いは、雇用者給与支給額を前年度と比較している点になります。

 

③平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えること

この③の要件がこの所得拡大促進税制で一番計算が複雑です。

Ⅴ平均給与等支給額>比較平均給与等支給額(=前事業年度の平均給与等支給額)

簡単に言うと、前期から継続で雇用している雇用保険の対象となる従業員の一人当たりの給与が前期に比べ増加していることです。

Ⅴ平均給与等支給額

平均給与等支給額とは、継続雇用者一人あたりの平均給与額のことです。

継続雇用者とは、当期と前期の両方で給与等の支給がある従業員のこと労働保険の一般被保険者に該当する従業員のことです。
65歳以上で雇用されている者、雇用保険の対象者ですが、高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の従業員は継続雇用者には含まれませんのでご注意ください。

この③の要件を満たすかどうかの計算式は次の図のようになっています。

 

キャプチャ

給与等月別支給対象者数の合計数

継続雇用者給与等支給額の計算対象となっている継続雇用者の月ごとの人数を合計した数です。

同一の月に給与と賞与の支給があった場合には、その月の継続雇用者は1人でカウントされます。

従業員すべてが短時間勤務のパート、アルバイトの場合で労働保険の一般被保険者がいない場合には、上記の計算ができませんが自動的に③を満たすことになります。

まとめ

このようの所得拡大促進税制は、①~③の要件に当てはまるかの判断が複雑ですが、幅広い法人で活用でき、人材投資を積極的に行い、ベースアップを積極的に行っている会社で人員増加が著しい場合にはそのメリットが非常に大きい制度です。

平成30年3月まで利用でき、フルタイム社員の増加数一人当たり40万円の税額控除の雇用促進税制のように事前申請は必要ありません。

決算を控えている法人は計算が複雑になりますので、利用を検討している場合には早めにご準備されてみてください。