節税するなら4年落ちの中古車と新車どちらがお得で有利か 具体的な数値例で解説

税務・節税

4年落ちの中古車と新車どちらがお得で有利かについて、節税効果など具体的数値の事例で解説しています。

「4年落ちの中古車は、1年で全額を経費にできるので、節税するなら中古車が有利ですよね‥」

中小企業の経営者の方から良くいただくご質問です。

色んなサイト、You Tubeや書籍で言われており、これまで中小企業の経営者の方とお話ししてきて感じることですが、

中小企業の経営者の感覚的に30%以上が「4年落ち中古車=節税」という認識をもっているのように感じています。

「①今年は利益が出ているし、②減価償却が終わったし、③車検だし、④それなりに乗って飽きてきたし、4年落ちの中古車でも買おうかな?」

そして、早いサイクルで中古車を買い替えた結果、

「色んな車にたくさん乗れるし、多額に節税もできるし、下取り価格もそれなりだし、一石三鳥、やらない手はない」

という感じです。

こんな風に考え、4年落ちの中古車を購入しようとされている中小企業の経営者の方、ちょっと待ってください!!

確かに、個人事業主の方であれば1月に、法人の方であれば期首の月に購入した場合、購入した年に購入金額の全額を減価償却費として経費にできます。

よって、購入した年の税金負担を抑えることは事実です。

300万の新車と4年落ち中古車の節税効果の比較

例えば、法人で4年落ちのレクサスを300万円で期首の月に購入した場合、その年に300万円の減価償却費を経費にすることができます。

(厳密には減価償却費は300万円ではなく、2,999,999円ですが、結果はほぼ変わらないため、話を単純化するために300万円で減価償却費を考えます。)

4年落ちの中古車の耐用年数は1年となるからです。

そして、法人税は、300万円に法人税率(約22%~34%)を掛けた金額分少なくなります。

仮に、所得が400万以下であれば、法人税率は約22%です。

よって、購入金額300万円×法人税率22%=66万円

4年落ちの中古車を購入したことによる節税金額は約66万となります。

「購入した年の税金負担」の観点で考えると4年落ちの中古車は、お得感があります。

しかし、「購入した翌年以降の税金負担」の観点で考えるとどうでしょうか?

・中古車の場合は、先ほどご説明したように購入した年に66万の1年間のみ法人税が少なくなります。

・新車の場合は、購入した年以降、300万円を耐用年数の6年で分割し、減価償却費として経費にすることで、6年間トータルで66万の法人税が少なくなります。

1年目から6年目までの中古車と新車の減価償却費と節税効果は以下の表のようになっています。

単位:万円 購入金額 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 6年合計
中古車 300 減価償却費 300 0 0 0 0 0 300
節税効果 66 0 0 0 0 0 66
新車 300 減価償却費 100 66 44 30 30 30 300
節税効果 22 14.5 9.7 6.6 6.6 6.6 66

300万円の支出に対して、

中古車の1年間のみ法人税66万減少 = 新車の6年間トータルで法人税66万減少

6年トータルの総額で考えると、中古車も新車も節税効果の金額に変わりありません。

4年落ち中古車だと、購入した年のみ66万の節税効果が発生しますが、その後は、節税効果はゼロです。

一方、新車の場合、1年目22万円の節税効果が発生し、その後徐々に金額が小さくなりますが、6年トータルで66万円の節税効果が発生します。

6年間の節税効果の合計で考えると4年落ちの中古車、新車どちらも節税効果に一切違いはありません。

1年間の節税効果のみをもって、「中古車の方がメリット有り!」と判断することは、目先の効果のみにフォーカスしていることになります。

これは、長期的にコストを最小化し、キャッシュを手元により多く残す観点からすると、正しい判断とは言えないと考えています。

節税効果だけで判断していいのか?

では、どちらがお得と言えるでしょうか。

これだけではお得かどうかは判断できません。

車を購入するにあたっては、節税の観点以外にデザイン、走行性能、安全性能、広さなど様々な観点があり、それぞれの観点を総合し、どちらが良いかで判断します。

しかし、長期の視点でコストを最小化し、キャッシュを手元により多く残す観点から考えると以下にような検討が必要だと考えています。

年間コストの低い方がお得

長期の視点でコストを最小化し、キャッシュを手元により多く残す観点から考えると、上記の節税効果を含めた使用期間中の「1年あたりのコスト」が中古車と新車で低くなる方をお得になると判断すべきだと考えています。

つまり、「1年当たり安く乗ることができる」方がお得という考え方に基づいています。

「保有期間中の1年あたりのコスト」とは、具体的には、

1、何年使用するかを見積もり

2、①車両価格、②予定走行距離に基づくガソリン代、③保険料、④修理・点検・車検代、⑤自動車税などのコストを見積もり

3、「1年当たりのコスト」を計算します。

イメージとしては、以下のような感じです。

中古車VS新車 1年あたりのコスト比較 中古車 新車
購入金額 3,000,000円 3,000,000円 0
使用年数 年 3年 5年 2年
使用年数経過時点予想下取り価格 900,000円 1,500,000円 600,000
トータル車両本体価格
購入金額-下取り価格
2,100,000円 1,500,000円 △600,000
使用年数当たり車両本体価格①
トータル車両本体価格÷使用年数
700,000円 500,000円 △200,000
年間走行距離㎞ 5000 5000
燃費 円/ℓ 10 12 2円
ガソリン価格 円 150 150
使用年数トータルガソリン代 225,000円 312,500円 87,500円
年間ガソリン② 75,000円 62,500円 △12,500円
年間保険料③ 100,000円 110,000円 10,000円
年間修理・点検・車検代④ 70,000円 50,000円 △20,000円
年間自動車税⑤ 50,000円 50,000円 0円
1年あたりのコスト ①~⑤合計 995,000円 772,500円 △225,000円

上記の例では、中古車1年あたりのコスト995,000円>新車1年当たりのコスト772,500円となり、

「新車の方がお得」という結論になります。

あくまで架空の数値なので、常に新車がお得になるとは限りません。

4年落ちの中古車と新車の比較のまとめ

ここでは、細かい計算ロジックを説明したいわけではなく、回りくどくなりましたが、

中小企業の経営者の方にお伝えしたいことは「中古車=節税=お得」は成立しないということです。

先ほどの例から、中古であろうが、新車であろうが、トータル節税効果は同じになります。

よって、節税効果は度外視し、純粋に車を購入する=車両に関するコストを最小化する観点で考えるべきです。

そして、そもそも節税目的は「手元により多くのキャッシュ残す」ことだと考えています。

300万円の4年落ちの中古車への支出に対し、66万の節税効果のリターンを得ることは、キャッシュフローの観点で、差引234万円のマイナスになってしまいます。

つまり、4年落ちの中古車を購入を買わない方が、キャッシュフローがより多く残るという結果になります。

費用対効果を合理的に考え、コストを最小化する視点、キャッシュフローを重視した強い会社をつくる大切なポイントだと考えています。

4年落ちの中古車を購入する節税を行う予定の方、ぜひ、再検討されてみてください。

佐藤 修一

佐藤修一公認会計士事務所代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。