こんにちは。

税理士・公認会計士の佐藤と申します。

クラウド会計を本格導入してから7年が過ぎ、250社を超える個人事業主、法人様へクラウド会計の導入を行ってきました。

 

これまで導入させていただいた企業規模は、年商数百万円の個人事業主から年商10億円を超える法人様‥

業種は小売、卸売、メーカー、サービス業、不動産、建設業、物流業、医療系‥

経理未経験の方から経理のベテランの方が入力するケースまで比較的幅広く導入サポートをさせていただいてきました。

最近、「freee(フリー)とマネーフォワード(MFクラウド)会計のどちらを導入したらいいでしょうか?」とのご質問をいただく機会が増えてきました。

今回は、導入に失敗しないためのfreeeとマネーフォワードの機能面、料金面の比較、どんな方がそれぞれ向いているのかについて、利用しているスタッフの声、導入されたお客様との対話の中で感じたことをもとに実務家目線で解説したいと思います。

 

まず最初に大切なことがあります。

クラウド会計は万能でありませんので過大な期待は禁物です!

クラウド会計を導入すれば、何もしなくても経理を行うことができる、経理の周辺業務すべてが楽になることはありませんのでご注意ください。

 

ただ、freee(フリー)とマネーフォワード(MFクラウド)会計いずれも機能面の改善が進み、今や業務になくてはならない会計ソフトになりました。

ともに会計ソフトとして安定感があり、最近は大幅な機能の改善・変更はあまり見れなくなり、会計ソフトとしての機能は一通り備わったと感じています。

しかし、freeeもマネーフォワードも全く異なる会計ソフトで、その機能、操作性は全く異なります。

はまる企業とそうでない企業が全く異なるのです。

 

 

 

新しい会計ソフトの導入にあたっては、これまでの会計データのインポートや勘定科目などの初期設定など結構な時間と手間が生じ、通常新しい会計ソフトの操作になれるまでに数か月の期間が必要となります。

場合によっては、業務フローの変更が生じてしまいます‥

 

もし、導入してみたけど使いにくかった、別のソフトへ切り替えたい‥

新たな会計ソフトを導入する場合、導入までの手間と時間が無駄になってしまい、変更した業務フローの再検討が必要となります。

特に弥生会計ユーザーの方は、弥生会計の入力時間の短縮に便利な仕訳辞書、伝票辞書機能は使っているでしょうか。

まず、弥生会計のユーザーの方は、まず、仕訳辞書、伝票辞書機能をしっかり使いこなすことで入力時間の大幅な短縮につながることがあります。

弥生会計の仕訳辞書・伝票辞書機能の詳しい紹介ページ

 

結論から申し上げますと、マネーフォワードとfreeeのどちらが良いかと聞かれれば、①導入する企業の特徴、②入力する方の好み、③把握したい数字によってその答えは大きく変わります。

企業の特徴、入力する方の好み、把握したい数字の内容は企業ごとに異なるため、マネーフォワード、freeeどちらが自社によりピッタリの機能を持つかどうかによって慎重に判断すべきだと考えています。

 

 

2019年5月8日にマネーフォワード(MFクラウド)は、大きなプラン・料金変更がありました。

今回の比較は改定後の料金でご説明しています。

マネーフォワード クラウドシリーズ(MFクラウド クラウドシリーズ)の料金プランの変更は、月額料金が高くなると同時にこれまで単独だった「会計」「給与計算」「請求書作成」「経費精算」「勤怠管理」「マイナンバー管理」機能、5名分が「会計」とワンセットとなった点です。

6名以上になると、給与が1名当たり300円、経費精算が1名当たり500円、マイナンバーが100円の追加の料金が発生します。

 

一方、freeeは、「請求書作成」機能は、「会計」とセットとなっていますが、「給与計算・マイナンバー管理」は、完全別プランで、経費精算は、プランによっては使えない、又は機能に制限があります。

 

よって、マネーフォワードの場合、5名分の給与計算、勤怠管理、経費精算までプランに含まれ、個人事業主は980円~、法人は月額3,980円~で従業員5名以下の方にとっては、かなり導入しやすくなったと言えます。

 

 

ただ、これだけで判断するのは、お勧めしません。

低価格で利用できる機能の種類が多くても会計ソフトが使いづらいようだったら元も子もありません。

よって、いずれが良いかを判断するにあたっては、やはり核となる会計ソフトとしての機能が自社にあっているかをベースに考えるべきだからです。

 

 

 

料金面の単純比較は難しくなりましたが、2019年5月8日以降の料金面での比較表は以下になります。

マネーフォワード(MFクラウド)とfreeeのプラン別の機能と料金比較

 

プラン・
料金
(税抜)
freee
⇒会計+請求書+経費精算
マネーフォワード(MFクラウド)
⇒会計+請求書+経費精算+給与+マイナンバー
プラン名・料金特徴プラン名・料金特徴
個人
事業主
スターター
月額1,480円
年間一括払い年額11,760円
(=月額換算980円)
⇒確定申告をしたい方向けプラン
経営状況の判断×
確定申告書作成〇
消費税申告書作成×
振込連携×

経費精算×
部門別損益×
電話サポート×
パーソナルミニ
月額980円
年間一括払い年額9,600円
(=月額換算800円)
⇒おすすめプラン
経営状況の判断〇
確定申告書作成〇
消費税申告書作成×
振込連携×

経費精算〇
部門別損益〇
電話サポート×
請求書一括送付不可
スタンダード
月額2,680円
年間一括払い年額23,760円

(=月額1,980円)
⇒おすすめプラン
経営状況の判断〇
確定申告書作成〇
消費税申告書作成〇
振込連携〇
経費精算×

部門別損益×
電話サポート×
パーソナル
月額1,280円
年間一括払い年額11,760円
(=月額換算980円)
経営状況の判断〇
確定申告書作成〇
消費税申告書作成〇
振込連携×

経費精算〇
部門別損益〇
電話サポート×
請求書一括送付可能
プレミアム
年額一括払い年額のみ39,800円        ⇒自分で入力ができる方向け
経営状況の判断〇
確定申告書作成〇
消費税申告書作成〇
振込連携〇

経費精算〇
部門別損益〇
電話サポート○
税務調査立会の税理士紹介サービス有
パーソナルプラス
年間一括払い年額のみ35,760円
(=月額換算2,980円)
経営状況の判断〇
確定申告書作成〇
消費税申告書作成〇
振込連携×

経費精算〇
部門別損益〇
電話サポート○
法人ミニマム
月額2,680円
年額23,760円
(=月額換算1,980円)
経営状況の判断〇
消費税申告書作成〇振込連携×
経費精算×
部門別損益×
電話サポート×  
管理会計×
スモールビジネス
月額3,980円
年間一括払い年額35,760円
(=月額換算2,980円)
経営状況の判断〇
消費税申告書作成〇
振込連携×

経費精算〇
部門別損益〇(~2部門)  
電話サポート×
ベーシック
月額5,280円
年額47,760円      (=月額換算3,980円)
経営状況の判断〇
消費税申告書作成
振込連携〇
経費精算〇
部門別損益〇
(~4部門)
電話サポート○  
管理会計×
ビジネス
月額5,980円

年間一括払い年額59,760円
(=月額換算4,980円)
経営状況の判断〇
消費税申告書作成〇
振込連携○

経費精算〇
部門別損益〇
(3部門~)
電話サポート×
プロフェッショナル
月額47,760円
年額477,600円     (=月額換算39,800円)
経営状況の判断◎
消費税申告書作成〇
振込連携〇

経費精算〇
部門別損益◎
電話サポート〇  
管理会計○

※2023年4月現在

以上のように色んなプランがあり、どのプランが良いか正直分かりにくいです‥

プランを考える時にまず一番に優先すべき事項は、経営を行うにあたって、最低限必要な情報を把握できるかどうかです。

つまり、「月々の売上、原価、経費、利益を比較しながら見ることができ、経営内容の変化を把握することができるか」だと考えています。

 

なぜなら、経営は、日々変化し、日々の行動、アクション、結果が一定であることはまずありえません。

よって、この世で唯一客観的に、経営内容の結果を測ることができる数字の変化は非常に重要だと考えています。

 

この経営内容の変化の把握をすることができる機能があるのは、個人事業主の方でおすすめなのは、freeeは「月額2,680円のスタンダードプラン」、マネーフォワードは、「月額980円のパーソナルミニプラン」です。

また、法人のおすすめプランは、freeeは「月額2,680円のミニマムプラン」、マネーフォワードは、「月額3,980円のスモールビジネスプラン」です。

 

ただし、単純にクラウド会計を確定申告のみに使いたい方には、freeeの「月額1,480円のスタータープラン」、マネーフォワードの「月額980円のパーソナルミニプラン」がおすすめです。

法人で部門損益を把握したい場合には、freeeの「月額5,280円のベーシックプラン」、マネーフォワードは、「月額3,980円のスモールビジネスプラン」がおすすめです。

但し、freeeの「月額5,280円のベーシックプラン」だと5部門以上(共通・本社部門も1部門としてカウント)になると、部門別損益が同時に比較表示できません。
よって、5部門以上になると、「月額47,760円のプロフェッショナルプラン」の加入が必要となるので、注意が必要です。

 

freeeには、法人向けの資金繰りシュミレーション、予実管理などの管理会計など上位機能付きの「プロフェッショナル」プランがあります。

一方、マネーフォワード(MFクラウド)にはこのような上位機能が実装されていないため、機能面での違いが大きくなっており、料金面の単純比較は難しくなってきています。

 

会計ソフト以外の5つの機能・プラン比較

また、会計ソフトとしての機能以外に、①請求書作成、②給与計算、③勤怠管理、④経費精算、⑤マイナンバー管理の5つがあります。

ここでいう勤怠管理とは、スタッフの方が打刻した勤怠情報が自動で給与計算アプリに連携することを言います。

 

freeeは、「会計ソフトfreee」、「人事労務freee」の2つで5つの機能を完結させています。

一方、マネーフォワードは、「マネーフォワードクラウド会計・確定申告」、「マネーフォワード クラウド請求書」、「マネーフォワード クラウド給与」、「マネーフォワード クラウド勤怠」、「マネーフォワード クラウドマイナンバー」、「マネーフォワード 経費精算」となっており、5つのアプリに分けて提供しています。

このように会計ソフト以外の機能のアプリのカバーしている範囲の違いが導入検討を難しくしてしまっているように感じます。

 

会計ソフト以外の5つの機能を比較すると以下の表のようになります。

5つの機能freeeマネーフォワード
請求書作成会計freeeマネーフォワード請求書
給与計算人事労務freeeマネーフォワード給与
勤怠管理人事労務freeeマネーフォワード勤怠
経費精算会計freeeマネーフォワード経費精算
マイナンバー管理人事労務freeeマネーフォワードマイナンバー
連携振込会計freeeなし

 

請求書機能に関しては、freeeは会計に含まれていますが、マネーフォワードは会計とセットでの利用が可能になったので、実質ほぼ変わらないと考えていいと思います。

 

大きな違いは、freeeでは、住信SBIネット銀行・PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)のみの対応ですが、freee上で連携振込が可能なことです。

仕入や各種経費の銀行振り込みの請求書などをfreee上に登録すれば、仕訳が完成し、インターネットバンキングで振り込みができてしまうのです。

 

最初聞いた時は本当かと思いましたが、いざ使ってみるとかなり便利で、かなりすごい機能だと思います。

個人事業主だと、スタンダード以上、法人だとベーシック以上のプランの加入が必要です。

会計ソフトを始めて入力する方にとってつまづきやすい発生仕訳と消込仕訳が自動で作成でき、かつ、振り込みまで行うことができるのです。

特に、スタートアップ時にはお役立ち機能の一つになるのは間違いないと言っていいでしょう!

 

 

クラウド会計の導入とセットを検討することが多いのがクラウド給与計算機能面ではないでしょうか。

給与計算を利用することで、会計処理が自動でできるだけでなく、メールによる従業員への給与明細の支給、社会保険の手続き、年末調整、勤務時間の自動集計・連動、給与振り込みデータの作成などかなりの時間と手間が削減可能です。

給与計算は、可能であれば会計とセットでの導入がお勧めなので、給与計算機能の違いを以下で簡単に比較します。

給与計算、勤怠管理機能の比較

freeeの給与計算アプリ「人事労務freee」は月額2,600円で5名まで無料です。
(2023年4月時点)

給与計算対象者が5名を超えると追加の料金が発生します。

 

人事労務freeeでは、プランが「ミニマム 月額2,600円~ 一人当たり400円追加料金」、「スターター 月額3,900円~ 一人当たり600円追加料金」、「スタンダード 月額5,200円~ 一人当たり800円追加料金」、「アドバンス 月額7,150円~ 一人当たり1,100円追加料金」の4つのプランに分かれています。

勤怠管理を行うことができるのは、「スタンダード 月額5,200円~ 一人当たり800円追加料金」以上のプランとなっています。

アドバンスとなると、個人情報管理承認ワークフローなど各種機能が備わっており、内部統制機能を備え、比較的事業規模が大きくなった場合でも対応可能となっています。

 

 

一方、「マネーフォワードクラウド給与」いずれのプランも5名まで無料となっており、5名を超えると給与計算、勤怠管理で追加料金が発生します。

給与計算の追加料金は、一人当たり300円、勤怠も一人当たり300円となっています。

 

実際使ってみて感じるのは、両者ともに複雑な給与体系の場合には対応できていませんが、

勤怠管理との連携、労働保険料の申告等の社会保険手続き、給与支払報告書まで作成することができる年末調整機能等は、事務工数の面でかなりメリットが大きく、従業員が増えれば増えるほどそのメリットは大きく、会計とあわせてバックオフィス業務を効率化できるツールだと思います。

参照:マネーフォワード(MFクラウド)給与と人事労務freeeの比較

 

ここから最も重視すべき会計・経理面の両社の比較を行いたいと思います。

会計ソフトを選ぶ基準は、「入力にかかる手間と時間」と「見たい数字(経営に必要な数字)をみれるか」の2つの兼ね合いになるかと思います。

 

つまり、費用対効果の検討になります。

費用=手間と時間は、資金の動く量、決済方法、取引量、各企業の経理を行う方のスキル、企業の体制等によって異なります。

そして、効果=どの数字を重視しているのかは、各企業の戦略と各種システム、管理方法によって異なります。

よって、どちらのクラウド会計が良いという絶対的な判断をすることができません。

 

これまで、freeeやマネーフォワード(MFクラウド)の導入にうまくいったケースもあれば、失敗に終わったケースも数多くあります。

導入前の事前検討をどれだけ具体的にできるかによって導入の成功が決まります。

 

これらの経験を踏まえ、2023年4月28日現在のfreee(フリー)とマネーフォワード(MFクラウド)会計を選ぶ際の機能面の比較を以下にまとめました。

現在ニーズだけでなく、今後の経理人員や経理フローの改善を踏まえ、自社の状況にあったクラウド会計選びの参考になればと思います。

よって、まず、freee(フリー)とマネーフォワード(MFクラウド)会計の核となる会計ソフトとしての機能面での違いについて比較してみます。

 

マネーフォワード(MFクラウド)会計と会計freeeの機能面の比較

会計ソフトとしてマネーフォワード(MFクラウド)とfreeeをいずれかを選ぶ際、機能面で比較する場合、以下の2つの基準で判断することなるかと思います。

①入力しやすさ⇒入力方法の比較
②見たい数字をみることができるか⇒各種レポートがどれだけ充実しているか

見たい数字とは、経営上大切な数字はどの数字になるかによって異なります。

例えば、個々の会社によってそれぞれ異なるかと思いますが、部門別のキャッシュフローや取引先別の売上や利益を見て、経営判断をするケースもあれば、マクロな情報である全体の利益=損益計算書のみで足りるケースなど様々です。

会計ソフトとしてどんなに入力しやすくても、見たい数字が見れなければ、せっかく入力しても、その価値は薄れてしまいますし、入力後、見たい数字が見れても入力にものすごい時間と手間がかかる場合には、費用対効果を考えなければいけません。

よって、ここからは、「入力しやすさ」と「レポート・帳票類」の2つに分けてマネーフォワード(MFクラウド)、freeeを比較していきたいと思います。

 

入力しやすさの比較

まず、1つ目の入力方法についてですが、クラウド会計の核となる自動取込機能について比較していきます。

マネーフォワード(MFクラウド)、freeeともに預金口座、クレジットカード明細を自動で取込むことができます。

この預金口座、クレジットカード明細の自動取込機能が、クラウド会計の最大の長所で、この機能を活用できるかどうかがクラウド会計導入のカギになります。

この自動取込機能は、預金口座では通帳に印字されるのと同じ情報(日付、入出金金額、振込先、残高)が、クレジットカードでは紙又はWEB上の明細(日付、利用金額、利用店舗)と全く同じ情報が会計ソフトに取り込まれます。

よって、日付、金額、入出金金額、取引内容を一つ一つ入力する必要が一切なく、勘定科目を選ぶだけで入力が完了してしまいます。

また、勘定科目もAIが働き、自動で推測してくれます。

【freeeの仕訳入力画面】

勘定科目を確認して問題なければ画面右の青い「登録」ボタンをクリックすれば仕訳終了です。

参照:freeeの連携口座の入力方法の詳しい説明

銀行口座、クレジットカードの明細を仕訳していく上でのfreeeの特徴は、取り込んだ銀行口座、クレジットカードの日付、金額を変更できない点です。

一方、マネーフォワードでは、取り込んだ口座、クレジットカードの日付、金額を変更できます。

基本的には、取り込んだ銀行口座、クレジットカードの明細が間違っていることはありません。

正しい銀行口座、クレジットカードの明細について金額、日付を変更してしまう場合、間違った仕訳内容になってしまう可能性があります。

よって、freeeの場合、クラウド会計の核となる銀行口座、クレジットカードに関する仕訳に関して、間違いが生じにくい仕様になっている点がfreeeの良さといえます。

 

【マネーフォワード(MFクラウド)会計の入力画面】

勘定科目が白抜きになっている取引が一度入力したことがある内容です。

この場合、前回の入力した科目に基づき勘定科目を推測したものが表示されます。

青い雲のマークがついた取引は、初めて入力する内容でマネーフォワード(MFクラウド)側が科目を推測したものです。

いずれも画面右の茶色の「登録」をクリックすれば入力完了です。

さらにマネーフォワードでは、複数の明細を一括で仕訳登録ができるため、定型化された入出金が多い場合には、かなりスピーディーに仕訳を入力することが可能です。

 

一方、freeeでは、後でご説明する「自動仕訳機能」を使う場合を除いて1件1件の明細を仕訳することになるため、この点においては、マネーフォワードの方が効率的だと言えます。

この口座連携機能はかなり便利ですが、預金口座の自動取り込みは、どの預金口座でも自動取り込みを行うわけではなく、インターネットバンキングを利用している口座となっているのでご注意ください。

また、クレジットカードの明細取込はWEB明細が事前に閲覧できる状態になっていることが必要です。

以上が自動同期機能の比較になります。

 

ここから両者の入力面での違いについて説明していきます。

両者の入力面の主な違いは以下のようになっています。

freeeとマネーフォワード(MFクラウド)会計の入力面の違い
①freeeは完全自動仕訳が可能
②マネーフォワード(MFクラウド)のクレジットカード明細の取込タイミングが早い
③売掛金や買掛金や給与などの発生仕訳の入力方法が異なる
④freeeは補助科目がなく、取引先や品目というタグを使って取引集計

 

以下ではそれぞれについて細かく見ていきたいと思います。

freeeの自動仕訳機能について

freeeの完全自動仕訳は、取得した明細データから全く操作不要で自動で仕訳作成(=完全自動仕訳機能)することができる機能です。

 

この機能は、freeeが2014年3月に特許を取得しており、マネーフォワード(MFクラウド)にはない機能です。

明細から自動で仕訳の勘定科目を推測する機能はともに備わっていますが、この自動仕訳機能を活用すればfreee上で何にもせず、完全に自動で仕訳が作成されます。

下記の画面から取引の勘定科目を推測するのか、完全自動仕訳にするのかを選択することができます。

 

 

特定の取引先からの売上の入金や特定の取引先への仕入れ代金の支払いや給与や家賃の支払い、借入金の返済、携帯代金、インターネットなど月の入出金の内、決まった入出金パターンが半数を超える企業が多いかと思います。

 

決まった入出金パターンに関する入出金が自動仕訳の対象とすれば、勘定科目を選択し、登録していく作業が無くなり、入力スピードをさらに速くすることができる機能です。

freeeに慣れてくると、この機能を使いこなせるかどうかによって、毎月の入力時間が大きく変わります。

 

マネーフォワードには、勘定科目を推測した仕訳を一括登録する機能はありますが、明細の確認と一括登録の処理を行う必要があります。しかし、freeeの自動仕訳機能によれば一切の処理をすることなく、仕訳を作成することができます。

この自動仕訳機能をうまく使うには自動登録ルール登録をしっかり設定することが大切になります。

よって、初期の設定を上手くできるかどうかがfreeeを使いこなすことができるかどうかのカギになります。

 

クレジットカードの取り込み機能のタイミング等の違い

2つ目のクレジットカードの取り込み機能ですが、両者の違いは、会計ソフト側に自動取り込みが行なわれるタイミングです。

自動取り込みが行なわれたタイミングで会計処理ができるようになるため、取込が早ければ早いほど、月々の利益を早く確定させることができ、取込が遅ければ遅いほど、月々の利益の確定が遅くなってしまいます。

 

マネーフォワード(MFクラウド)会計、会計freeeそれぞれ自動取り込みを行うタイミングは以下のようになっています。

マネーフォワード(MFクラウド)会計freee
クレジットカード明細の取込のタイミング全てのカードが利用の都度日々・ほとんどのカードが支払金額が確定したタイミング
・一部のカードのみ利用の都度日々

マネーフォワード(MFクラウド)の場合、クレジットカードの利用後、日々データを取得することができます。

よって、翌月初には、前月のクレジットカードについてマネーフォワード(MFクラウド)上で経理処理を済ませることが可能です。

 

 

一方、freeeの場合、一部のクレジットカードを除き、1か月分のクレジットカードの引き落とし額が確定後のタイミングでデータを取得することができるので、クレジットカードの引き落とし額の確定後でしか、freee上で経理処理を行うことができません。

仮に15日締めのカードを使っている場合、翌月15日を過ぎてからfreeeに明細を取り込むため、翌月15日を過ぎないとクレジットカードの処理ができません。

この点についてfreeeを利用する場合、月々のクレジットカードの利用金額が小さい方にとって、毎月の利益を計算する上で大きな問題になりません。

しかし、利用金額が大きい方にとっては、クレジットカードの利用金額を加味した利益計算を行う必要性が高いため、月次処理が遅れてしまうことになります。

 

個人的には、この点がfreeeの最大の欠点だと感じています。

ただし、freeeで全てのカードが支払確定のタイミングの取込ではなく、少しずつですが、改善しており、以下のカードは利用の都度の明細の取得が可能となっています。

・アメリカン・エキスプレスカード
・freeeカード(master)
・ライフカード
・VIEWカード
・NICOSカード
・JACCSカード
・MUFGカード
・イオンクレジットサービス
・エポスカード
・出光カード  など

新規登録分のみが反映可能となっており、上記のカードで既にfreeeへ登録済みのカードの場合は、freeeで口座の登録をやり直す必要があります。

クレジットカードの連携について、もう一点大きな違いがあります。

親子カードの連携についてです。

親子カードとは、1つの契約で複数カードを発行した場合のカードになります。

この親子カードの明細の取得については、マネーフォワードでは、全ての親子カードともに取得できるのに対し、

freeeでは、一部のカードを除き、主契約のカードの明細しか取り込むことができません。

この点を踏まえても、やはり、クレジットカード全般について、マネーフォワードの方が優れていると言えます。

 

 

売掛金、買掛金、給与などの発生仕訳の入力方法

3つ目の入力面での違いは、売掛金や買掛金や給与など、発生仕訳の入力方法です。

経理の基本ルールは、請求のタイミング、納品時点、サービスの提供があったタイミングで売上や経費を経理処理することなります。

通常、請求のタイミング、納品時点、サービスの提供があったタイミングの後にお金が動くため、入出金前に経理処理を行う必要があります。

分かりにくいかと思いますが、この入出金前に行う経理処理を発生の仕訳と言います。

 

マネーフォワード(MFクラウド)の売掛金や買掛金や給与など発生の仕訳の入力画面は以下のようになっております。

振替伝票形式で、会計ソフトになじみのある方、経理経験者にとっては、分かりやすい入力画面となっています。

一方、経理未経験者の方にとっては、ハードルが高い入力内容だと思います。

 

freeeの売掛金や買掛金や給与などの入力画面は以下のようになっています。

入力項目に「借方」「貸方」がありません。

経理経験者の方にとって、最初は一番とまどう入力方法です。

一方、借方、貸方が出てこないため、簿記の知識をそこまで必要とせず、経理未経験の方にとっては、入力しやすい項目となっており、freeeは経理未経験の方でも入力ができてしまいます。

そしてここからは専門的な内容になりますが、実務ではかなり使える機能になります。

通常、発生仕訳の入力を行う場合、発生仕訳を作成し、入出金時に消込仕訳を入力することになります。

例えば、5月末の社会保険料を6月末に支払う場合、5月末と6月末に以下のような2つの仕訳を入力することなります。

①5月末 法定福利費 ×× / 未払金 ××

②6月末 未払金 ×× / 現金預金 ××

freeeでは、①の仕訳を②を入力する時点で簡単に作成する機能があります。

つまり、freeeでは、連携した入出金明細から売掛金、買掛金などの発生仕訳を自動で作成する機能があるのです。

仮に②の6月末時点の社会保険の支払を処理する際、取得した明細の「詳細」をクリックします。

すると以下の画面が表示されます。

 

「発生日」を5月31日に変更すると、以下の仕訳が完成します。

①5月末 法定福利費 168,000 / 未払金 168,000

②6月末 未払金 168,000 / 現金預金 168,000

よって、マネーフォワード(MFクラウド)の場合は、①の仕訳を振替伝票より作成が必要となりますが、freeeの場合には、①の仕訳の作成が必要なくなります。

これはfreeeならではの機能で、この発生仕訳作成機能を使いこなせればかなり入力が楽になります。

 

freeeは補助科目ではなく「取引先」「品目」で取引集計

マネーフォワード(MFクラウド)にもみられる通常の会計ソフトで利用する補助科目という概念がfreeeにはありません。

補助科目とは、勘定科目の内訳のことです。

取引先別だったり、勘定科目の内訳を事業を行う上で大切な金額を集計するために使っていきます。

freeeでは補助科目の代わりに「取引先」、「品目」、「メモタグ」というタグを使って取引を分類、集計していきます。

ちなみに「取引先」、「品目」、「メモタグ」は以下のように使い分けると便利です。

「取引先」:貸借対照表の内訳集計、具体的には売掛金、買掛金の取引先集計、未払金、預り金などの内訳集計
「品目」:損益計算書の内訳集計、具体的には、売上や仕入の種類別の集計、費用で重要な内容の集計
「メモタグ」:プロジェクトごとの損益集計、得意先別の利益計算、現場別の利益計算

これらを使う場合、これまで会計ソフトでは見えてこなかった情報が数多く見えてくることになります。

特に、WEB関係で複数のプロジェクトが並行して進んでいる場合などの案件ごとの利益計算にはかなり便利な機能です。

しかし、入力項目が増えるため、入力の手間と入力内容が整理できないとデータがぐちゃぐちゃになってしまう可能性があるのでご注意ください。

このfreeeのタグ機能を駆使しようする場合には、まず、なぜその数字を見る必要があるのかなど入力の目的を明確にして、入力ルール明確にする必要があります。

ここまでは入力しやすさ、入力方法の違いについて比較してきましたが、ここからは、入力した結果がどのように分析、集計されるか、数字を経営判断に生かすうえで重要なレポート類の比較をしてみたいと思います。

 

マネーフォワード(MFクラウド)会計とfreeeのレポート面の比較

まずは、マネーフォワード、freeeで出力することができる各種帳票・レポート類は以下のようになっています。

帳票・レポート名内容
試算表特定の期間の貸借対照表・損益計算書
月次推移月ごとの貸借対照表・損益計算書
前年比較前年同期の貸借対照表・損益計算書の比較
部門別損益部門別の貸借対照表、損益計算書

 

これらは経営を行う上で必要最低限の帳票・レポート面で、大きな違いはないように思いますが、レポート面が充実しているのは、freeeだと思います。

freeeでは、収入と費用それぞれ、取引先別、品目別、部門別に集計ができ、集計期間は、1か月~12か月と自由に設定でき、カラフルなグラフを使っておりレポートが分かりやすいからです。

また、マネーフォワード(MFクラウド)もfreeeも共に経営を行う上で重要になるキャッシュフローの基礎的な分析資料となる月々のキャッシュフロー計算書を作成することができます。

マネーフォワード(MFクラウド)の場合は、帳票からは詳しい増減理由を把握することができませんが、freeeの場合、キャッシュフローの増減理由を詳しく分析できるため、キャッシュフローの分析レポートとしては優れていると思います。

 

 

freeeとマネーフォワード(MFクラウド)会計の違いのまとめ

これまでご説明した内容とその他、細かい点も含まれますが、クラウド会計ソフトとしての違いについてまとめてみました。

マネーフォワード(MFクラウド)freee
特徴ベーシックな会計ソフト
初期設定が楽、慣れるまで時間がかからない
従来の会計ソフトと仕様が大幅に異なる
慣れるまで時間がかかるが、初期設定をきちんと行い、慣れれば使いやすい
他の会計ソフトからの乗り換え
他の会計ソフトから乗換しやすいよう設計
経理未経験者にとっての使いやすさ
簿記の知識をベースとした入力方法

簿記の知識が無くても入力できるよう設計
仕訳推測機能
完全自動仕訳機能
全くの操作不要で仕訳を作成することができます
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⇒特許を取得しており、freee完全独自機能
分析機能
試算表・月次推移分析・前期比較・部門管理可能

マネーフォワード(MFクラウド)と同様分析可能
加えて取引先別、品目別、プロジェクト・案件別の利益管理が可能
月次のキャッシュフロー計算書が使える
外貨PayPal連携
eBayセラーの方におすすめ
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連携・データ取得スピード
預金・クレジット・タブレット型POSレジエアレジ・ユビレジ・スマレジ等)連携
即日データ取得

預金・クレジット・タブレット型POSレジエアレジ・ユビレジ・スマレジ等)連携
預金・POSレジは即日データ取得可能
クレジットは、カード会社の締日後に取得
確定申告書作成・電子申告
消費税申告書作成
〇
個人事業主プランはパーソナル以上のみ

個人事業主プランはスタンダード以上のみ
特におすすめの業種飲食店、不動産業、建築業、EC飲食店、IT・WEB関係、フリーランス、EC

 

以上のようにマネーフォワード(MFクラウド)、freee同じクラウド会計ですが、細かい点でかなり異なります。

実際には、機能面でもっと異なる点がありますが、専門的になりすぎるのでここでは割愛いたします。

会計ソフトを導入するにあたっては、重視する機能もそうですが、業種、事業規模、お金の動き方、経理をする方の経理経験、自社の経理体制、インターフェイスなど様々な点を考慮する必要があるかと思います。

 

これまで100社以上マネーフォワード(MFクラウド)もfreeeも同じ数ほどのお客様で導入し、両者非常に優れたクラウド会計だと感じています。

しかし、メリットばかりではなく、デメリット、導入時の大変さがあるのは事実で、過大な期待のもとにクラウド会計を導入すると導入に失敗する原因になりかねません。

参照:クラウド会計導入のデメリット、導入時の注意点について

また、弊所では、マネーフォワード(MFクラウド)、freeeの導入サポートを行っており、顧問契約が無いお客さまでもお申込み可能です。

参照:マネーフォワード(MFクラウド)会計初期導入サポートサービスについて

参照:会計freee初期導入サポートサービスについて

お気軽にご相談ください。