このブログでは、年間400人の確定申告を行っている税理士が、個人事業主の方向けに、確定申告を手間と時間をかけずに簡単に行う方法について解説しています。

「事業所得」の申告を行う際の説明になるため、不動産オーナー、株式投資を行っている方、不動産の売却を行っている方に参考になりませんのでご注意ください。

これから説明するのは、内容は以下の通りです。

  1. 確定申告って個人事業主にどんな影響がある?
  2. おすすめの会計ソフトランキング
  3. 手抜き経理のすすめとその方法
  4. 個人事業主のお金が残る節税と残らない節税
  5. 個人事業主が確定申告から使える生活費を計算する方法

 

目次

確定申告ってなに?

まず、確定申告とは何かを説明します。

確定申告とは、皆さん自身が、1年間の売上、経費、利益を計算し、
いくらの税金を納めるかを税務署(国)に申告し、納税する手続きです

 

サラリーマンの場合、会社が収入や税金を計算し、納税と申告してくれます。

一方、個人事業主の方は、確定申告を自分で行うことで税金を計算し、1年に1回、所轄の税務署に対して納税と申告する必要があります。

確定申告のスケジュール

 

確定申告は、昨年の1月1日~12月31日にかかる税金を計算し、毎年2月16日~3月15日まで税務署に提出します。

T~始まる13桁の番号を取得し、インボイスを発行している適格事業者の方は、消費税の申告も必要で、消費税の申告は3月31日までに行う必要があります。

 

確定申告の期限に遅れるとどうなるか

3月15日の確定申告の期限に遅れると次の3つのデメリットがあります。

1.青色申告特別控除65万円が10万円へ減額
年間税金の合計負担が14.5~35万円も増加してしまいます。

2.ペナルティの税金が発生
申告遅れによるペナルティ‥無申告加算税‥5%
納付遅れによるペナルティ‥延滞税‥年利2.6%

3.税務調査のリスクが高まる
申告が遅れてしまうと、特に地方の税務署では目立ってしまうためです。

確定申告によって決まる主な6つのこと

確定申告によって決まるのは、所得税だけですが、その後の色んな支出など以下の6つの事項に対して影響があります。

1.5つの税金

その年度に支払う所得税(税率5%~55%)、住民税(税率10%)、国民健康保険料(税率約13%)、事業税(税率5%)、消費税(税率10%)の5つの税金が確定申告によって決定します。

2.事業融資の金額

所得の金額とその内容によって、日本政策公庫や銀行からを事業融資を受ける際の与信が変わってきます。
税金を少なくするために、所得を抑えすぎると、融資が受けにくくなります。

3.住宅ローンの金額
所得の金額によって、住宅ローンの金額の枠が決まることが多いようです。
個人事業主は、サラリーマンに比べ、住宅ローンを受けることが難しいように感じています。
単年度の所得だけでなく、3年平均で計算する金融機関もあるため、住宅購入予定の方は、3年前から所得の金額を一定金額以上にする必要があります。

4.保育料
福岡市では、所得の金額に応じて月額0円~8万円ほどとなっています。

5.私立高校の授業料
福岡市では児童1人の場合所得が896万を超えると支給停止になります。

6.大学、短大の奨学金、授業料・入学金
住民税の非課税世帯では、私立だと年額91万の奨学金、入学金が26万、授業料が70万の支給を受けることができます。

個人事業主の各種税金

 

所得税は、所得が多くなるにつれ、段階的に税率が大きく変化していき、最大45%となります。

課税所得が330万を超えるあたりから税負担を大きく感じるようになります。

所得税20%+住民税10%+事業税5%+国保10%~14%=45%~49%となるからです。

そして、住民税、事業税、国保の発生が翌年6月ごろから各種どんどん税金が発生するため、予めこれらの金額をある程度事前に把握して、準備する必要があります。

 

ここからは具体的に個人事業主の方がどうしたら手間なく楽に確定申告を行うことができるかについて説明したいと思います。

 

手間と時間をかけずに確定申告を行う2つのポイント

確定申告を行うためのポイントはこの2つです。

1.会計ソフトを使うこと
⇒手間と時間をかけずに青色申告のメリットで税負担を抑え、スムーズに申告を行うことができる
2.手抜き経理を行うこと
⇒対税務署の観点で必要最低限の処理を行い、簡単、時短で経理を行う

この2点についてこれから詳しく説明していきたいと思います。

 

個人事業主の方に会計ソフトランキング

会計ソフトを使うならクラウド会計がおススメです。

クラウド会計は、オンライン上で銀行やクレジットカード利用履歴などを取得し、AIを活用し、経理処理することができる会計ソフトです。

クラウド会計をおススメする理由は、以下のようなメリットがあるからです。

・銀行通帳、カード情報を連携することで、情報取得することが可能で入力ミスと入力の手間が大幅減少
・経理⇒確定申告書作成⇒電子申告までスムーズに行うことができる
・エクセルデータ取り込みが容易

個人事業主の方にクラウド会計ソフトランキングは次の通りです。

1位 freee‥簿記や税金知識がない人でも申告までスムーズに誘導
2位 マネ―フォワード確定申告‥口座連携が豊富、EC、ネットショップの方にお勧め

弊所では、freeeもマネ―フォワード確定申告も両方、同じくらいのお客様で使わせていただいております。
両方ともにものすごく使いやすい会計ソフトです。
ここでは、あくまで経理をやったことが無い人が、初めて確定申告を行う際に、どちらがおススメかという弊所スタッフの意見を集め、選ばさせていただきました。

手抜き経理のすすめ

手抜き経理を行い際に、まず、抑えるべきは次の3点です。

1.経費にならないものを知る

2.勘定科目はテキトーでOK

3.年末年始以外は、どんどん入力

これまで、たくさんの個人事業主の方の確定申告を見てきて、間違いやすい点、引っかかってしまっている点になります。

経費にならない支出

1.国民健康保険、年金‥「所得控除」になります

2.借入金の元本金額‥「借入金」という科目を使います

3.2重で経理処理しているケース‥ 振込と請求書、カード明細と領収書、納品書と請求書

4.生命保険料、地震保険料‥「所得控除」になります

5.税金‥事業税以外は経費にすることは出来ません

これらは経費にすることができませんので、経理処理の際、注意してください。

 

勘定科目はテキトーで

よくある質問 「ガソリン代は、車両費か旅費交通費か?」
⇒A.「どっちでもいいです!」

勘定科目を間違えても税金額に影響ありません!
勘定科目の間違いで、税務署のペナルティを受けることはありません!
自分的に何に使ったか分かれば、問題ありません!

⇒税務署の最も関心の高いごとは、「大きな部分で税金の間違いがないか」です。

ミスがない方がいいですが、少額なミスは税金に大きく影響しないので、デリケートにならず、どんどん経理処理を進めてください。

但し、「雑費」や「その他」を使うのはおすすめしませんし、消費税の「原則課税」を選択している人は、少し気にしてください。

次が、よく使う勘定科目とその内容です。

【損益計算書の勘定科目】

使わない科目は表示しないか、削除してしまいましょう!

【貸借対照表の勘定科目】

貸借対照表の科目の間違いは、税金に影響しないため、最初はあまり気にしない!
間違いは事業主貸か事業主借で修正しましょう!

年末年始以外はどんどん入力

年末年始以外はどんどん入力するのですが、まず、その前に会計ルールの原則を説明します。

会計ルールの原則

会計ルールの原則は、入金時に売上処理、支払時に経費処理ではありません。

この点が会計の難しい点です。

「出荷、納品、サービス提供時=売上処理」、「購入時、サービスの提供を受けた時=経費処理」します。

よって、会計ルールの原則では以下のような経理処理を行う必要があります。

・納品・サービス時
5月31日 (借方)売掛金 100 / 売上 100

・入金時
6月30日  (借方)預金 100  / 売掛金 100

これをすべてやるのは大変です。

よって、1月から11月末までは、原則の経理処理は無視します。

1月~11月までは、入金=売上、支払=経費でどんどん経理処理

(借方)現金預金××/(貸方)売上××
(借方)経費科目××/(貸方)現金預金××

12月でもの入出金でも金額が1万~5万円と少額で数の少ないものは、入金、出金時でOK
日付の間違えはOK
月の間違えは、今年の12月末か来年1月など年をまたぐ間違い以外はOK 

「売上ー経費=所得 所得×税率」

所得に対して税金がかかるので年間の所得に大きな間違いがなければ、OKです。

12月の経理処理をしっかりと行う

11月までは、原則を無視して経理処理しますが、12月だけはしっかりと以下のように経理処理です。

1.売上の入力
12月納品、翌年1月以降の入金売上を
(借方)売掛金×× /(貸方)売上 ××
※前年12月納品、今年1月入金売上を
(借方)預金 ××/ (貸方) 売掛金 ××

2.仕入・外注費などの入力
12月納品、翌年1月以降の支払い経費を
(借方)仕入(経費科目) ××/ (貸方)買掛金(未払金) ××
※前年12月納品、今年1月支払い経費を
(借方)買掛金(未払金)  ××/ (貸方) 預金  ××

3.商品在庫の入力
※年初在庫の金額を
(借方)期首商品棚卸高 ××/ (貸方)商品   ××
年末在庫の金額を
(借方)商品    ××/ (貸方)期末商品棚卸高 ××

※初年度は不要で2年目~スタートする経理処理です。

次は、間違いやすかったり、難しい経理処理を説明します。

間違いやすい、難しい経理処理

1.給与の入力 難しい!出来れば
働いた月(例えば12月分1月支給「12月31日」の仕訳登録)
(借方)給与   ××(総支給額) / (貸方)事業主借  ××
(借方)旅費交通費 ××(通勤手当)/

支給時
(借方)事業主借 ×× / (貸方)現金預金 ××
(借方)給与 ××   / (貸方)現金預金 ××

所得税・住民税納付時
(借方)事業主借 ×× / (貸方)現金預金 ××

5.借入金の返済
(借方)借入金  ××(元本金額)/ (貸方)現金預金××(元本+利息)
支払利息 ××(利息金額)

6.減価償却費の入力‥クラウド会計を使えば、自動で計算してくれます
(借方)減価償却費 ×× /  (貸方)車両 ××
/   (貸方)備品 ××

個人事業主のお金が残るおすすめ節税とおすすめしない節税

お金が残る節税とお金が残らない節税はそれぞれ以下のようになっています。

お金が残る節税

・青色申告 16万~35万の節税 赤字の3年繰越
・家事按分 家賃、水道光熱費、ネット・携帯、仕事用服
・領収書を大切に 領収書=お金、100円で30円の節税
・家族への給与(青色専従者給与) 分散と控除
・小規模企業共済 貯金で節税 月額5万30年で650万の節税
・ふるさと納税 2000円で3割の返戻品

お金が残らない節税

・5年落ちの中古車、全額経費になる備品の購入
・倒産防止共済 解約時に課税 4年未満元本割れ

お金が残らない節税をするとどうなるか


30万の経費⇒税金は6万円(20%)減少し、結果的にお金は24万(80%)減少します。

「経費✕税率=税金」

経費を使っても、絶対に税率分しか、税金は減少しません!
つまり、使った経費以上に税金は減少しません!
お金を使った節税をすると、必ずお金が減少します!

個人事業主の使える生活費がいくらか見てみる

所得が増えると「税金」が増えますが、所得が増えても「お金」が増えるとは限りません。

「使える生活費」よりも「使った生活費」の方が小さければ、「お金」は増えていきます。

確定申告から「使える生活費」を計算していきます。

所得と「使える生活費」の関係は以上にようになります。

個人事業主の「使える生活費」の計算はけっこう複雑ですが、「使える生活費」は以下の計算式に各種数字を当てはめればで計算できます。

「使える生活費=所得+65万(青色申告の場合)+減価償却費―借入金の返済額ー税金(所得税・住民税・国民健康保険料)」

詳しい説明はこちら

使える生活費>使った生活費‥お金が増えていく このままでOK!
使える生活費<使った生活費‥お金が減っていく、借入が増えていく
⇒「使える生活費」を増やすか、「生活費」の減らすなどの改善が必要です!

個人事業主の確定申告のまとめ

確定申告は、個人事業主にとって、所得税だけでなく、5つの税金、各種ローン、子育てにかかる支出に大きく影響する手続きです。

また、確定申告によって、個人事業主の方は、年間の損益を把握することができ、税金を踏まえた今後の事業の方針を決める良い機会です。

確定申告は行うことは大変だと思いますが、freeeやマネ―フォワード確定申告を使って、できるだけ手間をかけずにスムーズに確定申告手続きを進めていただくお役に立てれば嬉しく思います。