太陽光発電設備を設置した場合、高額の機械や設備、ソフトウェアを購入・投資した際に、優遇税制を受けることができる場合があります。
優遇税制は、「特別償却」と「税額控除」の選択となっています。
その場合、どちらを選ぶか‥どちらが有利なのか悩まれることがあると思います。
一般的に税額控除の方が有利になるケースが多いです。
どちらが有利か、資金繰りをどれだけ楽にするかで判断します。
理由を詳しくご説明します。
特別償却とは経費の一部の減価償却費を前倒して計算する方法です。
税額控除とは経費の金額には影響せず、直接税金を少なくする方法です。⇒実質的な値引き
いまいち分かりにくいと思います。
実際の説明に入る前に前提として 税金の計算方法は以下のようになります。
売上-経費=所得
所得×税率=仮の税金
仮の税金-税額控除=実際に支払う税金
「特別償却」と「税額控除」では、税金を計算する過程で控除できるタイミングが異なるのです。
ここまでが内容をご説明するための前提です。
以下でどちらが有利か事例で説明します。
【前提】
毎年減価償却前の所得が500万円
取得設備120万円 耐用年数 3年 定額法 特別償却率50% 税額控除率7%
税率23%
表の計算はご興味がある方のみご覧ください。
特別償却を選択した場合 単位:万円 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 3年合計 | 説明 |
①減価償却費控除前所得 | 500 | 500 | 500 | 1500 | |
②減価償却費 | 100 | 20 | 120 | 1年目=120÷3年+120×50%特別償却率 | |
③所得 | 400 | 480 | 500 | 1380 | ①-② |
④仮の税金 | 92 | 110.4 | 115 | 317.4 | ③×23% |
⑤税額控除 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
⑥実際に支払う税金 | 92 | 110.4 | 115 | 317.4 | ④-⑤ |
税額控除を選択した場合 単位:万円 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 3年合計 | 説明 |
①減価償却費控除前所得 | 500 | 500 | 500 | 1500 | |
②減価償却費 | 40 | 40 | 40 | 120 | 120÷3年 |
③所得 | 460 | 460 | 460 | 1380 | ①-② |
④仮の税金 | 105.8 | 105.8 | 105.8 | 317.4 | ③×23% |
⑤税額控除 | 8.4 | 0 | 0 | 8.4 | 1年目=120万円×7%税額控除率 |
⑥実際に支払う税金 | 97.4 | 105.8 | 105.8 | 309 | ④-⑤ |
1年目の税金が「特別償却」を選択した方が、実際に支払う税金は、5.4万円(97.4万円-92万円)低くなっています。
これは特別償却を選択した場合、減価償却費を前倒しで計算しているからです。
⇒目先の資金繰りを考えると「特別償却」の方が有利になります。
しかし、どちらの場合も、3年合計の減価償却費の金額は120万円と変わりません。
一方、3年目までの合計の実際に支払う税金は314.7万円-309万円=8.4万円税額控除を選択した場合の方が低くなっています。
⇒「税額控除」を選択した方が長期的な資金繰りで考えると有利となります。
資金繰りは予測の利益金額、取得資金の金額、借入金が自己資金か、使う税制の特別償却率、税額控除率で変わってきます。
実際には、細かいシュミレーションが必要です。
以上のようにただ目先の税額だけ考え、特別償却を選択すると損をしますのでご注意下さい。
関連記事:特別償却の仕訳についてはこちら

佐藤修一公認会計士事務所代表、合同会社CMA代表
キャッシュフロー経営コンサルタント 公認会計士 税理士
新日本有限監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)の東京事務所で上場企業の会計監査、総務省委託研究経理検査、内部統制構築支援、財務のデューデリジェンスに従事
その後、地元の福岡の中堅の税理士法人にて、中小企業の経営を会計、税務面からサポート
試算表ではキャッシュフローが見えない、経営できないと感じ、キャッシュフローを重視した経営の必要性を痛感し、佐藤修一公認会計士事務所を2013年8月に開業
開業後は、創業期の会社から上場準備会社まで中小企業の成長のための投資に備え、倒産しない、筋肉質の会社を作るためのキャッシュフロー経営の普及、freeeやマネーフォワードなどクラウド会計を使った経理の効率化・スピードアップを図り、経営ビジョンの明確化、実現のためのサポートを行っている
北部九州公認会計士協会所属 登録番号 028716
九州北部税理士会 福岡支部所属 登録番号 125272
経済産業省認定 経営革新等支援機関