中古のマンションを購入して不動産投資を始められた場合、一般的に中古のマンションを購入した金額を「建物」の金額と「土地」の金額に分けて、「建物」の部分の金額を減価償却費として経費を計算することになるかと思います。

新築の「建物」の場合、耐用年数は47年です。

中古のマンションの場合、新築の耐用年数をベースとして一定の計算を行い、耐用年数を計算するため、1年で減価償却費として経費にできる金額は少額になりがちです。

しかし、ある方法を使えば、より短い耐用年数で償却することができて、購入当初により多くの減価償却費を経費とすることが可能です。

マンションの価格には、躯体・屋根・天井・床などの本体部分の「建物」の金額とキッチンやバストイレの給排水設備などの「附属設備」の金額が含まれています。

そして、「附属設備」の耐用年数とは15~18年となっており、「建物」より短い耐用年数となっています。

しかし、中古マンションの場合、「建物」、「附属設備」のそれぞれの内訳金額を見積書や契約書から把握することはできません。

そこで本ブログでは、「再建築費表点数算出表」という表を使い、「建物」にあたる金額を「建物」と「附属設備」に分け、「附属設備」にかかる耐用年数が短くすることでより、減価償却費を増加させる方法ついて解説しています。

これからご説明する方法は、不動産投資をされている方にとって、数少ない節税方法で、その影響は長期に及ぶため、利用できれば、メリットは大きくなります。

例えば年収1,000万円のサラリーマンの方が減価償却費を100万円多く計上できれば、

減価償却費:100万円×(所得税税率23%+住民税税率10%)=33万円

33万円が手元にキャッシュが残り、マンションに投資したキャッシュを早期に回収することができます。

 

まずは、「再建築費評点数算出表」を使った方法との違いが分かるよう、まず、再建築費評点数算出表を使わない通常の減価償却費の計算方法をご説明します。

目次

一般的な中古のマンションの減価償却費の計算をする方法

中古のマンションを購入したときは、投資家の手元にはマンションの売買契約書・売買精算書・所有権移転登記の際の司法書士の報酬の請求書などがあると思います。

この時の減価償却費の計算の手順は以下になります。

  1. 中古のマンションの購入金額のうち家屋部分の「取得価額
  2. A.の家屋部分の中古の「耐用年数」
  3. 家屋部分の「減価償却費」:C=A÷B

 

例えば、マンションの売買金額が7,000万円(家屋:4,500万円・土地:2,500万円)、中古の耐用年数が30年の場合の年間の減価償却費は以下のようになります。

  1. 中古のマンションの購入金額のうち、家屋部分の取得価額の金額:4,500万円
  2. 家屋部分の中古の耐用年数:43年
  3. 家屋部分の減価償却費:A.4,500万円÷B.43年=104.6万円

 

一方、「再建築費表点数算出表」を使った減価償却費の計算方法は以下のようになります。

再建築費評点数算出表とは

再建築費評点数算出表とは市役所などの地方自治体が固定資産税を計算する際に、その地方自治体が計算したマンションの新築時の独自の評価額を記載した表です。

「再建築費表点数算出表」は地方自治体から手に入れることができます。

この表には新築のマンションについて、躯体・屋根・天井・床などの本体部分やエレベーターなどの昇降機設備・キッチンやバストイレの給排水設備などの附属設備の部分ごとに細かく区分されて評価されています。

この評価額を基にマンションの固定資産税の金額が決まります。

再建築費評点数算出表は地方自治体の固定資産税を扱う係に「固定資産評価情報開示請求書」という書類を提出することで調べることができます。

再建築費評点数算出表を使った減価償却費の計算方法の解説

再建築費評点数算出表を使った「建物」と「附属設備」の按分方法

再建築費評点数算出表には購入した中古のマンションについて、新築時の「建物」部分と「附属設備」部分ごとに地方自治体が評価した金額が記載してあります。

例えば、再建築費評点数算出表の記載された「建物」部分の評価額が3,000万円と「附属設備」部分の評価額が2,000万円の場合は新築時の「建物」部分の割合は60%、「附属設備」部分の割合は40%となります。

このようにして「新築時」の「建物」の評価額と「附属設備」の評価額を基に、新築時の「建物」と「附属設備」のそれぞれの割合を求めることができます。

但し、マンションを中古で購入した場合は、「新築時」~「購入時」まで経年劣化しています。

よって、中古のマンションの売買金額をそのまま「新築時」の「建物」部分の割合と「附属設備」部分の割合を使って按分することはできません。

そこで「新築時」の「建物」部分の割合と「附属設備」部分の割合それぞれに「新築時」~「購入時」の経年による劣化分を考慮した補正率をかけることで「購入時」の「建物」部分の割合と「附属設備」部分の割合を求めます。

再建築費評点数算出表を使った減価償却費の計算事例

【前提条件】

中古のマンションの購入金額:7,000万円(家屋:4,500万円・土地:2,500万円)

再建築費評点数算出表の割合:「建物」:60%・「附属設備」:40%

構造:鉄筋コンクリート造

新築時の耐用年数:建物の耐用年数⇒47年、附属設備の耐用年数⇒18年

新築時からの経過年数:5年

中古資産の耐用年数の計算方法は以下になります。

中古資産の耐用年数の計算方法=(新築の場合の耐用年数ー新築時から購入時までの経過年数)+新築時から購入時までの経過年数×20%

上記の式に当てはめると、建物、附属設備に関する耐用年数は以下のようになります。

中古の耐用年数:中古の建物の耐用年数⇒43年、中古の附属設備の耐用年数⇒14年

中古の資産の耐用年数の計算方法の詳しい説明

建物附属設備合計
①再建築費評点数算出表の割合60%40%100%
②新築の耐用年数の償却率0.0220.056
③新築時からの経過年数5年5年
④新築時~購入時の未経過割合

(1-②×③)

89.00%72.00%161.00%
⑤経年劣化を考慮した補正率

①×④

53.40%28.80%82.20%
⑥⑤の数字の合計を100%へ64.96%
(100%÷82.2%×53.4%)
35.04%
(100%÷82.2%×28.8%)
100%
⑦購入時の金額=取得価額

家屋:4,500万円×⑥

2,923万円1,577万円4,500万円

 

以上より、「建物」の金額を2,923万円、「附属設備」の金額を1,577万円として減価償却費を計算していきます。

再建築評価点数算出表を使うことで増加する減価償却費の金額

家屋4,500万円を全て「建物」とした場合の減価償却費の金額と再建築費評点数算出表を使って「建物」と「附属設備」に按分した場合の減価償却費の金額の違いは以下のようになります。

  • 1.全て「建物」とした場合

「建物」の減価償却費:4,500万円÷43年=104.6万円

  • 2.再建築費評点数算出表を使って「建物」と「附属設備」に按分した場合の減価償却費

「建物」の減価償却費:2,923万円÷43年=68.0万円

「附属設備」の減価償却費:1,577万円÷14年=112.6万円

合計の減価償却費:68.0万円+112.6万円=180.6万円

  • 3.再建築費評点数算出表を使うことで増加する減価償却費

2の減価償却費180.6万円-1の減価償却費104.6万円=76.0万円

となります。

再建築評価点数算出表を使った減価償却費の計算方法のまとめ

例えば、年収1,000万円のサラリーマンの方が売買金額7,000万円(家屋:4,500万円・土地:2,500万円)の中古マンションを購入した場合について、家屋部分4,500万円全てを「建物」として減価償却費を計算する場合と「建物」「附属設備」に按分して減価償却費を計算する場合の所得税と住民税を合計した納める税金額の違いは以下のようになります。

年間の減価償却費10年間の減価償却費
①「建物」のみ場合104.6万円1,046万円
②「建物」「附属設備」に按分した場合180.6万円1,806万円
③ 差額(②-①)76万円760万円
④ 年間の税金の差額(③×33%)25.1万円251万円

※所得税は23%、住民税は10%と仮定

以上のように年間の税金負担を25.1万円抑えることができ、10年間で考えると、その節税効果は251万円にもなるので、その効果は、かなりの額になります。

ただ、この方法は、どんな中古マンションの場合でも減価償却費を増加させることができるかという言えばそうではありません。

建物の耐用年数期間中のトータルで考えると再建築費評点数算出表を使う場合もそうでない場合も減価償却費は同額になります。

よって、この方法は、購入当初の減価償却費の金額を大きくする方法で、短期的な税金を抑える方法になります点ご留意ください。