これまで、決算前など利益が出ている時の経営者の言葉で
「税金を払うぐらいなら、従業員に払った方がいい」
「税金を払うぐらいなら、備品などを買った方がいい」
「税金を払うぐらいなら、交際費に使った方がまし」
「税金を払うぐらいなら、倒産防止共済や保険に払った方がまし」
など、聞くことがありました。
これは、税金=見返りのないコストなので、どうせお金が出ていくなら、「税金を支払う代わりに、別のことにお金を使いたい」という思いからくる言葉だと思います。
そして、「税金を支払う代わりに別のことにお金を使う」ことが成立するには、「節税のために使うコスト=節税できた金額」となることが必要です。
つまり、使ったコストを同額の税金が少なくならないと、「税金を支払う代わりに別のことにお金を使う」ことにはなりません。
具体的には、節税のために30万円の費用を使うことで、30万円の税金が減少することが必要となります。
しかし、節税のために30万円の必要を使って、節税できた金額が30万円より少ない金額であれば、「税金を支払う代わりに別のことにお金を使った」ことにはなりません。
具体的に法人税の事例で考えてみます。
法人税は、利益に対してかかる税金です。
仮に、200万円の利益がでている状態だと、21.59%の法人税率で、約43万円の法人税が見込まれるとします。
この時、43万円の法人税を払うぐらいならと思い、合計43万円でPC3台購入したとします。
すると、利益が157万円になり、157万×21.59%=法人税が約34万円になります。
43万円を経費を使って、法人税が43万円→34万円へ9万円減少しました。
結果、節税のために使ったコスト43万>節税できた金額9万となり、節税できた金額より、使ったコストの方が大きくなってしまいます。
43万円の税金を払うぐらいならと思い、43万円の経費を使っても、節税したい金額43万円の21.59%の9万円分しか、節税することができないのです。
単位:万円 | 節税前 | 節税後 | 差額 |
税引前利益 | 200 | 157 | △43 |
法人税 | 43 | 34 | △9 |
税引後利益 | 157 | 123 | △34 |
何が言いたいかというと、今の日本の制度では「節税に使う金額より、節税効果が大きくなることない」、そして、「税金を払うぐらいなら‥」が成立することはありません。
必ず、節税のために使うコスト>節税できる金額となります。
利益に対する税金の節税とコストの話は、法人だと、法人税、個人事業主だと所得税、住民税、事業税、国民健康保険料に関わる話です。
「税金を払うぐらいなら‥」の言葉の前には、「お金を残すために」という目的があります。
そして、「お金を残すためには」は節税しないことが一番です。
上記の例では節税した結果34万円減少しています。
「税金を払うぐらいなら‥」と思った時に、思い返してもらえればうれしく思います。

佐藤修一公認会計士事務所代表、合同会社CMA代表
キャッシュフロー経営コンサルタント 公認会計士 税理士
新日本有限監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)の東京事務所で上場企業の会計監査、総務省委託研究経理検査、内部統制構築支援、財務のデューデリジェンスに従事
その後、地元の福岡の中堅の税理士法人にて、中小企業の経営を会計、税務面からサポート
試算表ではキャッシュフローが見えない、経営できないと感じ、キャッシュフローを重視した経営の必要性を痛感し、佐藤修一公認会計士事務所を2013年8月に開業
開業後は、創業期の会社から上場準備会社まで中小企業の成長のための投資に備え、倒産しない、筋肉質の会社を作るためのキャッシュフロー経営の普及、freeeやマネーフォワードなどクラウド会計を使った経理の効率化・スピードアップを図り、経営ビジョンの明確化、実現のためのサポートを行っている
北部九州公認会計士協会所属 登録番号 028716
九州北部税理士会 福岡支部所属 登録番号 125272
経済産業省認定 経営革新等支援機関