令和元年10月1日から開始する事業年度の法人税の税率が変更になりました。
法人税には、国の法人税、都道府県の法人税、市区町村の法人税があります。
そのうち、今回の税率変更では、引き上げになるもの、引き下げになるものありましたが、結果として0.16~0.39%の法人税率が低下しました。
福岡市に事業所を有し、資本金が1,000万円以下で所得金額が400万円以下の企業の場合、企業が実質的に負担することとなる法人税率が21.76%から21.59%となり、0.26%の低下となります。
法人税率は、本店や支店のある都道府県、市区町村、資本金の金額、所得の金額、拠点の都道府県の数、法人税額によって変わってきます。
ここでは、資本金1億円以下の法人の場合の法人税率について説明しています。
法人の利益にかかる税金は、①法人税(国税)、②地方法人税、③法人事業税、④地方法人特別税(特別法人事業税)、⑤法人県民税、⑥法人市民税の6つに分けられ、これらを合計したものが一般的に法人税と言います
今回の税制改正はこれら6つの内、5つが改正となり、税率が下がったもの、税率が上がったもの、廃止されたもの、創設されたものが含まれており、内容は以下のようになっております。
- 地方法人税の税率の改正⇒法人税率の引き上げ↑
- 法人県民税(法人税割)の税率の改正⇒法人税率の引き下げ↓
- 法人市民税(法人税割)の税率の改正⇒法人税率の引き下げ↓
- 法人事業税(所得割)の税率の改正⇒法人税率の引き下げ↓
- 地方法人特別税の廃止、特別法人事業税の創設⇒法人税率の引き上げ↑
改正がないのは、法人税(国税)のみです。
その他は、全て税率が変更になっています。
地方法人税は、国に納付する税金です。
この地方法人税は、国から地方自治体間の税収格差を埋めるため、地方へ交付します。
今回の改正は、法人が納付する法人税の負担を変えず、地方法人税の負担を増やし、これまで都道府県、市区町村へ直接納めていた税金を少なくすることで、地方自治体の税収格差を埋めるためのものです。
結果的に資本金ごとの令和元年10月1日以降に開始する事業年度の法人税の実効税率は以下のように変化しました。
実効税率とは、所得に対して、実質的に負担することになる税率のことです。
【拠点が2都道府県未満】
所得区分 | 資本金1000万円以下の実効税率 | 資本金1000万円超1億円以下 | ||||
令和元年9月30日以前 | 令和元年10月1日以後 | 税率差 | 令和元年9月30日以前 | 令和元年10月1日以後 | 税率差 | |
年400万円以下の所得 | 21.76% | 21.59% | △0.16% | 21.97% | 21.71% | △0.26% |
年400万円超800万円以下の所得 | 23.63% | 23.40% | △0.23% | 23.84% | 23.51% | △0.33% |
年800万円超の所得 | 34.18% | 33.92% | △0.26% | 34.35% | 34.09% | △0.26% |
所得区分 | 資本金1000万円、3都道府県以上に支店あり | 資本金1000万円超1億円以下、3都道府県以上に支店あり | ||||
令和元年9月30日以前 | 令和元年10月1日以後 | 税率差 | 令和元年9月30日以前 | 令和元年10月1日以後 | 税率差 | |
年800以下の所得 | 25.41% | 25.03% | △0.38% | 25.52% | 25.13% | △0.39% |
年800万円超の所得 | 34.18% | 33.92% | △0.26% | 34.35% | 34.09% | △0.26% |
所得区分 | 資本金1000万円以下、法人税額(国税)1000万円超 | 資本金1000万円超、法人税額(国税)1000万円超 | ||||
令和元年9月30日以前 | 令和元年10月1日以後 | 税率差 | 令和元年9月30日以前 | 令和元年10月1日以後 | 税率差 | |
年400万円以下の所得 | 21.97% | 21.71% | △0.26% | 22.09% | 21.82% | △0.26% |
年400万円超800万円以下の所得 | 23.84% | 23.51% | △0.33% | 23.95% | 23.62% | △0.33% |
年800万円超の所得 | 34.35% | 34.09% | △0.26% | 34.52% | 34.26% | △0.26% |
法人市民税の税率は、市区町村ごと、法人県民税と法人事業税の税率は、都道府県ごとに異なりますが、以下に5つの具体的な税率の変更を福岡県に事業所を有する場合をまとめました。
目次
地方法人税の引き上げ⇒法人税引き上げ↑
地方法人税とは、地方間の財源格差を埋めるため、国に納める法人税です。
地方法人税は、令和元年10月1日以降に開始する事業年度から4.4%から10.3%に引き上げになります。
法人県民税の改正⇒法人税率引き下げ↓
法人県民税は、企業が都道府県に納める税金です。
法人県民税は、国に納める法人税額に対して税率をかけて計算され、法人税割と言います。
法人県民税(法人税割)の税率は、資本金令和元年10月1日以降に開始する事業年度より資本金の金額に関わらず、3.2%から1%下がります。
但し、法人税(国税)が1000万円を超える法人の場合には、4%から1.8%へ下がります。
法人市民税の改正⇒法人税率引き下げ↓
法人市民税は、法人が市区町村に納める税金です。
法人市民税も法人県民税同様、国に納める法人税に対して税率をかけて計算され、法人税割と言います。
法人市民税(法人税割)の税率は、資本金等が1000万円を超えるか超えないかにより税率が異なりますが、一律3.7%下がります。
法人市民税(法人税割)の税率の改正内容は以下のようになります。
法人の区分 | 令和元年9月30日以前に開始する事業年度の法人税率① | 令和元年10月1日以後に開始する事業年度の法人税率② | 税率差(=②-①) |
資本金等の額1,000万円超の法人 | 12.1% | 8.4% | -3.7% |
資本金等の額1,000万円以下の法人 | 11.3% | 7.6% | -3.7% |
法人事業税(所得割)の税率の改正⇒法人税率引き上げ↑
法人事業税とは、企業が事業の際に利用する公共サービスに対して、その公共サービスの経費の一部を負担させるために都道府県に納める税金です。
法人事業税は、企業の所得金額に応じて課税される税金です。
企業の所得金額とは、企業の収益と費用に法人税法上の調整を加えて算定されます。
これは、会計上と法人税法上では認識に違いがあるためです。
法人事業税の税率は、所得の金額によって3つの区分に分かれます。
所得金額が高くなればなるほど、高い税率となります。
この所得区分により異なる税率が適用される企業を軽減税率適用法人と言います。
事業年度末日において、資本金又は出資金の額が1,000万円以上で、かつ3県以上の都道府県に事務所等を有する企業は、所得金額に関係なく、一律の税率となります。
この企業を軽減税率不適用法人と言います。
法人事業税の税率は、今回の改正により0.1%~0.3%上がることになりました。
事業税の税率の改正内容は以下の表のようになっています。
軽減税率適用法人
所得区分 | 令和元年9月30日以前に開始する事業年度の事業税率① | 令和元年10月1日以後に開始する事業年度の事業税率② | 税率差(=②-①) |
年400万円以下の所得 | 3.4% | 3.5% | 0.1% |
年400万円超800万円以下の所得 | 5.1% | 5.3% | 0.2% |
年800万円超の所得 | 6.7% | 7.0% | 0.3% |
軽減税率不適用法人
令和元年9月30日以前に開始する事業年度の事業税率① | 令和元年10月1日以後に開始する事業年度の事業税率② | 税率差(=②-①) |
6.7% | 7.0% | 0.3% |
地方法人特別税の廃止、特別法人事業税の創設⇒法人税率引き下げ↓
地方法人特別税は、法人事業税の地方間における税収の偏りを改善するために一時的に導入された税金です。
令和元年10月1日以降に開始する事業年度以降は、地方法人特別税が廃止され、特別法人事業税が創設されます。
新たに創設された特別法人事業税は、都市部に税収が集中する問題に対処し、地方と都市が持続可能な形で発展するためのものです。
地方法人特別税と特別法人事業税はともに事業税に対してかかる税金ですが、税率が異なるため注意が必要となります。
令和元年9月30日以前に開始する事業年度の地方法人特別税率① | 令和元年10月1日以後に開始する事業年度の特別法人事業税率② | 税率差(=②-①) |
事業税額×43.2% | 事業税額×37% | -6.2% |
事業税額×34.5%(特別法人※の場合) | -8.7% |
※特別法人とは、会社法、一般社団・財団法人法以外の法律により設立した法人です。
しかし、独立行政法人、認可法人、特殊法人、共済組合、特別民間法人は特別法人には含まれません。
また、共同組合・信用金庫・医療法人など、地方税法により法人事業税の軽減措置が適用される法人が含まれます。
令和元年10月1日以降の開始する法人の実効税率の変化について
以上の税率の変更を踏まえ、資本金の金額ごとの法人税の実効税率と支払税率の違いを以下にまとめています。
支払税率と実効税率の違いについて
支払税率とは、所得に対する法人税の割合の事です。
法人の納める法人税の内、事業税は、支払った期に法人の経費にすることができ、経費にすることで法人税を減らす効果があります。
よって、この事業税の法人税を減らす効果を加味し、所得金額に対して実質的に法人の負担する法人税の割合のことを実効税率と言います。
詳しくは、中小企業の実効税率が支払税率より低くなる理由を参照してください。
今回の法人税率の各種改正により法人の実質的な税負担である実行税率がどのように変化するかについて以下でまとめました。(小数点3位以下は四捨五入)
佐藤修一公認会計士事務所代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716)
公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。
(株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。
全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。
総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。