法人の節税保険の解約返戻率がピークの解約がキャッシュを最大化しない理由とベストな解約のタイミングを税理士が解説

税務・節税

佐藤修一

こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。

法人のお客様から加入している一時払い修身保険や養老保険などの貯蓄型の保険の解約のタイミングはいつが良いかのご質問をいただくことがあります。

本ブログでは、「手元に残るキャッシュを最大化」するために、法人で加入している貯蓄型の保険のベストな解約のタイミングについて解説しています。

養老保険や一時払い修身保険とは

養老保険や一時払い修身保険とは、死亡保障と資金の貯蓄の2つの機能がある保険のことです。

保険期間中に亡くなった場合には、死亡保険金が支払われ、

契約期間の途中で解約した時には、解約時点の解約返戻率にもとづき解約返戻金が支払われ、

満期時には、契約にもとづき満期保険金が支払われます。

佐藤修一

解約返戻率が100%を超えるかどうかによって、ベストな解約のタイミングの判断方法が変わります。

解約返戻率が100%を超える場合、ベストな解約タイミングは解約返戻金が最も高くなる時

解約返戻率が100%を超える貯蓄型の保険の場合には、ベストな解約のタイミングは解約返戻率がピークに高くなる時です。

解約返戻率が最も高くなる時期の解約が、手元に最もキャッシュを残すことができます。

解約返戻率が100%未満の場合、ベストな解約タイミングは解約返戻金のピークではない

佐藤修一

結論から申し上げますと、ベストな解約のタイミングは解約返戻率がピークになる時ではありません。

損金処理できる保険は法人税の繰り延べをすることができますが、純粋にキャッシュを増やす効果はありません。

よって、ここで純粋な保険から生じるキャッシュのみに着目して説明します。

課税の繰り延べ効果については詳しくは次のブログで解説しているので良かったら読んでください。

解約するタイミングによって、解約返戻率が異なる

一時払い修身保険や養老保険は、どのタイミングで解約するかによって、解約返戻率が異なります。

解約返戻率とは、払込した保険料に対して、解約時に受け取ることができる割合のことです。

保険によっていろんなタイプがありますが、契約年数の経過に応じて解約返戻率は徐々に高くなっていくのが一般的です。

では、解約返戻率が最も高くなるタイミングが「手元に残るキャッシュを最大化」でしょうか?

解約返戻率が最も高い時に解約するのがベストとは限らない

佐藤修一

「解約返戻金(入ってくるキャッシュ)と払込保険料(出ていくキャッシュ)」の差が一番小さくなるタイミングがベストです!

言葉にすると分かりにくいと思いますので、具体的な事例で説明します。

以下では払込保険料が年間100万円、解約返戻率が契約時60%から14年目まで1%ずつアップして、15年目以降は0.5%ずつアップするとします。

この場合、
①出ていくキャッシュである払込保険料と
②入ってくるキャッシュである解約返戻金の差である
④が最も小さくなる時が
最も手元にキャッシュが残るタイミングになります。

契約返戻率のピークは20年目で、返戻率が89%となっていますが、2000万円の保険料に対して、1780万の返戻金となっており、220万のキャッシュが減少しています。

一方、1年目は返戻率が60%となっており、100万円の保険料に対して、60万の返戻金となっており、40万円のキャッシュが減少しています。

キャッシュの減少が、20年目の返戻率89%の時は220万に対して、1年目の返戻率60%の時は40万円となっており、返戻率の低い1年目に解約した方が減少するキャッシュは小さくなり、手元残るキャッシュを最大化することができるのです。

さらに、15年目以降返戻率は86%から徐々に高くなっているにも関わらず、上記の表の1番右の列である14年目以降は、④減少するキャッシュは大きくなってしまっているのです。

貯蓄型の保険の解約のタイミングのまとめ

以上のように解約返戻率100%未満の保険は、解約返戻率がピーク時に解約してもキャッシュを最大化できるとは限りません。

解約返戻金と払込保険料の差額が最も小さくなるタイミングの解約が最もキャッシュを残すことができるのです。

キャッシュを最大化するためには、「年ごとの払込保険料と解約返戻金の差」を計算する必要があります。

なぜなら、保険会社の資料には「年ごとの払込保険料と解約返戻金の差」の記載がないことがほとんどだからです。

また、「年ごとの払込保険料と解約返戻金の差」の変化が少額になっている場合、いつ解約しても残るキャッシュの差は生じないので、資金繰りの状況をみて解約されるのが良いと思います。

佐藤 修一

税理士法人Accompany 代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。