売上が伸びているのに、お金が残らない会社の共通点

佐藤修一

こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。

売上は前年より増えている。
利益も一応、黒字。
なのに──

・月末になると資金繰りが気になる
・設備投資や人を増やす判断が怖い
・「このまま拡大して大丈夫か?」という不安が消えない

こうした相談は、とても多いです。

そして結論から言うと、
これは珍しい話ではなく、成長している中小企業の多くの経営者が抱える悩みだと思います。


結論:原因は「利益が出ていない」ことではない

売上が伸びているのにお金が残らない会社には、
いくつか共通した「構造」があります。

重要なのは、
「頑張りが足りない」でも
「もっと売れ」でもありません。

会計の使い方が、経営判断に向いていない
──それだけの話です。


共通点①|PL(損益計算書)だけで経営を見ている

多くの会社が、
売上・利益・利益率といった
PL(損益計算書)の数字を中心に経営判断をしています。

もちろん、PLは大切です。
しかしPLは、

「どれだけ儲かった“ことになっているか”」

を示す表であって、

「今、手元にいくら使えるお金があるか」

を教えてはくれません。

PLが黒字でも、
キャッシュが減ることは普通に起きます。


共通点②|粗利“率”だけで判断している

次によくあるのが、
「利益率は悪くないんです」という言葉です。

たしかに、
粗利率・営業利益率は改善している。

それでも苦しくなる理由はシンプルで、
経営を楽にするのは“率”ではなく“額”だからです。

・売上が増えた結果、粗利額はいくら増えたのか
・その増えた粗利額で、人件費・固定費・投資をまかなえているのか

ここを見ずに率だけで判断すると、

「数字は良くなっているのに、体感は苦しい」

というズレが生まれます。


共通点③|人を増やした影響が、後から効いてくる

売上が伸びると、人を増やします。
これは自然な判断です。

問題は、
人件費の影響は“遅れて”出てくること。

・採用直後は戦力にならない
・教育コストが先に出る
・生産性が上がる前に固定費が増える

この間、PLは黒字のままでも、
キャッシュは確実に削られていきます。


共通点④|在庫と運転資金が、想像以上に増えている

売上が伸びている会社で、
よくあるのが 在庫と運転資金の増加です。

・売上が増えた分、仕入れも先に増える
・在庫を切らさないために、以前より多めに持つ
・売掛金の回収より、支払いの方が先に来る

こうしたことが重なると、
利益は出ていても、手元のお金は減っていきます。

特に多いのが、

「売れているから大丈夫」
「回転しているから問題ない」

と思っているケースです。

在庫や売掛金は、
会社のお金が“形を変えて外に出ている状態”です。

売上が伸びるほど、
この部分がじわじわ効いてきます。


共通点⑤|借入金の返済が、毎月じわじわ効いている

もう一つ見落とされがちなのが、
借入金の返済です。

借入をしたときは、
・設備投資
・人員増強
・運転資金の確保

など、前向きな理由がほとんどです。

ただ、返済が始まると話は変わります。

・毎月、一定額の返済が出ていく
・利益が出ていても、返済分は残らない
・返済額が増えるほど、判断に余裕がなくなる

ここでよくあるのが、

「黒字だから大丈夫」
「返せているから問題ない」

という感覚です。

しかし実際には、
借入金の返済は、利益とは別にお金を減らす要因になります。

売上が伸びている局面ほど、
在庫や運転資金と重なり、
返済の負担を強く感じやすくなります。

利益が出ていても、
「返済した後に、いくら残るか」
を見ないと、経営の安心感は増えません。


共通点⑥|お金の役割を分けていない

もう一つ、決定的な共通点があります。

それは、
お金の使い道を分けて見ていないことです。

・事業を守るお金
・投資に使うお金
・借入を返すためのお金

これらを同じ感覚で扱うと、

・何に使っていいお金なのか分からない
・使うたびに不安になる
・判断がすべて重くなる

結果として、
売上が伸びても、経営の安心感は増えません。


まとめ|会計の役割を取り違えると、経営は苦しくなる

多くの経営者は、無意識のうちに
「会計=正しい数字を作るもの」
だと思っています。

しかし、
会計の本当の役割は「判断ミスを防ぐこと」です。

正しい数字があっても、
見る視点を間違えれば、
経営判断は簡単に狂います。

売上が伸びているのにお金が残らない会社は、
努力が足りないのではありません。

会計を“結果報告”で終わらせているだけです。

数字を
「見るため」ではなく
「決めるため」に使えるようになると、
経営の景色は大きく変わります。

佐藤 修一

税理士法人Accompany 代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。