
こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。
「黒字のはずなのに、なぜか通帳残高が減っていく」
「忙しいのに、月末の支払いが怖い」
「売上はあるのに、資金繰りが楽にならない」
飲食店でこの現象が起きる原因は、努力不足ではなく “運転資本(運転資金)” の増加で説明できることが多いです。
特に最近は、現金商売だった飲食店でも
- クレジットカード
- PayPayなどのQR決済
- デリバリー(入金が遅いことが多い)
が増え、「売れた=現金が入った」ではなくなったのが決定的です。
この記事では、飲食店の資金繰りを 運転資本(運転資金) の観点で整理し、
「どこに現金が消えているのか」を数字で特定 → 改善する手順まで落とし込みます。
目次
- 1 1. まず押さえる:利益(PL)と現金(キャッシュ)は別物
- 2 2. 飲食店の運転資本(運転資金)は、この3つで決まる
- 3 3. 飲食店の「売掛金」は、クレカ・PayPayの“未収入金”と考える
- 4 4. 未収入金(入金待ち)は「比率×入金ラグ」で概算できる
- 5 5. PayPayは「通常(月末締め)」をメインに考える
- 6 6. 早期振込(PayPay)は「補足」でOK。資金繰りは良くなるがコストが増える
- 7 7. 食材在庫は“現金が冷蔵庫に入った状態”になる
- 8 8. 買掛金は“今すぐ出ていかないお金”。ただし未来の支払い
- 9 9. 1分でできる:飲食店の運転資金(運転資本)ざっくり計算例
- 10 10. 飲食店の資金繰りを改善する打ち手(優先順位つき)
- 11 11. 週次で回す「飲食店の運転資金ダッシュボード」テンプレ
- 12 まとめ:飲食店の資金繰りは「運転資金(運転資本)」で読むと一気に改善が進む
1. まず押さえる:利益(PL)と現金(キャッシュ)は別物
- 利益(PL):売上・費用が「発生したタイミング」で計上される
- 現金(キャッシュ):口座に「入金」されたら増え、「支払」ったら減る
飲食店は現金売上もありますが、キャッシュレス比率が上がるほど、
“利益は出ているのに現金が増えない” 現象が起きやすくなります。
2. 飲食店の運転資本(運転資金)は、この3つで決まる
飲食店の資金繰りをざっくり掴むなら、まずはこの構造で十分です。
運転資本(運転資金) ≒ 未収入金(入金待ち)+ 食材在庫 − 買掛金(仕入の未払い)
- 未収入金(入金待ち):クレカ・PayPay・デリバリー等で「売れたがまだ入っていないお金」
- 食材在庫:現金が食材に変わって倉庫(冷蔵庫)に寝ている状態
- 買掛金:仕入れているが、まだ支払っていない(=今すぐ現金が出ていない)
そして超重要なのはここです。
運転資本が増えるほど、現金は苦しくなる
運転資本が減るほど、現金は楽になる
3. 飲食店の「売掛金」は、クレカ・PayPayの“未収入金”と考える
飲食店では、請求書取引の「売掛金」よりも、実務上は
- クレカ売上の入金待ち
- PayPay売上の入金待ち
- デリバリー売上の入金待ち
といった 未収入金(入金待ち) が資金繰りに効きます。
4. 未収入金(入金待ち)は「比率×入金ラグ」で概算できる
いちばんブレない基本式はこれです。
未収入金(決済別)= 月間売上 × 決済比率 ×(平均入金ラグ日数 ÷ 30)
- 「平均入金ラグ日数」=売上が立ってから入金されるまでの平均日数
- まずは30日換算でOK(精緻化は後で)
クレジットカードの未収入金(目安)
クレカは契約(決済会社・代行会社・締め日)で入金タイミングが変わるので、記事では
- 「自店の入金日を確認し、平均ラグ日数に置き換える」
- 分からない間は仮置きで 15日(=0.5ヶ月) から始める
という書き方が実務的です。
5. PayPayは「通常(月末締め)」をメインに考える
5-1. PayPayの通常振込は「当月末締め」
PayPayの加盟店向け案内では、通常の振込サイクルは 当月末締めで、入金日は登録する金融機関により変わります。
当月末締めの入金日(公式の案内)
- PayPay銀行:翌日
- その他の金融機関:翌々営業日
- ゆうちょ銀行:4営業日後
また、現在の振込サイクルは PayPay for Business で確認できます。
5-2. PayPay未収入金(通常:月末締め)の“係数”の置き方
月末締めの場合、売上が毎日だいたい均等だと仮定すると、
- 月末までの平均待ち:約14.5日(30日月の場合)
- そこに「翌日/翌々営業日/4営業日後」の入金タイミングが加わる
ので、概算としては “半月ちょい” を基準にすると現場で使えます。
記事としてシンプルにするなら、次の運用が安全です。
- まずは PayPay未収入金 ≒ 月間売上 × PayPay比率 × 0.55(半月ちょい)
- PayPay銀行なら 0.52 寄り
- ゆうちょなら 0.65前後で保守的
※「営業日」のズレがあるので、係数は厳密値ではなく“目安”として使うのがコツです。
6. 早期振込(PayPay)は「補足」でOK。資金繰りは良くなるがコストが増える
PayPayには、通常の振込サイクルを待たずに入金できる 早期振込サービスがあります。
6-1. 早期振込(都度)
任意のタイミングで振込依頼し、依頼日を起点に入金されます(金融機関により翌日〜数営業日)。
6-2. 早期振込(自動)
「当月末締め」ではなく、売上金が 設定金額を超えるごとに自動で入金処理を開始する設定です。
6-3. 早期振込のコスト(重要)
早期振込は資金繰り改善に効く一方で、通常の決済システム利用料に加えて、
- 利用料:0.38%
- 振込手数料:PayPay銀行20円/その他200円(税別)
が追加でかかる、という案内です。
つまり「資金繰り(入金スピード)」を取るか、「コスト」を取るかの経営判断になります。
7. 食材在庫は“現金が冷蔵庫に入った状態”になる
飲食店の資金繰りで見落とされがちなのが 在庫です。
- 仕入れた瞬間:現金が減る
- 売れるまで:現金は戻ってこない
- 廃棄・ロス:戻ってこないどころか消える
在庫は「原価率」よりも、まず 金額と日数で管理すると改善が速いです。
食材在庫(概算)= 1日あたり原価 × 在庫日数
1日あたり原価 ≒ 月間原価 ÷ 30
8. 買掛金は“今すぐ出ていかないお金”。ただし未来の支払い
買掛金(仕入の未払い)があると、その分だけ今月の現金流出が遅れるので、資金繰りは楽になります。
ただし将来払うのは同じなので、延命策としての使い方になりがちです。
買掛金(概算)= 月間仕入 ×(支払サイト日数 ÷ 30)
9. 1分でできる:飲食店の運転資金(運転資本)ざっくり計算例
前提(例):
- 月商:600万円
- 現金:50%(即入金)
- クレカ:30%(平均入金ラグ20日と仮定)
- PayPay:20%(通常:月末締め/係数0.55で仮定)
- 原価率:30%(月間原価180万円)
- 食材在庫:7日分
- 支払サイト:15日
①未収入金(入金待ち)
- クレカ未収入金
= 600×0.30×(20/30)
= 600×0.30×0.666…
= 120万円 - PayPay未収入金(通常:月末締めの目安)
= 600×0.20×0.55
= 66万円
未収入金合計 ≒ 186万円
②食材在庫
- 月間原価180万円 → 1日あたり原価6万円
- 在庫7日 → 6×7 = 42万円
③買掛金
- 180×(15/30) = 90万円
④運転資金(ざっくり)
運転資金 ≒ 186 + 42 − 90 = 138万円
この店は、ざっくり 138万円程度の運転資金が必要になりやすい、という見立てになります。
そして、ここがポイントです。
- キャッシュレス比率が上がる
- 仕入れを前倒しして在庫が増える
- 支払いが早くなる
…このどれかで 運転資金が膨らみ、黒字でも現金が減ることが起きます。
10. 飲食店の資金繰りを改善する打ち手(優先順位つき)
①入金を早める(未収入金を減らす)
- PayPayの振込サイクル・入金日は、まず自店設定を確認(PayPay for Business)
- 通常(月末締め)→ 早期振込を使うかどうかは、コストと資金繰りを比較して決める
- 口座(PayPay銀行/その他/ゆうちょ)で入金日が変わる点を理解しておく
②在庫を減らす(食材在庫を減らす)
- 発注頻度を上げ、ロットを下げる(“持たない設計”)
- 仕込み量を「勘」から「ルール」に(曜日×天候×予約で標準化)
- ロス(廃棄)を“金額”で毎週見える化(ロス率より効く)
③支払いを整える(買掛金を安定させる)
- 支払い日を固定・集約(資金繰り予測が当たるようになる)
- 仕入先と条件交渉(難しいが効く)
11. 週次で回す「飲食店の運転資金ダッシュボード」テンプレ
週1回、これだけ埋めれば「どこが資金を吸っているか」が見えます。
| 項目 | 今週 | 先週 | 増減 | コメント |
|---|---|---|---|---|
| 現預金 | ||||
| クレカ未収入金(概算) | 入金ラグは何日想定? | |||
| PayPay未収入金(概算) | 通常(月末締め)or早期振込? | |||
| 食材在庫(概算) | 在庫日数は? | |||
| 買掛金(概算) | 支払サイトは? | |||
| 運転資金(未収+在庫−買掛) | 増えると資金繰り悪化 |
まとめ:飲食店の資金繰りは「運転資金(運転資本)」で読むと一気に改善が進む
- 黒字でも現金が減るのは珍しくない
- 原因の多くは、未収入金(クレカ・PayPayなど)と食材在庫が作る運転資金
- PayPayは通常「当月末締め」で、金融機関により入金日が変わる
- 早期振込で入金を早められるが、0.38%等の追加コストがある
- 「未収入金を減らす」「在庫を減らす」「支払いを整える」の順で効く
佐藤 修一
税理士法人Accompany 代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。







