
こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。
「売上は悪くないはずなのに、なぜか通帳の残高が増えない……」
「カレンダーの『月末』という文字を見るだけで、胃がキリキリ痛む」
「スタッフの給与と家賃、消費税の支払いが重なる週、本当に乗り切れるだろうか」
飲食店を経営していると、料理や接客のこと以上に、この「数字の不安」が頭を離れない夜があるはずです。
実は、飲食店の倒産の多くは、赤字だからではなく「支払うべき日にお金が足りない」というタイミングのズレ(資金ショート)によって起こります。
特に、キャッシュレス決済が主流になった今、売れた実感が「現金」として手元に残るまでにタイムラグが生じ、資金繰りの難易度はかつてないほど上がっています。
「どんぶり勘定から抜け出したい。でも、難しい会計ソフトは使いこなせない」
そんな悩みを持つ店主のために、「これさえ埋めれば、3か月先のピンチが事前にわかる」最小フォーマットを作りました。
この記事では、PayPayやクレジットカードの複雑な入金サイクルも考慮した「週次13週・資金繰り表」の使い方を、現場目線でどこよりも分かりやすく解説します。
もう、通帳を開くのを怖がる必要はありません。
「先が見える安心感」を手に入れて、今日からまた、自信を持って厨房に立ちませんか。
目次
1. 資金繰り表は「未来の残高」を先に見る表
資金繰り表で見たいのは、シンプルにこれだけです。
- 来週・再来週・来月に、口座残高がいくらになりそうか
- どの週に「最低残高(下回りたくない水準)」を割りそうか
- その前に何をすれば割らずに済むか(支払い調整/入金前倒し等)
飲食店は、季節・天候・イベントで売上がブレます。
だからこそ「月次」よりも 週次で先読みする方が事故が減ります。
ただし、資金繰りに余裕がある場合には「15日単位」「月次」で作成されても問題ありません。
ここでは「週次」で作成する方法を解説します。
2. テンプレの中身(項目)
今回のテンプレは、飲食店の実務でよく使う入出金科目に絞っています。
入金(例)
- 入金:現金売上
- 入金:クレカ等
- 入金:PayPay等
- 入金:デリバリー等
- 入金:その他
支出(例)
- 支出:食材仕入
- 支出:人件費
- 支出:家賃
- 支出:水道光熱
- 支出:広告/販促
- 支出:税金/社保
- 支出:借入返済
- 支出:その他
そして自動で
- 入金合計/支出合計
- 収支
- 期末残高
- 余裕額(期末残高−最低残高)
を計算します。
3. テンプレの使い方(最短手順)
Excel内の「青いセル」が入力箇所です。
- 開始週(週の開始日)を入れる
- 期首残高(現預金)を入れる
- 最低残高(下回りたくない水準)を入れる
- 次の13週分の 入金予定/支払予定を埋める(見込みでOK)
- 期末残高が最低残高を割る週が赤くなるので、その週より前に対策する
13週間なのは、季節変動をカバーしつつ、融資実行までのリードタイムを確保できる最低限の期間だからです。
4. 入金予定の作り方(飲食店で外しがちなポイント)
4-1. 現金売上
現金は基本的に「当日〜翌日」には手元に来ますが、
両替・入金のタイミング(銀行に入れる日)でズレることがあります。
- “現金がある”と“口座にある”は別
→ テンプレは「口座残高」を守る表なので、入金する週に入れるのが安全です。
4-2. クレジットカード
クレカは決済会社・代行会社・契約によって入金日が変わるため、最も確実なのは
- 決済会社の管理画面
- 入金予定通知
- 明細
を見て、入金される週に金額を入れることです。
4-3. PayPay(通常:月末締め)をどう入れるか
飲食店はPayPay比率が上がるほど「売れたのに現金がない」が起きやすいので、資金繰り表に必ず入れます。
PayPayの通常の振込サイクルは「当月末締め」で、入金日は月末日を起点に、登録の金融機関によって異なります。
- PayPay銀行:翌日
- その他の金融機関:翌々営業日
- ゆうちょ銀行:4営業日後
書き方(おすすめ)
- 「その月のPayPay売上(手数料差引後)」が、上記スケジュールで入金されます
- したがって、資金繰り表には “入金される週”にまとめて入れるのが分かりやすいです
振込サイクルはPayPay for Businessで確認できます。
5. 早期振込(PayPay)は“補足”でOK:資金繰りは良くなるがコスト増
通常(月末締め)を待たずに入金したい場合は「早期振込サービス」があります。
早期振込(都度)は、依頼日を起点に入金され、金融機関により入金タイミングが異なります(PayPay銀行:翌日/その他:翌々営業日/ゆうちょ:4営業日後)。
ただし早期振込(都度)には、通常の決済システム利用料に加えて
- 都度振込利用料:0.38%
- 振込手数料:PayPay銀行20円/その他200円(税別)
がかかります。
実務の考え方
- 「資金ショートの回避」が最優先の週だけ、早期振込を使う
- ふだんは通常(月末締め)でコストを抑える
この使い分けが現実的です。
6. 支払予定の作り方(ここを落とすと事故る)
資金繰り表で“漏れやすいが致命傷になりやすい”支出はこのあたりです。
- 税金(消費税・源泉・住民税特別徴収・事業税など)
- 社会保険(納付月・金額ブレ)
- 更新系(火災保険、リース更新、保守、POS等サブスク年払い)
- 設備(冷蔵庫・エアコン・製氷機などの突然死)
- 賞与(払うなら“月割りで準備”しないと苦しい)
まずは「確定している支払い日」だけ先に埋めると、精度が一気に上がります。
7. 資金繰りが赤い週が出たときの打ち手(優先順位)
赤くなった週(最低残高割れ)が見えたら、対策は大きく3種類です。
① 支出を“遅らせる・分ける”
- 仕入の支払いを分割できないか
- 発注を抑えて在庫を寝かせない
- 家賃・業者・リースの支払日の調整(交渉)
② 入金を“早める”
- デリバリーの入金タイミング確認(入金週に反映)
- PayPayの早期振込を「その週だけ」使う
- 法人の宴会・ケータリングがあるなら「前受金」を検討
③ “資金調達”は最後に(でも準備は早め)
- 直前に動くほど条件が悪くなりやすいので、赤週が出た時点で相談開始
(金融機関・制度融資・当座貸越など、状況次第)
8. 更新ルール:資金繰り表は「毎週5分」で回すと効く
資金繰り表は、作って終わりではなく更新して初めて武器になります。
- 毎週、先週分を「実績」に置き換える
- 13週の先まで見える状態を維持する(ローリング)
- 週次で「赤週が消えたか/新たに出たか」を見る
これだけで、資金ショートの確率はかなり下がります。
ダウンロード
Excelテンプレはこちらです(週次13週)。
青いセルに入力すると、合計・残高が自動計算され、最低残高割れの週が赤くなります。
週単位、10日単位、15日単位、月単位と使いやすい単位で使ってみてください。
佐藤 修一
税理士法人Accompany 代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。







