粗利益率だけを追うと儲からない理由|中小企業が本当に見るべき指標は「粗利額」と「生産性」

佐藤修一
こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。

粗利益率(粗利率)は、多くの経営者が当たり前のように見ている重要指標です。

  • 安売りしていないか
  • 仕入条件は適正か
  • ロスや棚卸の問題はないか

粗利益率は確かに大事な“診断指標”です。

しかし——私が数百社の中小企業と向き合ってきた経験から言うと、

粗利益率“だけ”を目的にしている会社は、改善が進みにくく、儲かりにくい。

逆に、粗利額や生産性に視点を切り替えた会社は、利益の伸び方が一段変わります。

1. 粗利益率が大事なのに改善が止まる理由

粗利益率には重要な役割があります。

  • ビジネスモデルの質がわかる(値付け・仕入・構成比)
  • 安売りしすぎていないか見える(ブランド毀損のチェック)
  • 値引き・ロス・棚卸差異の診断

ただし粗利益率は結果指標です。

粗利率が上がっても利益が上がらないことは珍しくありません。

  • 粗利率は改善したのに利益が増えない
  • 会議が粗利率の説明だけで終わる
  • 行動につながらない
  • 具体的な改善アイデアが出ない

理由はシンプルで、

粗利益率には“行動変数”が入っていないから。

2. 「粗利額」を見ると改善は一気に加速する

会社にお金を運んでくれるのは「率」ではなく“額(粗利額)”です。

粗利額はたった1つの式に分解できます。

粗利額 = Q ×(P − C)
  • Q(数量)=営業・販路・回転率・生産能力
  • P(価格)=価格戦略・価値の伝え方
  • C(原価)=仕入れ・ロス・棚卸・製造工程

この式の良いところは、

すべてが行動に直結していること。

粗利率では「明日何をすればいいか」が曖昧ですが、粗利額は明確です。

3. “粗利率は良いのに儲からない”会社の実例

商品 粗利率 粗利額
A 50% 3万円
B 20% 15万円

粗利率だけ見ればAが優秀に見えますが、会社に利益を運んでいるのはBです。

“儲かる商品”は、粗利率ではなく粗利額で決まる。

4. 忙しい会社は「生産性(時間当たり粗利)」で判断が明確になる

すべての会社で使う必要はありません。

ただし「人手不足」「忙しさ」がボトルネックの業種では、
生産性(時間当たり粗利)が最も正しい指標です。

同じ5万円の粗利でも…

  • 1日かけて5万円
  • 2時間で5万円

後者の方が優先度が高いのは明らかです。

建設業・製造業・飲食・サロン・士業など、時間が支配変数になる業種は、

粗利額 ÷ 時間=時間当たり粗利が優先順位の判断軸になります。

5. 指標の“正しい席”を決めると改善が進む

指標 間違った使い方 正しい使い方
粗利率 目的にする 診断(構成比・値引き・棚卸)
粗利額 軽視する 行動(Q・P・C)
生産性 全業務に適用 “忙しい業務”だけで使う

6. では、どうやって粗利益額経営を進めるのか?(実践ステップ)

ステップ1:粗利額の「見える化」をする

  • 商品別・サービス別に粗利額を並べる
  • 「利益に貢献している順」に並べ替える
  • 粗利率の良さではなく、“粗利額の大きさ”を見る

ステップ2:粗利額を Q・P・C に分解する

  • 数量(Q):売れる理由・売れない理由を整理
  • 価格(P):値上げ余地・価値伝達・メニュー構成
  • 原価(C):仕入れ・ロス・工数・棚卸の見直し

ステップ3:優先順位は「Q → P → C」

  • まず数量(Q)を増やせる施策から
  • 次に価値を伝えて単価(P)を高める
  • 最後に原価(C)改善

※行動効果が大きい順。再現性の高い順。

ステップ4:時間が詰まっている業務だけ「生産性」を見る

  • 人手・時間が足りない業務をリスト化
  • 粗利額 ÷ 時間(時間当たり粗利)を計算
  • 優先すべき仕事・やめるべき仕事を選別する

ステップ5:粗利率は“目的ではなく診断”として使う

  • 構成比(ミックス)の変化
  • 棚卸差異・ロス
  • 値引きの影響
  • 仕入れ条件や原価の急変

粗利率は「問題発見の道具」。
改善は粗利額で行う。

7. 結論:粗利率は“診断”。粗利額は“改善”。生産性は“優先順位”。

粗利率を捨てる必要はありません。
ただし“役割”を正しく置くことで、経営判断が劇的にクリアになります。

  • 月次会議の質が上がる
  • 儲かる商品が一目でわかる
  • 具体的な行動に落ちる
  • 優先順位がぶれない
  • 利益とキャッシュが確実に増える

今日からぜひ、
「粗利率+粗利額(+生産性)」の3つの物差しを会社に取り入れてみてください。

佐藤 修一

税理士法人Accompany 代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。