【経理担当者必見】賞与引当金の会計処理を税理士が仕訳例を使って分かりやすく解説

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賞与引当金の仕訳例や計上時の注意点について解説!
佐藤修一

こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。

経理担当者からよく聞く悩みのひとつに、こんなものがあります。

決算時に賞与引当金を立てておいたけど、実際に賞与を払うときってどう仕訳すればいいの?

そもそも賞与引当金って必要なの?支給時にまとめて経費にすればいいんじゃないの?

実際、賞与は「勤務実績」に基づいて発生しているため、支給時にまとめて計上してしまうと、決算の利益が実態とズレてしまいます。

この記事では、経理担当者が迷いやすい「賞与引当金と実際の支給時の仕訳」について、図解を交えて分かりやすく解説していきます。

賞与引当金とは?

賞与引当金とは、決算日までに発生しているが、まだ支払っていない賞与に備えて計上する負債勘定です。

会社が決算書を作成する際、当期の人件費を正しく費用計上するために「将来支払う予定の賞与」を見積もり、当期の費用として処理します。

なぜ賞与引当金が必要なのか

賞与引当金を計上する目的は「費用を正しい期間に対応させる」ことです。


もし計上しなければ、利益が歪んでしまいます。具体例は以下になります。

具体例:賞与引当金あり/なしの比較

  • 決算日:3月31日
  • 賞与支給日:4月10日
  • 賞与額:100万円(3月までの勤務実績に対応)

【ケース①】賞与引当金を計上した場合(正しい処理)

  • 3月期決算で100万円を費用計上(引当金繰入)
  • 翌期の支給時は引当金を取り崩すだけ(利益影響なし)

利益イメージ(3月期の利益200万円の場合)

3月期 利益200万-賞与100万=利益100万
4月期 賞与は引当金で処理 → 利益200万のまま

【ケース②】賞与を支給時にだけ経費計上した場合(誤り)

  • 3月期決算では賞与未計上(利益が多めに見える)
  • 4月期に支給時に100万円を費用計上(利益が少なく見える)

利益イメージ(3月期の利益が200万円の場合)

3月期 利益200万(実態より多い)
4月期 利益200万-賞与100万=利益100万(実態より少ない)

実際の仕訳例

賞与支給時に賞与引当金を振り替える仕訳

・決算時(3月期末)に見積額を計上:

(借方)賞与引当金繰入  100万円  /  (貸方)賞与引当金  100万円

決算期に賞与の金額100万円が費用計上されます。

・翌期、支給時に取り崩し:

(借方)賞与引当金  100万円  /  (貸方)現金預金  100万円

翌期に賞与の金額100万円は費用計上されません。

賞与引当金が多すぎた場合(戻入)

(借方)賞与引当金  100万円  /  (貸方)賞与引当金戻入  50万円
                        現預金  50万円

100万円を「賞与引当金」として会計処理したが、実際に支給したのは50万円で賞与引当金が50万円余った時は、その余った分は「戻入」として利益に戻ります。

賞与引当金が少なすぎた場合(不足分を追加)

(借方)賞与引当金  100万円  /  (貸方)現金預金  150万円
    賞与  50万円

100万円を「賞与引当金」として会計処理したが、実際に支給したのは150万円で賞与引当金が50万円不足した時は、その不足した分については当期の費用になります。

賞与引当金計上する際の注意点

税金計算上、賞与引当金は費用にできない。

法人税法上、賞与引当金は原則として損金算入が認められません。

例:利益500万円の時に100万円を引当金計上した場合

  • 会計上の利益:利益500万円-賞与引当金100万円=400万円
  • 税務上の利益:会計上の利益400万円+賞与引当金100万円=500万円
     別表四で「賞与引当金繰入額 100万円」を加算

結果、税務上の利益は引当金を計上しなかった場合と同じになります。この税務上の利益を基に法人税は計算されるため、賞与引当金を有無で法人税の金額が変わることはありません。

毎月計上する

賞与引当金は、決算時にまとめて計上するのではなく、毎月見積りを行って繰り入れるのが実務的に望ましいです。

例:年間120万円の賞与を見込む場合

  • 毎月の仕訳
賞与引当金繰入  10万円  /   賞与引当金  10万円

賞与の社会保険料も考慮する

賞与には社会保険料(厚生年金・健康保険など)がかかります。
たとえば賞与100万円に対して15%の社会保険料(会社負担分)が発生するなら、約15万円の追加費用を見積もる必要があります。

賞与引当金繰入 115万円  /  賞与引当金 115万円

まとめ

賞与引当金は適切な期間に適切な費用を計上して、正しい利益を計算するために計上します。ただ、

  • 実際に支給するときは「引当金の振替」を行う
  • 見積過大なら「戻入」、見積不足なら「追加費用」
  • 税金計算上では費用として認められない。
  • 毎月計上と社会保険料の考慮も忘れない

など、賞与引当金の仕訳を計上する事で、注意する点がたくさん出てきます。会計事務所・税理士事務所に相談しながら会計処理を進めていくのがおすすめです。

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佐藤 修一

税理士法人Accompany 代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。