立替金を請求する時、請求書に記載する消費税の書き方は?税理士が解説!
税務・節税


こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。
今回は「立替金」と「消費税」の関係についてご説明します。
①立替払いをした(当社が取引先の代わりに支払った)。②立替払いをしてもらった(当社が取引先に支払いを立て替えてもらった)。
これらの取引について消費税の区分は課税取引になるのでしょうか。課税取引になるのであれば、当社がなるのでしょうか。それもと取引先がなるのでしょうか。
意味をよく理解せずに処理をするとうっかりミスをしてしまいかねません。
後半では、インボイスについても少し触れますので最後まで読んでいただけると幸いです。
是非、参考にされてください。
立替払いをした場合
通常、立替払いをした場合、課税取引にはなりません。
具体的な例を挙げてみると、次のような取引が考えられます。
- 取引先のために交通費や宿泊費を立替えて、領収書を添付して精算する場合
- 弁護士、税理士、コンサルタントなどが依頼人に代わって実費を立て替えた場合(実費弁償)
いずれも、取引相手の経費となります。取引先に請求書を送るときに、立替分も含めて請求書を作成すると思いますが、立替分は課税売上に含めないことがポイントです。
ポイント!
👉 このようなケースは「預り金・立替金の精算」にあたり、消費税の課税対象外(不課税)となります。
立替払いをしてもらった場合
取引相手が立替払いをした場合の逆と考えると分かりやすいのではないでしょうか。
例えば上の例でいう「取引先(自社)のために交通費や宿泊費を立替えて、領収書を添付して(自社に)請求してきた場合を考えてみてください。
取引相手は立替金として会計処理をしています。そのため、自社は、旅費交通費として経費処理することになります。当然、消費税の区分は課税取引となり、仕入税額控除できます。
例外ケース(立替払いをした場合)
例外的に上記のように請求をしても、立替金として処理してよいのか注意しなければいけないケースもあります。
①手数料を上乗せしているケース
顧客への請求に「◯◯代行料」「〇〇手配料」などの名目で手数料を上乗せしている請求書を見かけます。
この場合、立替といっても実質的にサービスの提供の一部とみなされ、課税売上に含まれることがあります。つまり、立替分も含めてこちらがサービスを提供しているため、全額課税売上として処理しなければなりません。
②実質的に立替もサービスの提供とみなせるケース
本来の取引と一体的に行われる経費を「立替」として請求しているが、実質的にサービスの提供とみなせる場合がこれに当たります。
取引内容は①と同じですが、書面上だけ立替として処理をしても取引全体を総括して見た場合に一連の取引がサービスの提供であるのであれば、その取引実態を重視して全額課税売上として処理しなければなりません。
③領収書が自社名義のケース
いくら実態が立替であって、請求書にも立替として載せていたとしても、入手した領収書が自社名義になっているケースでは、立替としては認められにくいと言えます。
自社の経費ではなく立替であることを証明したいのであれば、領収書の宛名は取引先の名前で書いてもらうように注意しましょう。
項目 | 課税対象か? | 備考 |
---|---|---|
実費精算(領収書は相手名義) | ❌ 含まれない | 単なる立替。非課税または不課税。 |
手数料や代行料として請求 | ✅ 含まれる | 自社のサービス提供の一部と見なされる。 |
領収書が自社名義 | ✅ 含まれる可能性あり | 支払主体が自社とみなされる可能性。 |
インボイス制度と立替金の関係

インボイス制度に関するQ&Aの説明です。
国税庁のインボイス制度に関するQ&Aの問94(適格請求書等保存方式の下での仕入税額控除の要件)は立替金に関する質問とその回答となっています。
問94の要旨は以下のとおりです。
【質問の前提】
あなた(貴社)がC社からの商品・サービスを受け、その代金をB社が立替えて支払った。
その後、B社から立替精算を受けた、という取引関係です。
【国税庁の見解・要点】
① B社から受け取った「C社宛のインボイス」は、貴社宛のものとは認められない
適格請求書(インボイス)は、仕入れをした事業者の氏名または名称が記載されている必要があります。
よって、C社が発行した請求書の「宛名」がB社になっている場合、それを「貴社の仕入に関するインボイス」として取り扱うことは原則できません。
② ただし、以下の条件を満たすと「仕入税額控除」が可能
条件
- 貴社が実質的な経費負担者であることが、書類で明らかにされている
- C社がインボイス発行事業者であること
- 立替金精算書などで、経費の帰属先が貴社であることが明確
この場合、C社のインボイス(B社宛)・B社からの立替金精算書を一体として保存すれば、インボイス保存要件を満たし、仕入税額控除が可能です。
③ B社がインボイス発行事業者でなくてもOK
この場合の重要ポイントは、経費の支払先(=C社)がインボイス発行事業者であること。
立替を行ったB社がインボイス発行事業者でなくても問題ありません。
④ 例外:帳簿保存のみでOKな場合もある
立替払いの対象が、例えば公共交通機関の運賃など、インボイス発行が困難な取引であれば、「帳簿のみの保存」で仕入税額控除が認められるケースもあります。
帳簿のみ保存については、詳しくは、タックスアンサー(問104、問110)で案内されていますので、ご確認いただくのをお勧めします。
引用:インボイス制度に関するQ&A(問104)、インボイス制度に関するQ&A(問110)
ポイント | 内容 |
---|---|
インボイスの宛名 | B社宛では、原則として貴社の仕入れとは認められない |
認められる条件 | C社からのインボイス+B社からの立替金精算書により、貴社の取引であると明らかにされていること |
B社がインボイス発行事業者かどうか | 問題なし(C社がインボイス発行事業者であればOK) |
帳簿保存のみでOKな場合 | 一定の非インボイス取引(例:交通費など)であれば可(問104・問110参照) |
最後に

いかがでしたでしょうか。
「立替金」と「消費税」ですが、通常は立替払いをしても基本的には消費税は課税取引ではありません。しかし、今回紹介したような一定の場合には課税取引になる可能性があります。
また、インボイス制度とも関係しますので、国税庁のタックスアンサーなどで確認をしておくと良いでしょう。
もしご不明な点があるときは、最寄りの税理士などの専門家にご相談いただけると幸いです。
是非参考にされてみてください。
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佐藤 修一
税理士法人Accompany 代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。