【実務解説】個人事業主が法人成りするタイミングと手続きのポイント

確定申告・税金

佐藤修一

こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。

お客様からのお問い合わせで、ビジネスが軌道に乗ってくると

「法人成りをした方が節税できるのではないか?」「法人成りをすると信用が上がりビジネスが優位になるのでは?」

という質問をいただくことがあります。

法人成りは節税や信用力アップを目的に、多くの事業主が検討するステップですが、実際には法務・税務の手続きも関わってくるため、慎重な判断が必要です。

この記事では、個人事業主が法人成りを検討する場面から、具体的な手続き内容まで、実務の流れに沿ってわかりやすく解説します。

どんなときに法人成りを考えるのか?

法人成りとは、個人事業で営んできたビジネスを、株式会社や合同会社といった法人へ移し替えること。こんなタイミングで検討されることが多いです。

所得が増えて税負担が重くなってきたとき

個人の所得税は累進課税なので、事業所得が増えると税率がグッと上がっていきます(最大で55%!)。

一方、法人税は一定の税率(中小企業なら800万円以下部分に15%の軽減税率あり)なので、利益が年間500~700万円を超えてくると、法人の方が税率的に有利になることが多いです。

ただ、個人事業主の状況により税率的に有利になる事業所得の金額は変わります。税理士など専門家に相談してしっかりシミュレーションが必要です。

家族に給与を出して節税したいとき

法人なら、家族を役員や従業員にして報酬を支払うことで所得の分散が可能。給与所得控除も使えて、節税効果が高まります。

信用力や取引先との関係を強化したいとき

法人は登記簿や印鑑証明があり、社会的信用がアップします。大手企業との契約、銀行融資、採用などでも有利に働く場面が増えます

将来の事業承継やM&Aも視野に入れたいとき

法人化すると、株式という形で事業の承継や売却が可能に。個人事業では難しい「会社の売却」も、法人なら現実的な選択肢になります。

法人成りの際の法務的手続きとは?

法人成り=「会社を新たに設立すること」です。現時点の制度では、個人事業をそのまま法人に変える制度はないため、新会社を設立して、そこに事業を移すという手順をとります。

法務手続きの流れ(株式会社を例に)

佐藤修一

次は、「株式会社」を例に法務手続きの流れを解説していきたいと思います。

法人手続きの流れ

1.会社の基本事項を決定
  商号、所在地、資本金、事業目的、役員構成などを決めます。

2.定款の作成と認証(株式会社の場合)
  公証役場で定款の認証を受けます。電子定款を使えば印紙代4万円が不要に。

3.資本金の払い込み
  代表者個人の口座に払込みをして、通帳コピーなどを払込証明として使います。

4.設立登記(法務局)
  登記申請書類一式を整え、法務局で設立登記を行います。これで正式に法人ができます。

5.事業資産の承継(任意)
  備品や在庫、車両などは「現物出資」または「譲渡」で法人に移すことができます。
  ※この時、消費税や所得税の課税対象となる場合があるので注意。

    法人の設立の法務手続きが完了して初めて、法人名義の銀行口座や法人名義のクレジットカードを作れます。作成の際には法人の謄本が必要になります。忘れずに準備をしておきましょう。

    税務的な手続きと注意点

    法人設立後、税務署や自治体にいろいろな届出をする必要があります。また、元の個人事業も「廃業」という形で整理します。

    法人側の税務手続き(設立から2ヶ月以内が目安)

    法人を設立した際に税務署と自治体に提出する届出は以下になります。

    • 法人設立届出書(税務署)
    • 青色申告の承認申請書(設立3ヶ月以内または期末まで)
    • 給与支払事務所等の開設届出書(役員報酬を支払う場合)
    • 源泉所得税の納期の特例申請書(希望者のみ)
    • 都道府県・市区町村への事業開始届(地域によって様式が異なります)

    個人側の税務手続き(廃業に伴う届出)

    法人を設立した後は個人事業主の方では事業を行わなくなるので、廃業の届出を税務署に提出する必要があります。

    • 所得税の廃業届出書
    • 青色申告の取りやめ届出書(青色申告者のみ)

    注意点:資産の移転と税務リスク

    個人で使っていた車や設備、在庫などを法人に移す際、単なる「名義変更」では済みません。


    形式上は譲渡または現物出資となり、課税関係が発生する場合があります。

    • 消費税の課税対象(資産の移転により消費税の納税が生じる可能性があります)
    • 譲渡所得税の対象(資産の移転により譲渡所得の確定申告が必要になる可能性があります)
    • 売掛金・買掛金・銀行からの借入金などの債権債務の承継も、契約上の対応が必要なケースあり

    まとめ

    法人成りは、節税だけを目的にするものではありません。

    より安定した経営基盤づくり、社会的信用の向上、そして将来の事業承継や成長戦略の布石でもあります。

    だからこそ、法人成りを考えるなら「いつ・どうやって移行するか」の設計が大切です。

    税理士・司法書士などの専門家としっかり連携しながら進めることをおすすめします。

    【相談無料】まずはお気軽に問い合わせください

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    法人成りを検討されている個人事業主の方は、ぜひ弊社に一度ご相談頂けたら幸いです。

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    佐藤 修一

    税理士法人Accompany 代表

    (九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。