スループット会計についてご説明しています。

スループット会計とは、企業の目標を「お金を儲けること」と定義し、
従来の原価計算に基づく損益計算書の利益計算から資金の最大化のため特に製造業の会計の視点を変えるための会計です。

損益計算書は、資金の動きとなっていません。

例えば、操業度を上げれば、製造間接費の配賦率が低下する⇒製品単価が下がる

…操業度の増加による在庫の増加=利益の増加につながりかねません。

一方、在庫増加により資金が寝てしまい、資金が減少するといった損益計算書の利益と資金のズレが生じます。

このようなズレを解消するためにスループット会計を用います。

従来の原価計算とは以下のように異なります。

 

全部原価計算直接原価計算スループット会計
売上  ××売上  ××売上  ××
製造原価 △××変動費 △××材料費、外注費 △××
売上総利益 ××貢献利益 ××スループット ××
一般管理費 △××固定費 △××業務費用 △××
営業利益 ××営業利益 ××営業利益 ××

 

スループット会計は、具体的に3つの指標を用います。

①スループット販売を通じて入ってくるお金(入ってくるお金)
=売上-材料費、外注費
「生産」ではなく、「販売」である点に注意してください。マーケット志向の会計です。

②在庫:販売しようとする物を購入するために使ったお金(寝ているお金)
=材料、仕掛品(材料費、外注費)、完成品

③業務費用:在庫を販売するために費やすお金(でていくお金)
=材料費、外注費以外の全てのコスト、製造原価の人件費、減価償却費等の製造間接費、一般管理費も含みます。

以上の3つの指標いずれかを改善するのではなく、スループットを増加させ、同時に在庫、業務費用の減少を目標としています。

つまり、入ってくるお金を大きくし、寝ているお金、出て行くお金を小さくし、会社に残るお金を大きくしようというものです。

部分最適でなく、全体最適を目指すための会計です。

追加受注の際、意思決定にも役立ちます。

受注の際、当然、製品原価<売価となる価格を決定します。

全部原価計算による製品原価=製造間接費を含めた原価

スループット会計による製品原価=純粋な変動費のみ…材料費、外注費、その他追加の業務費用

全部原価計算とスループット会計の製品原価の認識の範囲が異なるため、受注の際の価格弾力性が異なります。

これにより、全部原価計算によれば、受注を受けることができなかった注文も、スループット会計によれば、受注可能という意思決定となり、結果、スループットである資金を増加させることができます。

以上は、エリヤフ・ゴールドラット氏の「ザ・ゴールより、私なりの理解で、説明したもです。

異なる見解等あることをご了承ください。

また、本書では、スループット会計を評価軸として、
生産工程中のボトルネック(処理能力が必要な仕事量より小さいリソース)を見つけ、

ボトルネックを最大限増加、活用し、スループットを最大化し、

非ボトルネック(処理能力が必要な仕事量より大きいリソース)のコントロール方法、リードタイムの短縮についても書かれています。

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