ここでは、中小企業の製造業・メーカーの決算書上での売上原価の計算方法について説明しています。

製造原価及び売上原価を求める目的をまず、明確にします。

製造原価及び売上原価を計算する目的は、売上高から売上原価控除後の売上総利益、粗利益を計算し、経営に役立つ情報を手に入れることです。

決算書又は税務申告のためにあるのではありません。

中小企業では、特に売上高ではなく、粗利益に着目することが重要です。

中小企業は、売上高は、経営資源が豊富な大企業に勝てませんが、粗利益率であれば、大企業に勝つことができます。

中小企業にとって重要な差別化の程度が粗利益率として数値化されることになります。

また、製品を製造し、販売した結果の粗利益が固定費を支払う原資となり、財務体質を決める重要な要因となります。

製造原価を計算し、原価計算を行う1番の目的は、粗利益を把握し、差別化し、業績を向上させることです。

前置きが長くなりましたが、製造原価の計算の説明に入ります。

完成した製品の原価のことを製造原価といいます。

販売した製品の製造原価のことを売上原価といいます。

■製造業の売上原価の計算の流れ
計算のための全体像は次の流れになります。

製造原価報告書での製造原価の計算⇒損益計算書での売上原価の計算

(製造原価の計算⇒作った原価の計算)

①月初材料棚卸金額 当期製品製造原価 当期製造した製品の原価
②月初仕掛品金額(材料費、外注費)
製造直接費 ③月末材料棚卸金額
製造間接費  ④月末仕掛品金額(材料費、外注費) 

(売上原価の計算⇒販売した原価の計算)

①月初製品棚卸原価  売上原価
⇒当期販売した製品の原価
当期製品製造原価
⇒当期製造した製品の原価
②月末製品棚卸原価


(売上総利益の計算)

売上高 ×× 製品販売金額
売上原価  △×× 販売製品原価 
売上総利益
⇒粗利益 
×× 製品を販売したことによる利益
⇒一連の計算の目的、ゴール

■製造原価の範囲を決める
まず、製造原価の範囲についてご説明します。

「製造原価報告書」上に集計する範囲となります。

製品を製造するためにかかったコストが範囲となります。

工場又は制作現場で発生したコストのみが対象となり、本社コストは含まれません。

■製造原価の種類
製造原価を直接費と間接費の2つに分けることが必要です。

製造直接費…個々の製品へのひも付けが可能なコスト
作れば作るほど、発生するコストです。

・材料仕入高…製品の材料費

・外注加工費…製造の一部を委託する場合のコスト

製造原価のうち、製造中の製品(仕掛品)もしくは、完成後の製品それぞれに簡単にひも付けできるのは材料費、外注費のみだからです。

製造間接費…個々の製品へのひも付けが可能でないコスト

具体的には、材料費と外注費以外のコストです。

・人件費…製造部門、製造ラインの給料、賞与、社会保険料

・修繕費…機械類の修繕費

・旅費交通費…上記人件費の通勤手当

・減価償却費…工場、機械設備、工具器具備品等の減価償却費

・租税公課…工場、機械設備、工具器具備品等の固定資産税

・その他経費…工場の賃料、リース料、消耗品、水道光熱費、電話代等

■製造原価の計算方法⇒作った原価の計算
「製造原価報告書(C/S)」上で製造原価を計算し、「損益計算書(P/L)」の「当期製品製造原価(当期作った製品の原価)」へ反映します。

(このステップでの計算フロー)

①月初材料棚卸金額 当期製品製造原価 当期製造した製品の原価
②月初仕掛品金額(材料費、外注費)
製造直接費 ③月末材料棚卸金額
製造間接費  ④月末仕掛品金額(材料費、外注費) 


次の仕訳を入力します。

借方金額 借方科目  貸方科目  貸方金額 
①月初材料棚卸金額 期首材料棚卸高 材料 ①月初材料棚卸金額
②月初仕掛品の材料費、外注費※ 期首仕掛品 仕掛品 ②月初仕掛品の材料費、外注費※
③月末材料棚卸金額 材料 期末材料棚卸高  ③月末材料棚卸金額
④月末仕掛品の材料費、外注費※ 仕掛品 期末仕掛品 ④月末仕掛品の材料費、外注費※


製造原価報告書(C/S)と損益計算書上(P/L)の当期製品製造原価
=製造直接費の完成品原価+製造間接費の発生総額となります。

当期製品製造原価=(期首材料原価+期首仕掛品原価)+当月発生製造直接費及び間接費合計-(期末材料原価+期末仕掛品原価)

ここで、問題になるのは製造間接費の存在です。

上記の計算方法では、製造間接費を月末時の仕掛品に配賦していません。

製造間接費を仕掛品、製品に配賦する全部原価計算ではなく、直接原価計算によっています。

なぜ全部原価計算を採用せず、製造間接費を配賦しないか?

経営者の感覚からすると、売上の増減にともなった経費の増減となるはずです。

全部原価計算を採用すると、売上の増減にともなった経費の増減とはならず、

経営者の感覚とは、ズレが生じてしまい、せっかく算出された数字が経営の意思決定に使えないものとなってしまうからです。

仮に、製造間接費を仕掛品と完成した製品に配布する場合、製造個数、機械時間、労働時間等を基準に配賦したとします。

この場合、製造個数、機械時間、労働時間等で機械の経費等の製造間接費を仕掛品の原価と完成後の製品原価に分けて計算することは、「製造個数等の増加に比例して全ての経費発生額の増加がある」という考え方がベースにあります。

配賦の基準となる製造個数等がどれだけ増加しても、機械装置にかかる減価償却費、賃料、人件費(通常固定給)等の実際の経費の発生額は、通常変動がなく、製造個数等に比例して増加することはあり得ません。

また、中小企業の場合は、製造間接費を期末在庫(仕掛品)に配賦しなくても、税務上問題ないとなっています。

■売上原価の計算方法⇒販売した原価を計算
これまでで算出した当期製品製造原価(作った原価)を使って、損益計算書上=(P/L)で売上原価(販売した原価)を計算します。

(このステップでの計算フロー)

①月初製品棚卸原価  売上原価
⇒当期販売した製品の原価
当期製品製造原価
⇒当期製造した製品の原価
②月末製品棚卸原価

会計ソフトで計算する場合、具体的には、以下のように製品の棚卸の仕訳を入力します。

借方金額 借方科目  貸方科目  貸方金額 
月初製品棚卸原価 製品 期首製品棚卸高  月初製品棚卸原価
月末製品棚卸原価 期末製品棚卸高  製品  ②月末製品棚卸原価



この仕訳を入力すると、

売上原価 (P/L)=販売した製品の製造原価となります。

売上原価=期首製品原価+当期製品製造原価-期末製品原価

以上のように原価計算を行います。

数値の集計から計算まで複雑なステップになります。

しかし、これにより、「決算書」上で売上-売上原価=粗利益(売上総利益)を計算することが可能になります。

せっかくのこれら計算を税金の申告又は決算書の作成のためとしてしまうことは非常にもったいないと考えております。

原価計算を企業の戦略的な意思決定にお役立て下さい。

製造原価の方法、在庫の計算方法の組み合わせは、様々です。

それにより算出される製造原価、売上原価は異なります。

企業の実体、戦略にあった方法を採用されて下さい。

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