「節税になる」と言われたオペレーティングリース、本当に得?

佐藤修一

こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。

金融機関や営業から「オペレーティングリースは節税になりますよ」と勧められたことはありませんか?

ただ、そう言われても
「正直、仕組みがよく分からない」
「本当に得なのか判断できない」
「キャッシュが減らないかが一番不安」
と感じる方も多いかと思います。

実際、オペレーティングリースは内容を理解しないまま契約すると、思っていた結果にならないことがある商品です。

本記事では、「節税になる」と言われる理由と、税制改正を踏まえた注意点、そして最終的にキャッシュにどんな影響があるのかを、できるだけ分かりやすく整理していきます。

そもそもオペレーティングリースとは?

オペレーティングリースとは、航空機や船舶などの高額な資産を第三者に貸し出す事業に、出資という形で参加する投資商品です。

自社で使う備品や設備を購入するものではなく、また自社の本業に直接関係する取引でもありません。

イメージとしては、

  1. 投資家(=あなたの会社)が出資を行い
  2. その資金で航空機や船舶などを取得し
  3. それを航空会社などに貸し出し
  4. リース料を受け取る

という流れになります。

名前に「リース」とついているため、自社が何かを借りる取引と誤解されがちですが、オペレーティングリースでは、自社は借り手ではありません。

あくまで、「貸す側の事業に出資している」という立場になります。

オペレーティングリースは投資商品であるため、

  • 市況の変化
  • 為替の影響
  • 満期時の資産売却価格

などによって、最終的に戻ってくる金額は変わります。

元本や収益が保証されているものではなく、あくまで投資であるという前提は、最初に押さえておく必要があります。

オペレーティングリースは、よく「節税商品」として紹介されますが、それはこの商品の一面だけを切り取った表現です。

まずは、

・投資商品であること
・自社の事業とは切り離された取引であること

この2点を理解したうえで、次に「なぜ節税になると言われるのか」を知ることが重要です。

なぜオペレーティングリースは「節税になる」と言われるのか?

オペレーティングリースが「節税になる」と言われる理由は、特別な制度があるからではありません。

ポイントは、会計・税務上の費用(損金)が、契約の初期に多く計上されやすい構造にあります。

利益が圧縮されやすい仕組み

オペレーティングリースでは、減価償却費・金利相当額・各種費用といったものが、契約開始からしばらくの間、多めに計上される形になっています。
その結果、会計上・税務上の利益が小さくなり、当期の法人税が減るという状態が生まれます。

商品が中古資産の場合、減価償却の耐用年数も短くなるため、1-2年で全額経費にできます、という説明を受けることもあるのではないかと思います。

この「税金が減る」部分だけを見ると、確かに節税効果があるように見えます。

ここで注意したいのは、オペレーティングリースは税金を恒久的に減らすものではないという点です。

あくまで、初期に利益を圧縮し将来、利益が出る年が来るという構造になっています。

つまり、税金を払わなくてよくなったのではなく、支払うタイミングが後ろにずれただけという性格のものです。

「節税」という言葉が独り歩きしやすい理由

オペレーティングリースは、利益が出ている会社ほど効果が分かりやすく数字上の税額が目に見えて減るため、「節税になる」という説明がされやすい商品です。

しかし実際には、出資金というキャッシュアウトがあり、将来の課税も想定する必要があるため、
税金だけを見て判断すると、ズレが生じやすい取引でもあります。

30万円未満の特例と税制改正の影響

これまで、オペレーティングリースを使った節税スキームでは、「30万円未満であれば少額減価償却資産として一括で経費にできる」という特例が重要なポイントとして使われてきました。

中小企業では、1資産あたり30万円未満であれば、取得した年に全額を損金算入できる「少額減価償却資産の特例」が認められています。
オペレーティングリースでは、この特例と組み合わせることで、初年度に大きな経費を計上し、利益を一気に圧縮することが可能でした。

この特例は合計で300万円まで使えるので、例えば30万円未満の資産を10個購入することで年間300万円を全額1年で損金算入できる、ということになります。

しかし、この点について税制改正が行われています。

改正後は、事業に直接関係しないオペレーティングリース取引については、30万円未満であっても少額減価償却資産の特例を使うことができなくなりました。

つまり、

  • 本業と明確な関連性がない
  • 純粋に節税目的と判断されやすい

こうしたオペレーティングリースについては、「30万円未満だから全額経費にできる」という扱いが否定されることになります。

この改正により、本業とは関係のないオペレーティングリースを使って短期的に利益を圧縮する節税手法は、実質的に封じられたと言える状況になっています。

「節税額」ではなく「最終的に残るキャッシュ」で判断する

オペレーティングリースを「節税になるかどうか」で判断するとき、多くの方が見ているのは、
「税金がいくら減るか」 だけです。

しかし、本当に重要なのは、その取引によって、最終的にキャッシュがいくら残るのかという点です。

具体的に、たとえば、次のようなケースを考えてみます。

<具体例:500万円の中古ヘリコプターのオペレーティングリース>

購入のタイミングにもよりますが、中古資産で耐用年数が2年・定率法で事業年度の最初の月に購入したとした場合、1円を残した額を減価償却費として計上することができます。
※購入月から決算月までの月数によって月割になるため、経費にできる金額が変わります

簡単にするため、500万円を経費にできたとします。

法人税等の実効税率を30%とすると、

500万円 × 30% = 150万円

この分、税金が少なくなります。

では、キャッシュの動きはどうでしょうか。

500万円の商品を購入しているので、500万円が手元キャッシュから減少しますね。

つまり下記のようになります。

内容キャッシュ増減
投資商品の購入△500万円
減価償却による節税+150万円
差引△350万円

結果として、手元のキャッシュは差し引き350万円減っていることになります。

また、オペレーティングリースにはこの後続きがあります。

オペレーティングリースでは、リース期間中や終了時に、

  • 分配金
  • 持分の売却による収入

といった形で、収入が発生するのが一般的です。

仮に、数年後に、分配金や売却益として合計 500万円 の収入があったとします。

この500万円は、当然益金(課税対象) になります。

法人税等の実効税率30%とすると、

500万円 × 30% = 150万円

後の年度で、この税金を支払うことになります。

ここまでをまとめると、下記のようになります。

内容キャッシュ増減
投資商品の購入△500万円
減価償却による節税+150万円
分配金収入+500万円
分配金収入による納税△150万円
差引0万円

初年度に150万円の節税ができたとしても、収入があった年度に150万円の納税が発生するため、結果として節税金額は0円となります。

ただ納税をする時期が後ろにずれているだけになります。これが課税の繰り延べということです。

特に、

  • 資金繰りに余裕がない
  • 近い将来、別の投資や支出が控えている

こうした状況であれば、「節税になるから」という理由だけで進めるのは、かなりリスクが高い判断になります。

オペレーティングリースは、税金を減らすための魔法の道具ではありません。

税金の減少額と、投資によって実際に出ていくキャッシュ・増加するキャッシュの金額を並べて、最終的に会社に何が残るのかを冷静に見ることが不可欠です。

まとめ

オペレーティングリースは、「節税になる」と聞くことが多い一方で、仕組みが分かりにくく、不安を感じやすい制度です。
実際には、オペレーティングリースは税金が消える仕組みではなく、課税のタイミングを後ろにずらしている取引です。

初年度は経費が大きく計上され、税金が減ったように見えますが、その後には分配金や売却益といった収入が発生し、別の年度で税金を支払うことになります。
そのため、「節税額」だけを見て判断してしまうと、キャッシュが想像以上に減ってしまうということも起こり得ます。

オペレーティングリースを検討するときに大切なのは、「税金がいくら減るか」ではなく、「最終的に会社にどれだけキャッシュが残るか」という視点です。
「節税になるから」という理由だけで選ぶのであれば、オペレーティングリースを使う意味はありません。

よく分からないまま進めるのではなく、税金とキャッシュの両方を整理したうえで、
本当に自社に合っているかを考えることが大切です。

佐藤 修一

税理士法人Accompany 代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。