福利厚生で正しく節税する方法 | 税務署に否認されない方法5選

佐藤修一

こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。

「従業員の頑張りに報いたい」「働きやすい環境を作りたい」

そう考えて手当や食事補助を出したり、社員旅行を考えている方も多いのではないでしょうか。

福利厚生の整備は、従業員のモチベーション向上や定着率の改善に寄与するだけでなく、
要件を満たせば「会社の経費」となり、かつ「従業員に対して非課税」がという、
双方にメリットがある施策です。

税務調査でも論点になりやすい重要な項目ですので、法的要件が明確で、
かつ導入事例の多い「ポピュラーな福利厚生」を5つ厳選し、
国税庁のタックスアンサーおよび関連法規に基づき解説いたします。

通勤手当

通勤手当は最も一般的な手当ですが、実は「全額非課税」ではありません。

電車・バスなどの公共交通機関

最も経済的かつ合理的と認められる経路であれば、月額15万円まで非課税です。
これを超える部分は給与として課税されます。

注意点として、新幹線通勤は認められますが、グリーン車料金は認められません。

マイカー・自転車通勤

こちらは距離に応じて非課税限度額が細かく決まっています。

通勤距離課税されない金額
片道55km以上38,700円
片道45km以上55km未満32,300円
片道35km以上45km未満25,900円
片道25km以上35km未満19,700円
片道15km以上25km未満13,500円
片道10km以上15km未満7,300円
片道2km以上10km未満4,200円
片道2km未満全額課税
※令和7年11月20日改正、令和7年4月1日以後に支払われるべきものに適用

食事代の支給

ランチ代を補助したいという場合、全額おごってしまうとそれは「給与」となります。

福利厚生費(非課税)として処理するためには、以下の2つの要件を両方とも満たす必要があります。

  • 従業員が食事代の半分以上を負担していること
  • 会社の負担額が月額3,500円(税抜き)以下であること

なお、残業や宿直のための食事支給は、現物支給であれば全額非課税となる特例があります。

社員旅行

社員旅行は会社の経費(福利厚生費)で落とせると思われがちですが、

「旅行期間」と「参加率」に厳しい要件があります。

  • 旅行期間:4泊5日以内であること
  • 参加人数:全従業員の50%以上が参加していること

その他にも、不参加者に対する金銭支給の禁止、旅行目的、1人あたり負担額10万円以内などの要件もあります。

以下の記事では、実例を交えて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

健康診断費用

従業員の健康管理のために、人間ドックや健康診断の費用を会社が負担することは、
福利厚生として認められます。ただし、以下の条件が必要です。

  • 対象者:全従業員(または一定年齢以上の希望者全員)を対象とすること。特定の役員だけが高額な人間ドックを受ける場合は給与課税のリスクがあります。
  • 支払方法:会社が診療機関へ直接支払うこと。従業員がいったん立て替えて、後から会社が精算すると、給与とみなされる場合があります。
  • 常識的な範囲:一般的な健康診断の範囲を著しく超える高額な検査は認められないことがあります。

慶弔見舞金

結婚祝いや香典などの慶弔見舞金も、福利厚生費として処理できます。
ここで重要なのは「社会通念上相当な金額」であるかどうかです。

明確な「〇〇円まで」という法律の規定はありませんが、
社内規定を作成し役職や勤続年数に応じて基準を設けることが必須です。

例えば従業員の結婚祝いに100万円を渡せば、
それは明らかに相場を超えており、給与(賞与)とみなされます。

以下の記事では、規定の作成方法を解説していますので、ぜひご覧ください。

まとめ

今回ご紹介した5つの項目は、要件さえ満たせば会社にとっても従業員にとっても大きなメリットがあります。

しかしルールを少しでも逸脱すると、税務調査で指摘され過去にさかのぼって課税されるリスクがあります。

ぜひ参考にされてください。

佐藤 修一

税理士法人Accompany 代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。