
こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。
中小企業の決算書でよく見かける「役員貸付金」。
一見すると会社のお金を役員が借りただけのように思えますが、この「役員貸付金」には会社を経営する上で大きなデメリットが潜んでいます。
銀行の担当から
「融資が下りなかったのは役員貸付金が貸借対照表に記載されていたからです。」
と言われたことはないでしょうか。
また、税務調査官から
「利息を計上していない、貸付金でなく役員に対する賞与の扱いになりますよ」
と言われたことはないでしょうか。
今回は、役員貸付金が貸借対照表に計上されているとどんな不都合が生じるのか、税務・融資面からわかりやすく解説します。
役員貸付金を減らす方法も紹介しています。こちらをご覧ください。
そもそも役員貸付金とは?
「役員貸付金」とは、「会社」から「役員個人」にお金を貸している状態です。
つまり、会社の口座に入っていたお金が、役員の財布に入っている事になります。
このような時に会社の貸借対照表に会社側の「資産」として計上される勘定科目です。
- 役員が個人的な支出に会社のお金を引き出して使った
- 会社名義のクレジットカードを私的に使った
- 会社の経費を役員が一時的に立て替えたけど精算していない
- 決算で利益を出すために「経費」科目を「役員貸付金」に変更した など
このような時に役員貸付金が発生します。この時の仕訳は以下のようになります。
【例1】役員に現金を貸し付けた場合
- 役員に100万円を貸し付けた場合
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
役員貸付金 | 1,000,000 | 現金 | 1,000,000 | 役員への貸付 |
【例2】会社名義のクレジットカードを役員が私的に使った場合
- 10万円を私的に使用し、カード利用時に記帳する場合
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
役員貸付金 | 100,000 | 未払金 | 100,000 | クレジット私的使用分 |
【例3】役員の個人的な税金や保険料を会社が立替えた場合
- 住民税15万円を会社が代わりに支払った場合
借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
役員貸付金 | 150,000 | 普通預金 | 150,000 | 役員住民税立替 |
税務上のデメリット
「役員貸付金」が決算報告書の貸借対照表に記載されている時は、以下のような税務上のデメリットが生じます。
利息を取らないと「みなし給与課税」の可能性
他人にお金を貸した時、一般的に利息の設定をします。「役員貸付金」について無利息・低金利で貸し付けている状態ですと適正利率との差額を「役員報酬」とみなされ(みなし給与)課税される可能性があります。
役員の方ではその「適正利率の差額」について所得税が生じます。役員は追加の所得税、延滞税などの支払いをしなければなりません。
役員報酬とみなされて給与課税される
長期間、役員貸付金の返済がされず、返済の見込みがないとみなされた場合は「貸付金」ではなく「役員報酬」とみなされてしまう場合があります。
「役員報酬」とみなされた場合(みなし給与)には、役員に対して追加の所得税、延滞税等の支払いが生じます。
また、そのみなし給与に対する追加の源泉所得税及び住民税の納付も生じます。
融資・信用面のデメリット
役員貸付金は、銀行が最も嫌う勘定科目の一つです。役員貸付金が貸借対照表にある場合は、ほぼデメリットしか生じません。
実際には「現金がない」状態なのに、資産があるように見える
帳簿上は「貸付金=資産」ですが、実際は役員が個人的に使ってしまっていることが多く、現預金は減っているというケースが少なくありません。
銀行が役員貸付金を実態がない財産と判定した場合は、資産として認められず貸借対照表の評価から省かれます。
例えば、資産500(その内、役員貸付金は300)、負債300、純資産200の貸借対照表の場合は、役員貸付金300は資産と認められず、資産200、負債300、純資産-100の貸借対照表とみなされます。結果、銀行は「純資産マイナスの債務超過の会社」と評価をします。
資金使途の疑念を持たれ、融資を受けにくくなる
銀行は融資の際、その資金使途を気にします。
貸借対照表に役員貸付金が計上されていたら、銀行は「運転資金」として貸し出したお金がそのまま、役員に流れるのではないかと懸念します。
また融資期間中に役員貸付金が増加している場合、法人に融資したはずの資金が役員へ流れていることと疑われ、使途義務違反として、銀行からの信用を失ってしまうことにつながってしまう可能性があります。
経営管理の不透明性を疑われる
貸借対照表に役員貸付金が計上されていますと
- 会社のお金と私生活の区別がついていない
- お金の管理がどんぶり勘定になっている。
- 社長が立替した経費の精算をしっかりしていない
銀行からこのような評価を受けて、融資審査の際にマイナス評価になる可能性があります。
まとめ
役員貸付金は、単なる「会社からの貸付」では済まされないリスクを多く含んでいます。
税務上は「役員報酬の未払い」とみなされて追徴課税されるおそれがあり、金融機関からは資金を私的に流用するのではないかというイメージを持たれ、融資にマイナスとなる可能性もあります。
役員貸付金が発生した場合はきちんと内容を記録し、早めに返済することが大切です。役員貸付金の金額が小さいうちに税理士など専門家に相談しましょう。ともにお金の流れを確認して発生の原因と解消策を立てましょう。
役員貸付金は“気づいたら大きなリスク”になりがちです。早期の対応と見直しをしていきましょう。
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佐藤 修一
税理士法人Accompany 代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。