成長期に見られる売上が増えても資金が減ってしまうことがあります。
通常は、売上の増加=資金の増加となるはずです。
しかし、売上が増加しても逆に資金が減少してしまうことがあります。
売れば売るほど、資金が少なくなっていくことがあります。
これには、大きく2つの原因があります。
ここでやってはいけないのは、原因を突き止めることなく、更に売上をあげようとすることです。
原因を知ることで対策を打つことができます。
バケツの底に穴が開いている状態かそうでないのかを知ることです。
まず、ひとつ目に十分な利益がでていないこと…バケツの底に穴が開いている状態
増加した売上<増加した経費…利益が増えていない状態
設備投資等を行った場合の新規借入を伴う増加売上の場合には、
増加した売上-増加した経費<増加した借入金返済額…利益が借入金の返済額に比べ足りない状態
となっている場合です。
将来解消が見込めるのであれば、問題ありません。
そうでなければ、「バケツの底に穴が開いている状態」です。
売れば売るほど、資金が少なくなっていきます。
売上増加への対策の前に、粗利益増加、経費削減等の対策が必ず必要です。
次に、売掛金、在庫、買掛金等の「運転資本」に原因がある場合
特に成長期のメーカー、卸売り、建設業、小売業等にありがちな現象です。
売掛金、在庫、買掛金の3つの残高が増減したことにより、資金が寝てしまった状態です。
売掛金、在庫、買掛金は、売上に関連して発生する勘定科目です。
通常売上が増加すると、売掛金、在庫、買掛金、それぞれが増加します。
これらは、未収入代金、商品の仕入代金、未払代金ですが、以下のように考えることもできます。
・売掛金⇒得意先への貸付金
・在庫⇒資金が商品に変わっている状態
・買掛金⇒仕入先からの借入金
売上が増加により、資金に以下のような変化が生じています。
・売掛金の増加⇒貸付金の増加…資金が貸付金へ変わったので資金が少なくなる
・在庫の増加⇒商品に変わっている資金が増加…資金が少なくなる
・買掛金の増加⇒借入金の増加…資金が多くなる
これらを合計した
「売掛金の増加」+「在庫の増加」-「買掛金の増加」分だけ、資金が少なくなってしまっているのです。
一時的な売掛金、在庫の増加であれば問題ありません。
売掛金、在庫、買掛金の回転期間を算出し、で異常なものかどうかを判断します。
バケツに穴がなければ、将来の利益でこの資金不足は解消できますのでご安心下さい。
滞留債権の発生、過剰仕入、慢性的な仕掛品の発生等の問題であれば、何らかの対策が必要です。
この2つ目の原因から言えることは、
将来売上が見込まれる場合には、手元の資金を十分に準備しておくことが必要です。
手元資金がなければ、せっかくの売り上げ拡大のチャンスを見逃してしまうことになりかねないからです。
以上を数値例でご説明します。
例えば、得意先を新規開拓したことにより、原価率70%の商品の売上が1000万円増えたとします。
それに伴って、新たに在庫が100万円、売掛金が700万円、買掛金が400万円増えたとします。
この場合、資金が100万円少なくなってしまいます。
この売上増加1000万円に伴う資金の動きは、以下のようになります。
単位:万 | 資金の動きの内容 | 金額 | 決算書のどこを見るか |
① | 売上増加 | 1000 | 損益計算書 |
② | 売上原価増加 | △700 | |
③ | 売上総利益増加=粗利益 ①+② | 300 | |
④ | 売掛金増加による資金の動き | △700 | 貸借対照表 |
⑤ | 在庫増加による資金の動き | △100 | |
⑥ | 買掛金増加による資金の動き | 400 | |
⑦ | 在庫・売掛金・買掛金増加による資金の動き ④+⑤+⑥ | △400 | |
⑧ | 資金の動きの合計 ③+⑦ | △100 | ⇒売上増加に伴う資金の増減合計 |
売上増加にともなう資金の動きは、損益計算書のみでは、分かりません。
損益計算書と貸借対照表を一緒にみる必要があります。