繰延資産のその内容、具体例、注意点、耐用年数について説明しています。
繰延資産とは、支払い後の経費のうち、経営上、長期間効果が見込めるものです。
イメージ的には、前払費用と近いです。
繰延資産と前払費用との違いは、前払費用は、支払ったお金に対してまだサービスを受けていませんが、一方、繰延資産は支払ったお金に対して、既にサービスを受けています。
繰延資産になるものは、以下の表のように限定されています。
繰延資産には、「会計上の繰延資産」と「税法上の繰延資産」の2つに分かれます。
「会計上の繰延資産」とは、会計ルール上定められている繰延資産です。
会計上とは、利益をきちんと計算するためのルールです。
会計上の繰延資産は、任意償却です。
任意償却とは、好きな時に、支出した範囲内で好きな金額だけ経費にすることができます。
会計上の繰延資産の内、開業準備行為にかかった費用を集計する科目である「開業費」があります。
この「開業費」を使えば、任意償却という性質を使って節税できるケースがあります。
開業費を使って節税する方法はこちら
一方、「税法上の繰延資産」は、税法で定められた年数で経費にしていきます。
税法上の繰延資産とは、税法上定められている繰延資産です。
税法とは、税金を計算するためのルールです。
税法上の繰延資産のその内容と具体例、注意点、耐用年数は以下のようになります。
税法上の繰延資産は定額法で経費にしていきます。
繰延資産に関して法人税ですと別表十六(五) 「繰延資産の償却額の計算に関する明細書」が必要となります。
また、以下の税法上の繰延資産でも支出額が20万円未満の場合は、支出した年に全額経費にすることができます。
会計上の繰延資産 ・ 税法上の繰延資産 | 内容 | 具体例 | 注意点 | 償却期間 (年) |
会計上の繰延資産 | 創立費 | 会社設立前の会社設立のための費用 定款作成費用 登録免許税 接待費 事務所の賃借料 水道光熱費 通信費等 | 個人の開業前の開業準備経費は開業費となります。 | 任意償却 いつでも好きなタイミングで経費にできます |
開業費 | 会社設立後の開業準備費用 広告費 接待費 水道光熱費 通信費等 | 創立費との違いは会社設立前か後かになります | ||
開発費 | 新技術・新組織採用、新市場開拓のための費用 広告費 接待費 通信費 調査費 | 新鉱床の採掘のための地質調査、ボーリングのための直接費用、その他開発に充てるための借入金利息も含む | ||
株式交付費 | 株式募集の際の費用 広告費等 | 会社設立時の株式発行費は創立日になります | ||
社債等発行費 | 社債の際の費用 広告費等 | |||
税法上の繰延資産 | 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立退料等、電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出するその他の費用 | 礼金、立退料、更新料、借入金の保証協会への信用保証料 | 敷金・保証金は含みません 社宅等の場合の礼金も繰延資産として処理します 信用保証料は、繰り上げ返済の際、返金がある場合には、前払費用となります | 5年 (契約による賃借期間が5年未満である場合において、契約の更新に際して再び権利金等の支払を要することが明らかであるときは、その賃借期間)※1、2、3 |
製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用 | 販売代理店に対して自社の製品の広告のための店頭看板、ネオンサイン、棚、自動車等の費用 | 広告用のための資産を購入するために販売代理店に金銭を贈与する場合も繰延資産となります。 | その資産の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が5年を超えるときは、5年) | |
役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用 | FC加盟のための費用 | 5年 | ||
自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用 | 街路の簡易舗装、街灯、がんぎ、商店街のアーケード | 公共的施設の場合①自己利用が中心の場合 施設等の耐用年数の7/10の年数 ② ①以外のもの~その施設等の耐用年数の4/10の年数 | ||
共同的施設の場合 協会等の本来の用途の場合はその施設の耐用年数の7/10 土地の取得に充てられる場合は、45年 その他は5年 | ||||
上記以外に、自己が便益を受けるために支出する費用 | 同業者団体等への入会金、野球選手の契約金、スキー場のゲレンデ整備費用、出版権の設定の対価 | 入会金で会員としての地位を他の人に譲渡できないものは「繰延資産」とは別に資産処理 それ以外の入会金は、繰延資産として処理 | 5年※4 |
上記の償却期間に1年未満の端数があるときには、その端数を切り捨てます。
※1 建物の新築に際しその所有者に対して支払った権利金等で当該権利金等の額が当該建物の賃借部分の建設費の大部分に相当し、かつ、実際上その建物の存続期間中賃借できる状況にあると認められるものである場合はその建物の耐用年数の7/10に相当する年数
※2 建物の賃借に際して支払った(1)以外の権利金等で、契約、慣習等によってその明渡しに際して借家権として転売できることになっているものである場合は、その建物の賃借後の見積残存耐用年数の7/10に相当する年数
※3 電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する費用 その機器の耐用年数の7/10に相当する年数(その年数が契約による賃借期間を超えるときは、その賃借期間)
※4
・スキー場のゲレンデ整備費用 12年
・出版権の設定の対価 設定契約に定める存続期間(設定契約に存続期間の定めがない場合には、3年)
・ 職業運動選手等の契約金 契約期間(契約期間の定めがない場合には、3年)