建設業の粗利益の計算方法について説明しています。
粗利益を計算する目的は、工事(=売上)を行ったことで新たにいくら儲かったのか(売上-工事原価)、「当社の付加した価格・価値」を知ることにあります。
建設業において、現場・工事単位で粗利益を計算することでその現場単位での儲けを計算できます。
見積もり金額、請求時の確定する利益の計算は現場単位になるからです。
現場単位の粗利益とは、現場単位の売上-現場単位の工事原価となります。
現場単位の売上の金額については、さほど迷うことないかと思います。
一方、現場単位の工事原価の範囲については、どこまで含めるべきなのかについて迷うことがあるかもしれません。
現場単位の工事原価は、その現場を行ったことにより新たに発生、支払が生じたコストです。
「新たに発生、支払」がポイントになります。
その現場を行っても、行わなくでも発生するコストは工事原価に含めません。
例えば、建設業において毎月固定的に発生する人件費、地代家賃などは、工事原価の対象となりません。
一方、時給、日給などの日雇いでの人件費は工事原価の対象となります。
次のように工事単位の粗利益を見積もり段階と工事終了後確定段階のタイミングで計算します。
(単位:万円)
A工事 | 見積金額 | 確定金額 | 差額 | 内容 | |
売上 | 100 | 100 | - | A工事売上 | |
工事原価 | 材料費 | △10 | △12 | +2 | A工事に直接ひも付けできる材料費 |
外注原価 | △30 | △33 | +3 | A工事に直接ひも付けできる外注費 | |
紹介料 | △5 | △5 | - | A工事に直接ひも付けできる紹介料 | |
人件費 | △10 | △7 | △3 | A工事に直接ひも付けできる人件費 | |
消耗品費 | △5 | △5 | - | A工事に直接ひも付けできる消耗品費 | |
交通費 | △3 | △3 | - | A工事に直接ひも付けできる交通費 | |
工事原価計 | △63 | △65 | +2 | A工事に直接ひも付けできるコスト合計 | |
粗利益 | 37 | 35 | △2 | A工事を行ったことによる当社の儲け |
建設業の場合、会計ソフトから出力される試算表からだけでは、粗利益が計算しづらいものとなっています。
このように現場単位で計算された月々の粗利益の合計がその他の経費である人件費、地代家賃、広告宣伝費を支払うお金となり、
借入金を返済するお金となります。
粗利益-その他経費【人件費、地代家賃、広告費、利息】-借入金の返済=最終利益
最終利益の金額が計算されて初めて、会社の使えるお金が確定し、投資に回すことができるようになりますので、
建設業・建設会社での粗利益の計算は、経営を行う上で非常に大切なステップになります。
建設業の会計のポイントについてはこちら

佐藤修一公認会計士事務所代表、合同会社CMA代表
キャッシュフロー経営コンサルタント 公認会計士 税理士
新日本有限監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)の東京事務所で上場企業の会計監査、総務省委託研究経理検査、内部統制構築支援、財務のデューデリジェンスに従事
その後、地元の福岡の中堅の税理士法人にて、中小企業の経営を会計、税務面からサポート
試算表ではキャッシュフローが見えない、経営できないと感じ、キャッシュフローを重視した経営の必要性を痛感し、佐藤修一公認会計士事務所を2013年8月に開業
開業後は、創業期の会社から上場準備会社まで中小企業の成長のための投資に備え、倒産しない、筋肉質の会社を作るためのキャッシュフロー経営の普及、freeeやマネーフォワードなどクラウド会計を使った経理の効率化・スピードアップを図り、経営ビジョンの明確化、実現のためのサポートを行っている
北部九州公認会計士協会所属 登録番号 028716
九州北部税理士会 福岡支部所属 登録番号 125272
経済産業省認定 経営革新等支援機関