借入が大きい場合、自己資金が少ない場合の資金繰り

経営数字の見方・活用方法

融資・資金調達

自己資金が少ないか全くなく、全額又は多額の借入を行い、事業を始めた場合、開業後、資金繰りは厳しくなってしまいます。

起業の際の借入をご検討中の方、参考にされて下さい。

借入が多い場合の経営者の感覚は「いくら稼いでも資金が残らない‥」です。

税金対策のご相談で「税金がこんなに大きいのでは、やる気が起きない‥」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

これまで、資金繰りが厳しいとのご相談の多くがそうです。

ただ単に、借入金の返済が大きいから資金繰りが厳しくなるのではありません。

借入金の返済額は経費になりません。

ですから、

借入金を返せる⇒利益がでている⇒税金が大きくなってしまいます。

「借入金の返済」と「税金の支払い」がセットで発生するために、

手元に資金が残りにくく、資金繰りが厳しくなります。

特に、税金は、一年に一回なので、準備がないと、負担感が大きくなってしまいます。

例えば以下のようなケースでⅠ借入れがない場合とⅡ借入がある場合でシュミレーションしてみます。
・毎月の売上が100万円、年間の売上1200万円
・利息以外の毎月の経費が60万円、年間の経費が720万円
・利息の支払額が月0.5万円、年間利息額6万円
・借入金の返済額が月8万円、年間返済額96万円
(単位:万円)

年間収支 Ⅰ借入がない場合  Ⅱ借入がある場合   差額 Ⅱ-Ⅰ
①売上  1200 1200 0
②経費  △720 △720 0
③利息支払 0 △6 △6
④利益 (①-②-③) 480 474 △6
⑤税金 ④×25% △120 △118.5 +1.5
⑥借入返済 0 △96 △96
⑦残る資金(④-⑤-⑥) 360 259.5 100.5


以上のように同じ売上と経費でも借入金がある場合とない場合では、残る資金の金額は、100万円も違ってきます。

開業後、資金繰りが悪化している事例の一つです。

開業時などに資金繰りのシュミレーションが甘く、借入に頼りすぎてしまうと、

利益が出ているのに、経営者の感覚として、いくら稼いでも資金が残らないということになってしまいます。

借入が大きい場合には、税金を支払った後、資金が残るようにかなり稼がないと資金が残りません。

起業・創業時等に借入を計画している方、売上が不安定なビジネスの場合は特に十分な自己資金を準備した方が安全です。

また、売上だけでなく、「利益と税金と資金」の計画をしっかり立てて借入の申し込みをしてください。

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佐藤 修一

税理士法人Accompany 代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。