2023年10月1日からスタートするインボイス制度ですが、これまで誰でも請求できた消費税が、インボイス制度がスタートすると消費税を請求するには、国に消費税を納める必要がでてきます。

すると、これまで免税事業者だったサービス業のフリーランスの方々にとって、ビジネス上の消費税の納税負担が重たくなり、実質の利益減少につながり、一部の事業者の廃業につながる可能性があると懸念されていました。

2022年11月30日の税制調査会で「現在、免税事業者の消費税を3年間、売上に係る消費税の2割へ軽減」することが決まりました。

つまり、年間1000万円以下の売上の事業者の消費税は、インボイス制度スタート後3年間は、「売上に対する消費税×2割」になります。

この税制改正が実現すれば、ほとんどのサービス業のフリーランスの方の消費税のコスト負担はかなり軽くなると思われます。

さらに、消費税の申告の際の手間、作業面でもかなり楽になることが見込まれます。

サービス業のフリーランスの方とは、カメラマン、WEBデザイナー、プログラマー、エンジニア、作家、マンガ家、ライター、コンサルタント、設計などのビジネスをされている方です。

消費税の計算方法「売上に対する消費税-経費に対する消費税=納める消費税」となります。

このままインボイス制度がスタートすると、これらの方々の消費税負担が大きくなると言われている理由は、サービス業のフリーランスのビジネスでは、経費が少ないため、「経費に対する消費税」があまり生じず、結果、「納める消費税」が大きくなってしまいます。

簡易課税という消費税の軽減できる制度を使っても、売上に対する消費税×50%=納める消費税となり、税抜売上400万の方だと、年間20万円の消費税負担となってしまいます。

この消費税負担は、年間の利益の減少であるため、インボイス制度がスタートすると、より収入を増やすなどしない限り、以前の生活水準を維持できなくなることにつながりってしまうのです。

これが、今回のフリーランスのインボイス軽減策によると、売上別の年間消費税は、以下のように軽減されます。

【単位:万円】

税抜年間売上簡易課税による消費税フリーランス向け負担軽減消費税差額
200104△6
300156△9
400208△12
5002510△15
6003012△18
7003514△21
8004016△24
9004518△27

 

完全にゼロになるわけでありませんが、年間売上400万の方だと、年間12万、月間1万円の負担軽減につながります。

恐らく、この「売上に対する消費税×2割」方法は、選択制度になると考えており、免税事業者の方は以下の3つの方法から選んで消費税を計算できるようになると思われます。

①通常の消費税「納める消費税=売上に対する消費税-経費に対する消費税」

②簡易課税 「納める消費税=売上に対する消費税×(10~60%)」【10%~60%で売上の種類によって%が異なる サービス業は50%】

③今回の改正案 「納める消費税=売上に対する消費税×20%」

車や多額の備品の購入があったり、多額の経費が生じる場合には①の方法が有利になりますが、そうでない場合は、③が有利になるケースが最も多いと思います。

 

そして、①の方法では、消費税がかかる経費かどうか、消費税の税率が8%か10%かを判別するための知識と経費に対する消費税を集計する作業が必要となり、初めての方にとっては、けっこうな消費税の申告作業負担が生じます。

また、②の方法でも、売上の種類によって10%~60%と割合が異なるため、売上の種類を区別するための知識と手間がかかってしまいます。

それに比べ③の方法では、売上の金額だけ集計できれば、消費税の計算が完了するため、かなり消費税の申告作業負担が軽減されることになり、フリーランスの方にとっては嬉しい改正になるのではないでしょうか。

また、年間売上が1億円以下の事業者は、6年間、1万円未満の経費についてインボイスは不要とする経理負担を軽減する措置もあわせて公表されました。

 

フリーランスのお客さまの消費税負担は、急なコスト負担になつながるため、心配でしたが、この改正を見て、少しほっとしました。

 

この改正案は一旦、2023年10月から3年間の措置になる見込みで、その後継続するかは分かりません。

あくまで、これから議論の段階なので、確定ではありませんのでご注意ください。

ただ、このフリーランス向けのインボイス対応策が23年度税制改正大綱に明記の方向で動いており、実際に明記されれば、ほぼ制度化されると言っていいと思います。

よって、フリーランスの方は、ぜひ、毎年、年末ごろリリースされる23年度税制改正大綱の動向注視されてください。