
こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。
企業経営において、「数字を正しく読み解く力」は欠かせません。
特に財務諸表をもとにした財務分析は、経営状態を客観的に把握し、今後の方針を判断するための大切なツールです。
しかし、中小企業の現場では「分析のやり方がわからない」「日々の業務に追われて手が回らない」という声をよく耳にします。
決算書や試算表の数字を見ても、具体的にどこに注目すればいいのか分からず、結局「なんとなく今年も去年と同じ」という判断になってしまうことも少なくありません。
近年、こうした課題に対する解決策として注目されているのが「AI(人工知能)」の活用です。
AIは膨大な数値データを短時間で処理し、一定のパターンや傾向を読み取るのが得意です。
最近では、会計データを取り込んで自動的に分析・コメントまで出してくれるツールも登場しており、「AIを活用して財務分析ができる時代」が現実になってきました。
そこで今回、実際にAIツールを使って財務分析を行ってみることにしました。
AIは、企業の財務をどこまで読み解けるのか?その一端をお伝えできればと思います。
今回使用したツールの紹介
今回使用したAIツールは、いま話題の「Gemini」というツールです。
Googleサービスとの連携や、テキスト、音声など複数の情報を同時に処理できるという強みがあります。
Geminiの操作方法
Geminiにログインしたあとに、「チャットを新規作成」をクリックしてください。
次に、「Geminiへのプロンプト入力」というスペースに指示文を入力してください。
ここで正しいプロンプトを作成しないと、欲しい情報を答えてくれなかったり、
誤った情報を答えることがありますので、ご注意ください。
プロンプトの入力方法は、次に解説します。
プロンプトの入力方法
今回は、財務分析がテーマなので以下資料をご準備ください。
- ご自身の貸借対照表と損益計算書のデータ
- 日本政策金融公庫「業種別経営指標」
次に、プロンプトには以下の文章を入力してください。
プロンプト内容
わたしは飲食店1店舗を経営しています。添付している貸借対照表と損益計算書から、専門用語をできるだけ使わず、安全性と収益性と主要な経営状況の変化を教えてください。同業他社との比較もしたいので、以下リンク「業種別経営指標」を参考にしてください。https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/sme_findings2_07a.p
Geminiで得られた財務分析内容
今回、個人事業主の貸借対照表と損益計算書のサンプルデータを使用して質問してみると、
次のような回答が得られました。

以下はGeminiに財務分析してもらった結果です。
ご提示いただいた決算データ(損益計算書・貸借対照表)に基づき、専門用語を抑えて現在の経営状況を分析しました。
結論から申し上げますと、「非常に効率よく利益を出しており、手元の現金も確保できている、極めて健全な経営状態」と言えます。
以下、3つの視点で解説します。
1.収益性(儲ける力)
「売上に対して、どれだけ手元にお金が残ったか」という点です。
- 利益率が非常に高い: 売上約3,475万円に対し、最終的な利益(青色申告特別控除前)が約975万円出ています。利益率は約28%です。
同業他社比較: 日本政策金融公庫の指標では、一般飲食店の平均的な営業利益率は数%〜10%程度です。28%という数字は、非常に効率の良い経営をされていることを示しています。 - 原価のコントロール: 売上原価(食材費など)は約32%です。飲食店の目安とされる30%前後とほぼ同等で、適切に管理されています。
- 固定費の低さ: 特に「地代家賃(約130万円)」が売上の約3.7%と非常に低く抑えられています(通常は10%程度が目安)。これが高い利益率の最大の要因です。
2.安全性(お財布の余裕)
「急に支払いが必要になっても、倒産しない準備ができているか」という点です。
- 支払能力が高い: 1年以内に支払う必要があるお金(買掛金や未払金など約216万円)に対して、すぐに動かせる現金・預金が約277万円あります。
診断: 「入ってくるお金」が「出ていくお金」を上回っており、資金繰りに余裕があります。 - 借入金の状況: 長期の借入金が589万円ありますが、年間で900万円以上の利益が出ているため、返済能力も十分すぎるほどあります。
3.主要な経営状況の特徴と変化
データから読み取れる、貴店の特徴的なポイントです。
- オーナーへの資金移動(事業主貸): 貸借対照表で「事業主貸」が約1,010万円と大きくなっています。これはお店の利益から生活費などのためにオーナー個人へ支払われたお金です。利益がしっかり出ているため、これだけの金額を個人に還流させてもお店の資金が回っている、というポジティブな見方ができます。
- 人件費の低さ: 給料手当が約330万円(売上の約9.5%)と、飲食業界の平均(25〜30%)に比べて格段に低いです。これはオーナー様ご自身やご家族が中心となって現場を回されている「少数精鋭」のスタイルであると推測されます。
同業他社(指標)との比較まとめ
| 項目 | 貴店の数値 | 飲食業界の目安 (JFC指標参照) | 判定 |
|---|---|---|---|
| 売上高利益率 | 28% | 3〜10%程度 | 大幅に高い(優秀) |
| 売上原価率 | 32% | 30%前後 | 標準的(良好) |
| 人件費率 | 9.50% | 25〜30%程度 | 極めて低い(効率的) |
| 家賃比率 | 3.70% | 10%前後 | 極めて低い(優位性) |
アドバイス
現在の経営は、「固定費(家賃や人件費)を低く抑えつつ、着実に利益を出す」という、飲食店経営の理想的な形の一つを実現されています。
今後に向けた注意点としては、
- 属人化のリスク: 人件費が低いということは、オーナー様の労働力に依存している可能性があります。ご自身が動けなくなった時の備えや、将来的な多店舗展開を考えるなら、採用・教育コストをどう捻出するかが次の課題になるでしょう。
- 節税と内部留保: 利益がしっかり出ているため、税金面での対策や、将来の設備更新(厨房機器の入れ替えや改装)に向けた積み立てを計画的に行うのが良い時期だと言えます。
非常に素晴らしい経営状況ですので、自信を持って継続されることをお勧めします。
AI財務分析のメリット・デメリット
メリットは、やはり瞬時に要約と分析をしてくれる点です。
財務分析は専門的な知識が必要で、時間と手間がかかりますが、
AIを使えば専門的な知識がない方でも、手軽に財務分析をすることができます。
デメリットは、その業界やその企業特有の事象は考慮されないという点です。
あくまで数字のみの分析になるので、数字の裏にある個別ストーリーを読み解くのは、まだまだ人間の仕事です。
まとめ

いかがだったでしょうか。
AIを使った財務分析は、「売上総利益率が低下している」「固定比率が高すぎる」など、注意すべきポイントを自動で指摘してくれる機能は、経営判断の第一歩として有効です。
しかしながら、AIが出力する分析結果はあくまで表面的な数字の動きにとどまる場合が多いため、「最終的な経営判断」まで落とし込むことは不可能です。
一方で私たちは、これまでの顧問先の業績推移や業種特性、経営者の考え方などを日々のコミュニケーションを通じて理解しています。
だからこそ、AIで得られた分析結果を「鵜呑みにする」のではなく、そこに人の判断を加えて「最終的な経営判断」まで落とし込むことが可能になります。
AIと人がそれぞれの強みを活かしながら、顧問先の経営課題に寄り添っていくことが、これからの税理士事務所の新しい役割だと考えています。
佐藤 修一
税理士法人Accompany 代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。



