2019年5月21日に「令和元年度 所得税改正のあらまし」が公表され、仮想通貨(暗号資産)関係の税務も変化がありました。
そこで本ブログでは2019年の仮想通貨(暗号資産)の申告についての注意点を解説していきます。
目次
仮想通貨の計算方法の届け出について
仮想通貨の計算方法には「総平均法」と「移動平均法」の2種類があります。
※計算方法について詳しくは移動平均法と総平均法とメリットとデメリットについてをご参照ください。
上記計算方法について2018年度まではどちらを選んでも大丈夫でしたが、2019年は以下のような発表が行われています。
その取得した年分の確定申告期限(原則:翌年3月 15 日)までに、納税地の所轄税務署長に対し、その選定した評価方法など所定の事項を記載した届出書(所得税の仮想通貨の評価方法の届出書)を提出する必要があります。
(注)
1 .この取扱いは、令和元年の所得税法等の改正により措置されたものですが、その施行日(平成 31年4月1日)の前から仮想通貨を保有している方についても、令和元年分の確定申告期限(令和2年3月 16 日)までに、「所得税の仮想通貨の評価方法の届出書」の提出が必要となります。
2 .評価方法の届出書の提出がない場合には、評価方法は「総平均法」になります。
3 .「所得税の仮想通貨の評価方法の届出書」の記載例は、次ページに掲載しています。
国税庁「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報) 11仮想通貨の評価方法の届け出」より抜粋
<国税庁リンク>[手続名]所得税の仮想通貨の評価方法の届出手続
<国税庁リンク>[手続名]所得税の仮想通貨の評価方法の変更承認申請手続
こちらにより2019年度より取得した仮想通貨について移動平均法を選択する場合、届け出を申告期限と同じく翌年の3月15日までに税務署へ提出する必要があります。
もし届け出をしなかった場合、その年に提出した仮想通貨については強制で「総平均法」での計算になってしまいます。
仮に、移動平均法と総平均法を選択しなかった場合、以下のような影響がある可能性があります。
※計算は複雑になるので割愛しています。
例)12月1日に1BTC購入(1枚当たり100万円) 12月10日に1BTC売却(1枚当たり80万円) 12月20日に1BTC購入(1枚当たり50万円)を行った場合 □移動平均法での計算の場合 損益 ▲20万円 期末仮想通貨単価 50万円 □総平均法での計算の場合 損益 5万円 期末仮想通貨単価 75万円 |
こちらの「損益」が2019年の利益、「期末仮想通貨単価」が来年の開始時の1枚当たりのBTCの金額になります。
上図のように、移動平均法と総平均法では計算に差が出ることが多いです。
この場合注意する点は以下の4点です。
- 移動平均法で計算し利益が出ていなかったため申告、届け出を行わなかったが、総平均法で計算した場合利益が出ていた場合、申告漏れになる可能性があること。
- 移動平均法で計算し、申告を行っていたが、届け出の提出を忘れていた場合、税務調査時に追加の納税が発生する可能性があること。
- 届け出の提出を行わず、総平均法で計算した結果「期末仮想通貨単価」が低い金額で出てしまい、次の年に想定外の税金が出てしまう可能性があること。
- どちらの計算方法を選んだ場合でも一度選択した計算方法は3年間変更できないこと
上記のような注意点がありますので、個人の投資家の方は、取引の実態と近い移動平均法を選択される場合が無難かと思われます。
申告が必要な場合、必要ない場合どちらであっても移動平均法を選択される場合は届け出の提出が必要です。
また、総平均法で計算をする場合は届け出の提出の必要はありません。
取得価格のわからない仮想通貨の計算について
仮想通貨を持っているけど「どこの取引所」で「いくら」で買ったのかがわからない…。
そういう悩みをお持ちの方も多いかと思います。
このような場合について国税庁から2019年以下のような発表が行われています。
個々の仮想通貨の取得価額や売却価額について、例えば次の方法で確認してください。
・ 仮想通貨を購入した際に利用した銀行口座の出金状況や、仮想通貨を売却した際に利用した銀行口座の入金状況から、仮想通貨の取得価額や売却価額を確認する。
・ 仮想通貨取引の履歴及び仮想通貨交換業者が公表する取引相場(注)を利用して、仮想通貨の取得価額や売却価額を確認する。
なお、売却した仮想通貨の取得価額については、売却価額の5%相当額とすることが認められます。
例えば、ある仮想通貨を 500 万円で売却した場合において、その仮想通貨の取得価額を売却価額の5%相当額である 25 万円とすることが認められます。
国税庁「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報) 13 仮想通貨の取得価額や売却価額が分からない場合」より抜粋
今後、購入価格が不明な状況の場合は銀行口座の入出金履歴や仮想通貨取引所の相場をもとに取得価格売却価格を確認する方法で確認するように明確に指示されています。
また、特例として仮想通貨を売った価格の5%が取得価格することが認められました。
この場合、仮想通貨を売った価格の5%が取得価格とする方法を採用すると計算は以下のような形になります。
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このような計算になり、実態とかけ離れた利益になる可能性が高いです。
ですので、取引価格がわからない場合は仮想通貨取引に利用している銀行口座の入出金履歴や相場から金額を確認する方法をとることが多くなると思われます。
しかし、5%に満たない少額で買った仮想通貨の価格が跳ね上がった場合はこの限りではありません。
実際の取得金額が売上金額の5%に満たない場合は、5%にて計算する方が利益が少なくなる可能性があります。
※こちらは国税庁からの正式な発表ではございませんので、行う場合は自己責任でお願いいたします。
仮想通貨の信用取引(FX)について
仮想通貨の信用取引(FX)の利益計算について、今まで現物取引(通常の取引)と合わせて計算をする必要がありました。
しかし、2019年度は以下のような発表が行われています。
(例)・ 9月 1日 1BTC を 1,000,000 円で売付けた。
・ 9月 24 日 1BTC を 800,000 円で買付けた。
上記(例)の場合の所得金額は、次の計算式のとおりです。
【計算式】
1,000,000 円 - 800,000 円 = 200,000 円
[売付け価額] [買付け価額] [所得の金額]
(注)1 譲渡原価は、個別法により計算した金額となります。
国税庁「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(情報) 23 仮想通貨信用取引を行った場合 」より抜粋
上記のように、信用取引(FX)の譲渡原価は、個別法と呼ばれる計算方法により計算を行う必要がありますので、
2019年度からは現物取引(通常の取引)と信用取引(FX)を分けて計算を行わなければなりません。
仮想通貨のFXをされている方については注意が必要です。
まとめ
以上、2019年度の仮想通貨の申告の注意点をまとめています。
2019年度の確定申告からは、法定の計算方法ができたことや、取得価格が不明な場合の計算方法の指示があったことなど、
以前より仮想通貨関係の税務が整備されてきているように感じます。
しかし、まだ不透明な部分が多いことも確かです。
今後も仮想通貨についての税制改正などありましたら、当ブログにて発信していきます。
弊所の仮想通貨取引の確定申告料金表はこちら
佐藤修一公認会計士事務所代表、合同会社CMA代表
キャッシュフロー経営コンサルタント 公認会計士 税理士 佐藤 修一
中小企業の経営が従来の会計ではお金と利益が見えない悩み、ストレスや経営の現場に数値を用いるためにfreeeやMFクラウド会計などを使い、経理の効率化・スピードアップを図り、税務の面をキャッシュフローの最大化の観点からサポートしている
北部九州公認会計士協会所属 登録番号 028716
九州北部税理士会 福岡支部所属 登録番号 125272