「個人事業主も2年目から消費税課税⁉」特定期間ルールを徹底解説
税務・節税


こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。
個人事業主として開業すると、原則として開業した年とその翌年は「消費税の免税事業者」として扱われます。
そのため「しばらくは消費税を納めなくてもいい」と思っている方も多いでしょう。
しかし実は、開業した翌年に「特定期間」と呼ばれる一定期間の売上高と給与等支払額が、いずれも1,000万円を超えると、その翌年から消費税の納税義務が発生する場合があります。
この記事では、個人事業主が知っておくべき「特定期間」の仕組みと判定方法、インボイス制度との関係について解説します。
なぜ免税期間中に課税になることがあるのか?「特定期間」とは
個人事業主の場合、消費税の納税義務は通常「基準期間(=前々年)」の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定します。
ところが、開業1年目・2年目は前々年が存在しないため、原則として免税事業者になります。
ただし例外として、前々年がない場合でも、前年の「特定期間」の売上高と給与等支払額の両方が1,000万円を超えると、その年の翌年から課税事業者になります。
個人事業主における特定期間の定義
個人事業主の場合の特定期間は、前年の 1月1日から6月30日までの半年間 です。
この期間において、
- 税抜の課税売上高が1,000万円を超え、かつ
- 実際に支払った給与等(従業員への給与・賞与)が1,000万円を超える
この両方を満たすと、翌年から消費税の課税事業者となります。
開業初年度で特定期間が6か月ない場合
前年1月1日〜6月30日の間に開業していない場合や、途中で開業した場合は、特定期間が6か月未満になります。
例えば
- 2024年5月1日開業 → 特定期間は2024年5月1日〜6月30日(約2か月)
- 2024年8月1日開業 → 特定期間は存在しない(前年1〜6月に事業がないため)
判定方法
6か月未満の場合でも、その短い期間の売上と給与をそのまま判定します(12か月換算はしません)。
よって、2か月で売上・給与の両方が1,000万円を超えるような特殊なケースでなければ、特定期間の要件に該当することはほぼありません。
売上または給与の「どちらかだけ」が1,000万円を超えても課税対象にはならない
ここでよくある誤解があります。
それは「売上が1,000万円を超えたら課税になる」「給与だけ超えていたら課税になる」という誤解です。
✖どちらか一方だけが超えても、2期目は免税のままです。
☑「両方」超えてはじめて、2期目に課税事業者になります。
法人との違い
- 事業年度が固定:個人事業主は必ず1月〜12月の暦年ベースで判定します。
- 給与等支払額の範囲:事業主本人への給与(いわゆる自分の生活費)は含まれません。従業員や専従者への給与・賞与のみが対象です。
売上・給与の具体的な判定基準
個人事業主の特定期間における課税売上高と給与等支払額は、2年目の消費税の課税事業者判定において非常に重要なポイントです。ここでの判定は、単に売上や給与の金額を見るだけでなく、どの範囲を対象に計算するかが決められています。
売上高の判定基準
売上高は、課税売上高(税抜ベース)を基準とします。
つまり、消費税が課される売上のみが対象で、免税売上や非課税取引は売上高に含まれません。
具体的には、会計上で計上されている売上から、免税売上(例えば輸出売上)や非課税売上(例えば不動産賃貸の家賃収入)を除いた金額が該当します。
給与等支払額の判定基準
実給与等支払額は、従業員の給与、賞与など、実際に支払った金額の合計です。
前述の通り、事業主本人への給与(いわゆる自分の生活費)は含まれません。
社会保険料や福利厚生費も含まれません。
また、未払いの給与や賞与は計上されず、あくまでも実際に支払った額で判定されます。
例えば、6月に支給が決まっている賞与でも、実際の支払日が7月以降の場合は、特定期間の判定には反映されません。
判定のポイント
売上か給与のどちらか一方だけが1,000万円を超えていても、2期目の消費税は免税のままです。
売上も給与も両方1,000万円を超えて初めて、2期目から課税事業者となります。
項目 | 判定基準 |
---|---|
売上高 | 税抜の課税売上高合計(免税・非課税売上は除く) |
給与等支払額 | 支払済みの役員報酬+従業員給与+賞与合計 |
これらの基準をしっかり押さえて、特定期間中の売上・給与を正確に集計することが、2期目の消費税納税義務を正しく把握するために不可欠です。
インボイス制度との関係
個人事業主が1年目から適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)として登録している場合は、
そもそも免税事業者ではなく「課税事業者」となります。
そのため、特定期間の判定で2年目から課税事業者になるという話は該当しません。
すでに消費税の納税義務があるため、注意が必要です。
まとめ
- 個人事業主も、前年1〜6月の売上と給与の両方が1,000万円を超えると、翌年から課税事業者になる
- 事業年度は固定で、事業主本人の給与は含まれない
- インボイス登録済みなら特定期間の判定は不要
特定期間を意識せずに経営をしていると、免税事業者のままでいるつもりが、気づかぬうちに課税事業者になっていた…という事態もあり得ます。早めに売上・給与の状況を把握し、事前対策をしておきましょう。
消費税の課税事業者になるかどうかや、計算方法は何が有利かなど、消費税については検討が複雑なこともあります。不安な場合は、ぜひ一度ご相談ください。
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佐藤 修一
税理士法人Accompany 代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。