「法人設立2期目から消費税課税?」特定期間ルールを徹底解説!
税務・節税


こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。
法人を新しく設立した場合、原則として初めの1期目・2期目は「消費税の免税事業者」として扱われます。
このため、「しばらくは消費税を納めなくても大丈夫」と考えている方も多いかもしれません。
しかし実は、「特定期間」と呼ばれる一定期間の売上高と給与等の支払額が、どちらも1,000万円を超える場合、2期目から消費税の納税義務が発生するケースがあります。
知らずに2期目を迎えると、突然の納税義務やインボイス制度対応に追われる可能性もあるため、
この「特定期間」の仕組みを正しく理解し、事前に対策しておくことが重要です。
この記事では、
- 「特定期間」とは何か?
- 売上・給与の具体的な判定方法
- インボイス制度との関係
をわかりやすく解説します。
※個人事業主の方はこちら
なぜ免税期間中に課税になることがあるのか?「特定期間」の仕組み
法人を設立すると、原則として1期目と2期目は「消費税の免税事業者」として扱われます。
これは、設立したばかりの法人には「基準期間(=前々事業年度)」が存在しないため、消費税の納税義務を原則として免除する、という制度によるものです。
消費税の納税義務は、通常「基準期間(=前々事業年度)の売上高」が1,000万円を超えているかどうかで判定します。
ところが、設立直後の法人には「前々年度」が存在しません。
そのため、設立1期目・2期目は原則として自動的に免税事業者になるという取り扱いがなされています。
しかし、例外があります。
1期目の途中6か月間に「売上」と「給与等支払額」の両方が1,000万円を超えた場合、2期目から課税事業者になるというルールです。
この6か月間のことを、「特定期間」と呼びます。
特定期間の定義
事業年度の開始日から6か月間
たとえば、2024年4月1日に設立した法人で、事業年度が4月〜翌年3月の場合、特定期間は2024年4月1日〜9月30日です。
この「特定期間」において、
- 税抜の課税売上高が1,000万円を超え、かつ
- 実際に支払った給与等(役員報酬を含む)が1,000万円を超えた場合、
その法人は、2期目(2025年4月1日〜)から課税事業者になります。
1期目の事業年度が6か月未満の場合
法人の1期目の事業年度が6か月未満の場合、特定期間が存在しません。
このような法人は、特定期間による課税判定の対象外となります。
つまり、1期目・2期目は特定期間による判定がなく、原則として免税事業者として扱われます。
ただし、3期目以降は1期目の短い事業年度が「基準期間」として使われますので、
その基準期間の売上高が1,000万円を超えると、3期目から課税事業者になる可能性があります。
基準期間(1期目の事業年度)が12か月未満の場合、その期間の課税売上高を12か月換算して判定します。
例えば、1期目の事業年度が4月1日~6月30日の3か月間で売上が300万円の場合、
300万円 × 12 ÷ 3 = 1,200万円 となり、12か月換算の売上高は1,200万円となります。
この場合は3期目から課税事業者となるので注意しましょう。
なぜこのようなルールがあるのか?
この制度の背景には、「急成長する事業者が、免税のままでいるのは不公平だ」という考え方があります。
短期間で売上・人件費が拡大している法人は、すでに十分な規模に達していると見なされるため、2期目から消費税の納税義務を課されるのです。
売上または給与の「どちらかだけ」が1,000万円を超えても課税対象にはならない
ここでよくある誤解があります。
それは「売上が1,000万円を超えたら課税になる」「給与だけ超えていたら課税になる」という誤解です。
✖どちらか一方だけが超えても、2期目は免税のままです。
☑「両方」超えてはじめて、2期目に課税事業者になります。
売上高と給与等支払額の具体的な判定基準
法人の1期目の特定期間における課税売上高と給与等支払額は、2期目の消費税の課税事業者判定において非常に重要なポイントです。ここでの判定は、単に売上や給与の金額を見るだけでなく、どの範囲を対象に計算するかが決められています。
売上高の判定基準
売上高は、課税売上高(税抜ベース)を基準とします。
つまり、消費税が課される売上のみが対象で、免税売上や非課税取引は売上高に含まれません。
具体的には、法人の会計上で計上されている売上から、免税売上(例えば輸出売上)や非課税売上(例えば不動産賃貸の家賃収入)を除いた金額が該当します。
給与等支払額の判定基準
給与等支払額は、役員報酬や従業員の給与、賞与など、実際に支払った金額の合計です。
なお、社会保険料や福利厚生費は含まれません。
また、未払いの給与や賞与は計上されず、あくまでも実際に支払った額で判定されます。
例えば、12月に支給が決まっている賞与でも、実際の支払日が翌年1月以降の場合は、支払った年の給与等支払額に含まれず、特定期間の判定には反映されません。
判定のポイント
売上か給与のどちらか一方だけが1,000万円を超えていても、2期目の消費税は免税のままです。
売上も給与も両方1,000万円を超えて初めて、2期目から課税事業者となります。
項目 | 判定基準 |
---|---|
売上高 | 税抜の課税売上高合計(免税・非課税売上は除く) |
給与等支払額 | 支払済みの役員報酬+従業員給与+賞与合計 |
これらの基準をしっかり押さえて、特定期間中の売上・給与を正確に集計することが、2期目の消費税納税義務を正しく把握するために不可欠です。
インボイス制度と特定期間の関係
法人が1期目から適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)として登録している場合は、
そもそも免税事業者ではなく「課税事業者」となります。
そのため、特定期間の判定で2期目から課税事業者になるという話は該当しません。
すでに消費税の納税義務があるため、注意が必要です。
まとめ
法人が消費税の納税義務者になるかどうかは、「基準期間」や「特定期間」における課税売上高や給与支払額によって判断されます。特に設立から間もない会社は、2期目以降に「特定期間」での判定により課税事業者となる可能性があるため注意が必要です。
免税事業者のままでいるつもりが、気づかないうちに消費税の申告義務が発生していた…ということを防ぐためにも、早い段階から自社の売上・給与の状況を正確に把握しておくことが大切です。
消費税の課税事業者になるかどうかや、計算方法は何が有利かなど、消費税については検討が複雑なこともあります。不安な場合は、ぜひ一度ご相談ください。
【相談無料】まずはお気軽に問い合わせください
弊社では、ご相談を初回無料で承っております。
福岡市に拠点を置いておりますが、オンライン(Zoomや電話)対応も可能なため、全国どちらの地域の方でもお気軽にご利用いただけます。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
\24時間365日受付中 /

佐藤 修一
税理士法人Accompany 代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。