最近、増えてきている20kw未満の小型風力発電所に対する投資ですが、この風力発電にかかる投資額が消費税の還付の対象になるかどうか、消費税還付を受けることができる場合、メリットとデメリットについて説明しています。

小型風力発電投資を行うと消費税還付を受けることができるのか

小型風力発電を行う場合、風力発電機、土地代、土地開発費、システム費用、工事費用、申請費などが初期投資として発生します。

結論から言えば、これらの費用の中で消費税が含まれている費用については、消費税還付を受けることができます。

しかし、何も行わなければ、消費税還付を受けることができません。

小型風力発電に含まれている消費税の還付を受けるためには、投資した初年度末までに消費税の申告義務者になる必要があります。

消費税の申告義務者になることによって、はじめて消費税還付を受けることができる権利が発生するのです。

消費税の申告義務者になるには、小型風力発電の投資初年度の12月31日までに「消費税課税事業者選択届」を作成し、税務署へ提出する必要があります。

このたった一枚の「消費税課税事業者選択届」を年末までに提出するかどうかによって、消費税還付を受けることができるかどうか決まってしまうのです。

消費税の課税事業者選択届の届出期限と記載例(小型風力売電の場合ですが、参考になるかと思います)についての詳しい説明はこちら

小型風力売電の消費税還付のメリットとデメリット一覧

消費税還付のメリット

①実質利回りアップ効果
②償却資産税負担を軽減できる

消費税還付のデメリット

①経理処理の複雑化、3年間の消費税還付申告の手間とコスト
②税務調査の可能性が高くなる

消費税還付を受けることによる2つのメリット、2つのデメリットについてそれぞれ解説していきたいと思います。

消費税還付のメリット①実質利回りアップ効果

小型風力発電の投資の場合、消費税の還付金額の計算方法は次のようになります。

消費税の還付金額=(年間の小型風力収入-風力発電機-整地費用ー工事費用-諸経費)÷1.08×8%

仮に、低圧50kW未満で、年間の小型風力収入が440万円、投資総額3,600万円(パネル代金、整地費用、工事負担金、諸経費合計が3,400万円で、土地購入代金が200万円)だったとします。

この場合の消費税の還付金額は次のようになります。

(年間の小型風力収入440万円-風力発電機、整地費用、工事費用、諸経費合計3,400万円)÷1.08×8%=219万円…消費税の還付金額

土地代金には消費税が含まれていないので消費税の還付対象にはなりません。

このように消費税還付を受ける場合、消費税還付を行った年を含め、売電収入に対して消費税申告を行い、消費税を納めることになります。

年間440万円の売電収入に対し、年間のメンテナンスコストが20万円の場合、440万円から20万円を差し引いた420万円に対して消費税がかかることになります。

この場合、支払う消費税は年間31.1万円(420万円÷1.08×8%)となります。

すると3年間トータルで考えた時の消費税還付メリットは以下のようになります。

1年目2年目3年目合計
消費税の還付金額 219万円   219万円
消費税の支払金額△31.1 △31.1△62.2万円
差引メリット 219万円 △31.1 △31.1 156.8万円

 

3年間支払う消費税を含めて考えると、消費税還付によるトータルメリットは156.8万円になります。

仮に毎年の小型風力売電の収入が20年間、420万円続くとすると、消費税の還付があるケースとないケースでは、表面利回り、投資額の回収年数に次のように異なります。

消費税の還付があるケース
20年間の表面利回り (420万円×20年+156.8万円)÷3,600万円÷20年=11.9%
投資回収年数 3,600万円÷(420万円×20年+156.8万円)÷20年=8.41年

消費税の還付がないケース
20年間の表面利回り 420×20÷3,600万円÷20年=11.7%
投資回収年数 3,600万円÷420万円=8.57年

 

消費税還付のメリット②償却資産税負担軽減

小型風力投資を行う場合、事業用の資産である小型風力設備に対し、1.4%の償却資産税がかかることなります。

そして、消費税還付を受けるメリット場合、この償却資産税の負担の軽減を行うことができます。

消費税還付を受ける場合、消費税の申告を行いますが、消費税の申告を行う方は、経理処理で税抜処理と税込処理のいずれかから選択する必要があります。

 

償却資産税は、小型風力設備の購入金額に対してかかる税金ですが、税抜処理と税込処理では以下のように償却資産税の金額が異なります。

税込処理の償却資産税=小型風力設備の税込金額×減価残存率(経過年数に応じて低下)×税率1.4%
税抜処理の償却資産税=小型風力設備の税抜金額×減価残存率(経過年数に応じて低下)×税率1.4%

税込金額÷1.08=税抜金額となりますので、税込金額<税抜金額となり、消費税の処理方法を税抜処理を選択することで償却資産税の負担を軽減することができます。

税込経理と税抜経理の違いについての詳しい説明はこちら

ここまでが消費税還付を受けるメリットになります。

ここから消費税還付を受ける場合のデメリットについて説明していきたいと思います。

消費税還付のデメリット①経理処理の複雑化、3年間の消費税還付申告の手間とコスト

税抜経理を行えば、上記のように償却資産税の負担を軽減することができますが、

その反面、経理処理が大変になってしまうことがあげられます。

さらに、消費税還付を受ける場合には、3年間消費税の申告をし続ける必要があります。

ご自身で経理処理、消費税申告を行うのが難しい場合、税理士事務所へ依頼するケースもあるかと思います。

経理処理、消費税申告を税理士事務所に丸投げ依頼するとその分税理士報酬がかかってしまうことになります。

税理士に依頼する場合、税理士報酬を消費税還付金額で回収できるかどうかを判断する必要があります。

 

消費税還付のデメリット②税務調査の可能性が高くなる

これは小型風力の場合に限りませんが、一般的に消費税の還付を受ける場合、税務調査が入る可能性が高くなります。

税務調査=できれば入られたくないのはみなさん一緒だと思います。

税務調査は、まず、税務署から本人へ直接連絡が入ります。

その後、日程調整を行い、税務調査がスタートします。

税務調査は通常1日で終了しますが、平日に行われるため、本業に支障がでてしまいます。

もし、税務調査で経理ミスが分かった場合には、通常の税金以外に加算税、延滞税などのペナルティー的な税金がかかってしまうことになります。

消費税還付を受けるための手続き

このように消費税還付を受ける場合、以上のメリットとデメリットがあります。

税務調査が入られるリスクを絶対に負いたくないという方は別ですが、デメリットを上回るメリットがあるように思います。

そして、この消費税の還付手続きを受けるためには、投資初年度の年末までに「消費税課税事業者選択届出書」の届出が必要になります。

消費税課税事業者選択届の記載例はこちら

 

2基目以降の取得の場合、投資用不動産を前年度末以前に取得している方は、別途の手続きが必要となります。

初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。

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