本ブログでは、中小企業において、生産性を上げることで、利益を残しながら、従業員の給与アップを同時に仕組みとその場合に注意すべきリスクについて解説しています。

まず、中小企業において生産性を上げる目的は何でしょうか?

企業が利益を増やすため?

資金繰りを改善するため?

給与を上げるため?

残業を減らすため?

継続的に投資をしていくため?

設備投資を抑えるため?

倒産しにくい強い会社にするため?

 

まず、何のために生産性を上げたいのか、複数目的があれば、特にどの目的を重視しているのを明確にすることが大切です。

 

なぜなら、生産性は、色んな方法で表すことが出来、その方法は無限大にあるからで、その目的次第で指標とする生産性が変わってくるからです。

 

生産性とは何か

生産性とは、「アウトプット÷インプット」です。

アウトプットとインプットというとイメージがつきにくいので、言い換えると、

アウトプット=成果

インプット=成果を得るために活用した資源

小さな・少ない資源でいかに高い・大きな成果を得ることできるかを表したのが生産性です。

ムリなく、効率的、計画的に成果を得ることを継続するための指標が生産性です。

 

生産性を考える時に最も大切なのが、なぜ、その「成果」をムリなく、効率的に得ることが必要なのかです。

つまり、今、どんな目的を達成すべきか?を明確にすることです。

 

生産性アップすると誰に(何に)どんな良いことがあるのか?

 

つまり、生産性アップによって、「誰にとって、どんないいこと」をもたらしたいかを決めることで、生産性の得るべき成果(=アウトプット)が見えてきます。

 

企業と従業員がwinwinになるには

企業と従業員がお互いにwinwinになるよう「会社に利益を残しつつ、給与アップ」が目的であれば、限界利益を成果(=アウトプット)とすることが考えられます。

なぜなら、限界利益を増やすことが、会社に利益を残しつつ、給与アップをするための条件となるからです。

 

つまり、目的を達成するための条件となる成果を生産性の分子として設定する必要があります。

 

限界利益とは、売上から材料費、商品原価などの変動費を控除した後の利益です。

売上数量が増加すると売上に比例して増加するコストが変動費です。

売れた数に比例して増えるコストが変動費です。

 

変動費以外のコストである人件費を含む固定費は、売上数量が増加しても多少の増加はあっても大きな増加は生じません。

 

よって、売上増加すると限界利益が増加するため、増加した限界利益は、何もしなければ、利益の増加につながります。

つまり、給与アップのために新たな原資を得るには、限界利益を増加させなければならないことになります。

 

次に、ムリなく、効率的に限界利益を増加させるために、どんな資源を活用し、コントロールしなければならないか?、分子となるインプットを何するかについて考えます。

経営資源は一般的に「ヒト」「モノ」「カネ」です。

限界利益が増加しても、人が増えたり、労働時間が増えたりすると、給与アップと会社に利益を残すことは同時に実現できません。

よって、コントロールすべき資源、インプットは、「ヒト」となります。

そして、「ヒト」という資源を量的に表すと、人数、時間となるため、分子が従業員数や労働時間で生産性を捉えることになります。

これが生産性の代表的指標である労働生産性という指標です。

労働生産性を用いる時の注意点とリスク

この労働生産性をいくらにすれば、自社の利益はどうなるか、給与アップはどれだけできるか?を明確にして初めて、目指すべき労働生産性が見えてきます。

○○円以上ないと‥などの唯一絶対の答えはありません。

そして、労働生産性に適正値というものは存在しないと思います。

仮に、業界平均より高い労働生産性を達成したとして、誰にどんな良いことがあるのでしょうか?

いくら高い労働生産性を達成しても、顧客満足度が低い状態だと、顧客離れが生じ、限界利益が下がる可能性があり、労働生産性を長期でキープすることは難しくなります。

また、効率を重視した徹底した管理により、高い労働生産性を達成した結果、マニュアル化、標準化され、裁量の余地がなくなり、スタッフのモチベーションをキープできなくなるかもしれません。

過去の借入が多額で、資金繰りが回らない可能性もあり得ます。

 

この労働生産性を考える場合、他社や業界平均値よりも、まずは、自社の状況を踏まえ、自社をどんな会社にしたいか、そこで働く人たちにどんな働き方、どんな給与水準を提供したいかを明確にすることが最も大切だと思います。

そして、何より提供すべき顧客価値を明確にし、ブレることなく、自社の目指すべき労働生産性を設定すべきです。

数値目標を設定する際に全般に言えることで特に生産性を用いる場合に注意すべきは、自社に視点が向きがちで顧客にとっての価値が見逃されやすい点です。

顧客あっての売上、利益のはずが、ついつい自社の生産性にのみフォーカスしがちでになり、顧客満足を低下させてしまいます。

短期的に自社の生産性を上げるには、顧客利益を犠牲にするのが楽だし、簡単だからです。

生産性を用いる際は、「顧客満足」の視点を必ずをセットで目標とされてみてください。