先日、海外を拠点ビジネスをされているお客様からのご相談で次のようなご相談がありました。
「今、労働分配率が30%がなっていますが、どうでしょうか?」
私は、
「なぜ、労働分配率を30%に抑えているのですか?」
とお聞きすると、
「固定費の2年間を手元資金として貯めておかないと不安だからです。」
とおっしゃいました。
中小企業で手元資金をいくら保有するか、ストックしておくべきかを定義することは、非常に大切な問題です。
そこで、次の質問をしました。
「固定費の2年間の根拠は何かあるのですか?」
するとお客様は、
「明確な根拠はないのですが、売上が今のように安定していない時期、2年は必要と自分の中で決めました」
とおっしゃいました。
手元資金をいくら保有するのかについて明確な答えを出すことは非常に困難です。
資金に関する研究をされておられた、早稲田大学の名誉教授の染谷恭次郎先生は、
様々な変動要因を踏まえ、手元現金の保有金額について次のようにおっしゃっています。
「現金収入が止まって、2~3週間、あるいは1~2か月の現金支払にことかかない程度する」
また、ドラッカーは、利益について次のように言っています。
ここでは、利益=資金を同義に考えてみます。
「会社にとっての利益は人間にとっての酸素と同じである…必要以上に酸素を取りすぎると健康を損なう‥」
「手元資金をいくら保有しておくべきか」、つまり、適正保有金額を算出するためには、次の事項を総合的に検討する必要があると考えております。
・売上、粗利益の安定性
・借入金の返済額を含めた固定費の金額
・「攻め」に必要な資金がどの程度か⇒マーケティングコスト、イノベーションコスト、人材コスト(採用、教育コスト)、設備の切り替え、維持メンテナンスコスト
・「守り」に必要な資金がどの程度か⇒突発的なコスト、損失の発生の有無、得意先の貸倒、倒産リスク、為替リスク、損害賠償リスク等の程度
・今後の融資の必要性
・有価証券、株式、簿外の保険など換金できる資産の有無
以上の事項は、業種等によって一律に決めることができる事項ではなく、
その会社の経営理念、ミッション、ビジョン、戦略、成長段階、これまでの経営の内容、認識しているビジネスチャンス及びビジネスリスクによって異なります。
また、これらは、市場、労働環境が変化し続ける限り変化し続けます。
よって、これらを定期的に見直しを行い、
各種ビジネスリスクを抑えつつ、備え、攻め時に攻めることができるよう手元資金を適切に保有する必要があると考えております。

佐藤修一公認会計士事務所代表、合同会社CMA代表
キャッシュフロー経営コンサルタント 公認会計士 税理士
新日本有限監査法人(現 EY新日本有限責任監査法人)の東京事務所で上場企業の会計監査、総務省委託研究経理検査、内部統制構築支援、財務のデューデリジェンスに従事
その後、地元の福岡の中堅の税理士法人にて、中小企業の経営を会計、税務面からサポート
試算表ではキャッシュフローが見えない、経営できないと感じ、キャッシュフローを重視した経営の必要性を痛感し、佐藤修一公認会計士事務所を2013年8月に開業
開業後は、創業期の会社から上場準備会社まで中小企業の成長のための投資に備え、倒産しない、筋肉質の会社を作るためのキャッシュフロー経営の普及、freeeやマネーフォワードなどクラウド会計を使った経理の効率化・スピードアップを図り、経営ビジョンの明確化、実現のためのサポートを行っている
北部九州公認会計士協会所属 登録番号 028716
九州北部税理士会 福岡支部所属 登録番号 125272
経済産業省認定 経営革新等支援機関