仕入と在庫の計上方法をわかりやすく解説|期首・仕入・期末在庫の仕組み

経理処理

佐藤修一

こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。

「仕入は全部経費になる」と思っていませんか?
実は、在庫として残っている分はその期の経費にはならず、翌期に繰り越されます。
この記事では、小売・卸売業でよく使う「期首在庫・仕入・期末在庫」の仕組みと仕訳の流れを、実務担当者向けに解説します。
正しい在庫管理を押さえることで、売上原価や利益の把握が正確になり、経営判断にも役立ちます。

仕入と在庫の仕組み

商品を仕入れてもすべてを経費として計上するわけではありません。仕入れた商品は、販売するまで在庫として残ります。この在庫が期末に残っている場合は、その期の経費(売上原価)から除外され、翌期に繰り越されます。

つまり、経費として計上されるのは「実際に売れた商品」に相当する金額だけです。この考え方は、損益計算書の「売上原価」を正しく計算するための基本となります。

仕入れと在庫の管理を正確に行うことで、正しい売上原価や利益を把握でき、在庫水準や仕入計画、販売戦略などの経営判断に活用できます。経営者や管理者がより適切な意思決定をするためにも、在庫管理と仕訳の整合性は非常に重要です。

売上原価の基本式

売上原価は次の式で計算します。

売上原価 = 期首在庫 + 当期仕入 - 期末在庫

期首在庫:前期から繰り越した商品

仕入:当期に仕入れた商品

期末在庫:当期末に残っている商品

この式を押さえておくと、仕訳の意味も理解しやすくなります。

実務での仕訳の流れ

① 仕入時

仕入は「仕入高勘定」で処理します。

例:商品を50万円、現金で仕入れた場合

(借方)仕入高 500,000 / (貸方)現金 500,000

掛仕入なら現金ではなく「買掛金」を使います。

② 期首在庫の振替

前期末に残った在庫は、期首に当期の売上原価に組み入れるため仕訳で振り替えます。

例:期首在庫が100万円の場合

(借方)仕入高 1,000,000 / (貸方)商品 1,000,000

これにより、期首在庫が当期の売上原価に含まれます。

③ 期末在庫の振替

決算で棚卸を行い、残った商品を「商品」として資産に振り替えます。

例:期末在庫が120万円の場合

(借方)商品 1,200,000 / (貸方)仕入高 1,200,000

こうすることで、残った商品分は当期の経費から除外されます。

<期末在庫の流れ>

今期末:期末に残った商品はまだ売れていないため、今期の売上原価には含まれません。資産として計上します。

翌期:翌期の期首には、この残った商品が前期からの繰越在庫として計上され、販売した分だけが売上原価に含まれます。

具体例で確認

  • 期首在庫:1,000,000円
  • 当期仕入:5,000,000円
  • 期末在庫:1,200,000円

仕訳の流れは次のとおりです。

期首の振替

(借方)仕入高 1,000,000 / (貸方) 商品 1,000,000

当期の仕入

(借方)仕入高 5,000,000 / (貸方) 買掛金 5,000,000

期末の振替

(借方)商品 1,200,000 / 仕入高 1,200,000

この結果、損益計算書に表示される「仕入高」勘定の残高は 4,800,000円となります。

期首在庫 1,000,000+ 当期仕入5,000,000 - 期末在庫1,200,000=売上原価4,800,000

これがその期の 売上原価(=経費) です。

注意すべきポイント

仕入と在庫の計上は一見シンプルに思えますが、実務ではいくつかの落とし穴があります。
特に、棚卸を怠ると帳簿上の在庫と実際の在庫にズレが生じ、売上原価や利益の数字が大きく狂ってしまいます。
また、仕入にかかる費用や返品の処理なども、会社としてルールを統一しておくことが大切です。

具体的には、次のような点に注意が必要です。

  • 在庫数のズレ:実地棚卸を怠ると売上原価が正しく計算できず、利益も誤った数字になります。
  • 付随費用の扱い:送料や保険料などを仕入額に含めるかどうかを社内で統一する必要があります。
  • 返品や仕入割引の処理:仕入額を修正せずに放置すると、原価が膨らんでしまいます。

こうした細かい処理を積み重ねることで、最終的に正確な決算書を作成することができ、正しい利益計算と経営判断が可能になります。

まとめ

仕入と在庫の計上では、期首在庫・当期仕入・期末在庫の関係を正しく理解しておくことが重要です。
売上原価は「期首在庫に当期の仕入を足して、期末在庫を差し引く」というシンプルな計算式で求められますが、実務では仕訳のタイミングや棚卸の正確性によって利益が大きく変わることがあります。
仕入は購入した時点で仕入勘定に計上し、決算時に残った在庫は商品として振り替えることで、正しい売上原価を算定できます。
こうした在庫管理と仕訳の流れを押さえておくことが、小売業や卸売業の経理担当者にとって、正確な決算書を作成するための基本となり、また、正確な利益計算と経営判断の基本となります。

佐藤 修一

税理士法人Accompany 代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。