企業は「なぜ利益が必要か?」利益目的は?ドラッカーの言葉から税理士が分かりやすく解説
経営・マネジメント
2024/12/11
2014/06/05
企業にとって「なぜ利益が必要か」?
売上を上げるため、企業は日々色んな活動を行っていると思います。
もしかしたら売上を上げれば、赤字でも企業にとって問題ないのでは‥
本ブログでは、日々中小企業の利益を計算してる税理士が、利益目的、利益の必要性について、ドラッカーの書籍「現代の経営」から利益がなぜ必要かについて説明しています。
利益の必要性の前に、まず、利益とは何かを考えてみます。
利益とは何か
企業が獲得した売上から企業がコストを負担した結果、残った金額が利益です。
売上よりもコストが大きければ、利益がでていることになり、‥売上>コスト
売上よりもコストが小さければ、利益がでていないことになります。‥売上<コスト
なぜ、コストより売上の方が大きくなる必要があるのか、以下で考えていきます。
ドラッカーの言葉 利益の3つ目的
ドラッカーは、「現代の経営」で利益の3つの目的と必要性についてこう述べてます。
①「利益は事業活動の有効性と健全性を測定する。まさに利益は事業にとっての究極の判定基準である」
②「利益は陳腐化、更新、リスク、不確実性をカバーする」
③「利益は、直接的には社内留保による自己金融の道を開き、間接的には事業に適した形で外部資金の導入要因となることによって、事業のイノベーションと拡大に必要な資金の調達を確実にする」
■①については、利益の金額が事業がうまくいっているかを評価する基準となることです。
売上だけでは事業がうまくいっているかどうかは分かりません。
売上-原価-経費を引いたあとの利益がなければ、事業がうまくいっているとは言えません。
売上=成果であり、原価=投資、努力であります。
投資、努力を上回る成果をあげて資金が必要な金額が残らなければ、事業がうまくいっていると言えません。
赤字とは、投資、努力より、成果の大きさが足りない状態です。
事業の評価は、売上ではなく、利益で行う必要があります。
■②について、「陳腐化」、「更新」、「不確実性」それぞれを考えてみます。
・「陳腐化」とは、流行遅れになることです。
商品・サービスには流行があり、いつか必ず、時代遅れになります。
また、市場によりよい新商品・サービスがいつか必ずでてきます。
そうなると、数が売れなくなり、価格が低下していきます。
そして、売上が減少します。
売上が減少すると、利益が減少し、手元資金がどんどん少なくなります。
この時代遅れになったり、より良い商品の出現による売上の減少に対する備えのために利益が必要だということです。
・「更新」とは、必要な時期に新しくあらためることです。
例えば、企業にとっての最大の資産である人材は、年をとって、退職していきます。
退職していく人材には退職金が必要です。
退職していく人材を補うために新しい人材を早めに確保し、育てる必要があります。
新しい人材は雇用し、すぐは利益を獲得する働き期待できません。
利益を生み出すよう、人材を育成するためには資金が必要です。
また、設備はいずれ、老朽化し、耐用年数を迎え、使えなくなります。
機能的にも新設備に切り替え時期がやってきます。
設備の切り替え投資には資金が必要です。
・「リスク、不確実性」とは、将来何が起きるか分からないことです。
将来が確実なことはありません。
例えば、得意先の倒産、優秀な営業マンの突然の退社、風評被害、原材料の急な価格の高騰等はいつ起こるか分かりません。
これら突発的な事故、アクシデント等による売上減少や原価上昇に対する備えのために利益が必要です。
■最後に③についてです。
まず、「イノベーション」と「拡大」について考えてみます。
・事業を発展させていくには、「イノベーション」が必要です。
「イノベーション」とは、より優れた商品・サービスや、現状の商品・サービスをより少ない資源で商品を生み出すことです。
「イノベーション」を起こすには、現状の商品やサービスを改良するか、全く新しい商品・サービスを開発することが必要になる場合があります。
このためには、商品・サービスの売上に先だって市場調査、研究開発活動、マーケティング等のコストがかかります。
・「拡大」とは、事業拡大のことです。
例えば、新店舗展開等の事業拡大には、売上に先だって市場調査費、設備投資、広告費等のコストがかかります。
以上のように「イノベーション」や「拡大」を行う場合、売上に先だち多大なコストが発生します。
また、売上が生じてもすぐには、大きな売上にはならないこともあります。
「イノベーション」や「拡大」が成功し、コストが回収できるとは限りません。
よって、「イノベーション」や「拡大」を実行するには、手元にある資金、今までの事業で蓄積した利益で行う必要があります。
何故なら、「イノベーション」や「拡大」のための回収可能性のリスクが高いコストを負担する資金は、企業の自由に使える「利益」である「資金」が一番適しているからです。
しかし、「イノベーション」や「拡大」を行うタイミングに手元に資金があるとは限りません。
「イノベーション」や「拡大」のビジネスチャンスのタイミングを逃すわけにはいきません。
・「直接的には社内留保による自己金融の道を開き、間接的には事業に適した形で外部資金の導入要因となる」についてです。
手元に資金がない場合には、資金を金融機関から借りるか出資を集める必要があります。
金融機関から借りるにしても、「イノベーション」や「拡大」のような成功の確率が未確定な事業の資金の融資を希望することは、過去の事業実績があり、自己資金の割合が高くなければ、融資してくれません。
過去の事業実績が利益であり、利益が自己資金として保有されていることが金融機関から、または、株主からの出資を集める条件となるのです。
以上が私なりの解釈した利益の目的と必要性です。
事業の評価は売上ではなく、利益で行うべきです。
ドラッカーのいう、3つの利益の目的と必要性で、考えている以上の金額の利益が必要になることが分かります。
目先の資金繰りを回すことができる利益の金額では、ドラッカーのいう、3つの利益の目的と必要性をカバーすることはできません。
事業を長期的に継続するためには、あらゆるリスクに備え、発展、拡大していくために利益が必要になります。
個々の企業により、事業の事業内容、事業の評価基準は異なりますし、長期的なビジョン、リスクの捉え方、自己資金の金額は異なります。
よって、利益がいくら必要かとの答えは、個々の企業は次第です。
下記の記事で利益の役割をもう少し分かりやすく説明しております。
佐藤 修一
佐藤修一公認会計士事務所代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。