交際費を支払ったら節税になるのか？

年末が近くなるこの時期になると忘年会やお歳暮など会社での催しや取引様への日頃の感謝を込めた送りものなどをする機会も増えるのではないでしょうか。

このような会社の支出は、通常、交際費として処理されます。
そこで今回は交際費としての支出に節税効果があるのかについてご説明いたします。

最後まで読んでいただければ、交際費として支出をする際の判断材料の一つになるのではないかと思います。

是非、最後まで読んでいただければ幸いです。

節税とは

具体的な交際費について話をする前に節税について考えてみましょう。

節税とは、関東信越税理士会の税務コンテンツの税務会計用語集によると、「節税とは、適法の範囲内で納税負担を軽減することをいいます」と説明されています。

脱税とは異なるものとして定義されています。

関東信越税理士会　税務コンテンツ　税務会計用語集より
引用：https://www.kzei.or.jp/contents/tax_accounting/2012/10/post-196.html

脱税とは

次に、脱税についても触れておきます。

脱税とは、国税庁の税の学習コーナーのよると、「脱税とは、悪いこととわかっていながら、いろいろな手段や方法で税金をごまかして少なく納めたり、まったく納めなかったりすることを脱税といいます」と説明されています。

国税庁　税の学習コーナーより
引用：https://www.nta.go.jp/taxes/kids/qa/index.htm

節税と脱税の違い

以上のことから、節税と脱税を比較すると、合法なのか違法なのかにその違いがあることが分かります。

それでは、次からは具体的に交際費に節税を絡めて話をしていきたいと思います。

交際費で節税は可能か

それでは、交際費を支払うことによって節税は可能なのかを考えてみます。

まずは、交際費とはどのようなものか、交際費の意義から見ていきましょう。

交際費の意義

「交際費等」とは、得意先や仕入先などとの接待・贈答・接待ゴルフ・会食など、事業を円滑に進めるために支出する費用をいいます。

ただし、単なる浪費や私的な飲食は対象外です。

交際費は節税効果が限定的

交際費を支払っても節税の効果が限定的である理由を説明します。

一言で言うと費用≠損金であるためです。

損金とは法人税を計算する上での費用のことです。

つまり、交際費を支払っても税金が減らないことがあるということです。

中小企業には特例あり

中小法人（資本金1億円以下）については、次のいずれかの方法で損金算入が可能です.

選択	節税効果
①　年800万円までの交際費を全額損金算入	つまり、800万円までなら節税効果あり。
②　飲食費の50%を損金算入	800万円を超える場合などに有利なケースがあります。 （ただし、取引先などとの会食であることが条件です）

個人事業主の場合

個人事業主の場合は、「交際費」として特別な上限はありませんが、業務に必要な接待等であることを説明できる必要があります。

税務調査でプライベートとみなされると、経費否認（節税効果なし）になるので注意が必要です。

注意点（法人・個人共通）

領収書に参加者・目的・日付・金額を明記することが重要です。

社員同士の飲み会や歓送迎会は「福利厚生費」扱いにできることもあり、こちらの方が節税効果が高い場合もあります。

具体的な事例

交際費に該当する支出として典型例をご紹介します。

取引先との飲食・接待

• 取引先との会食
• 接待ゴルフ
• 取引先とのカラオケ・バーでの接待
• 会食時のタクシー代（接待に付随するもの）

取引先への贈答・手土産

• 手土産（菓子・果物など）
• お中元・お歳暮
• お祝い・香典
• 開店祝いや就任祝いの花

取引先との行事・催し物

• 接待旅行
• 取引先を招いた観劇・イベント招待
• ゴルフコンペ招待費用

社内の飲み会は交際費ではない（福利厚生費）

• 歓迎会・送別会
• 忘年会・新年会
• 社内懇親会
• 社員旅行

不特定多数への贈り物（広告宣伝費）

• 来場者へのノベルティ
• 見込み客への粗品配布

少額の取引先飲食（1人あたり10,000円以下）は交際費ではない

法人の場合ですが、取引先との飲食費が「1人当たり10,000円以下」なら接待飲食費として損金扱い可です。

※正確には「交際費扱いにしなくて良い」という特例です。

純粋な福利厚生の贈り物（社内向け）

• 社員の誕生祝い
• 慶弔金（社内）

交際費かどうか迷う典型例

交際費かどうか迷う典型例をまとめました。

参考にされてください。

行為	交際費かどうか
社内飲み会に取引先1名だけ参加	交際費（取引先が参加しているため）
取引先と打ち合わせ後にコーヒー代	交際費（目的が接待と判断されるため）
ゴルフの練習代	会社の宣伝目的でもない限りは、原則交際費

交際費で必要な記録

領収書の裏に次の記録がとどめておくことが肝要です。

• 日付
• 金額
• 店名
• 参加者（会社名・氏名）
• 支出の目的（打ち合わせ後の懇親、成約御礼など）

これがあるだけで税務調査のリスクが大幅に下がります。

まとめ

中小企業や個人事業者は一定の交際費は経費（法人の場合は損金）になるため節税効果があることが分かっていただけたと思います。

ただし、税金の支払いを抑えるために、交際費として現預金が流出してしまうだけでは意味がありません。

本当に必要な支出かどうかを見極めて、会社のため、従業員のため、取引先のために意義のある支出であれば、節税効果も相まって意味のあるものになるのではないでしょうか。

最後に

結論：原則、交際費は一定の節税効果はあります。

ただし、法人の場合は、法人税を計算する上で交際費の上限が設けられているため、節税にならない場合もあり得ます。

個人の場合も事業と関係の無い私的な支出は経費として認められません。

法律（税法）のルールに則って、認めれた範囲内で交際費の支払いをして、きちんと記録を残しておくこと。そして節税目的で無駄な支払いをしないことが一番効率的です。

是非参考にされてみてください。