免税事業者がインボイス登録をしないなら2%値引きするよう取引に言われた場合、下請法違反になるのか?代替案の提案は可能なのか?

税務・節税

インボイス登録をしないなら2%値引きするよう取引先に言われた場合は下請法違反になるのか?代替案はあるのか?
佐藤修一

こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。

今回は「インボイス登録」と「それに付随する値引き交渉」についてご説明します。

インボイス登録をしていない事業者との取引は消費税法上不利な取引となります。

しかし、そのことをもって「取引自体をやめたり」「不当な価格交渉をしたり」することは、下請法違反に該当する可能性があります。

そのため、インボイス登録の有無を理由に不当な取引を行う場合、下請法違反による違反行為をしてしまう可能性もありますし、同法による違反行為を受けてしまう可能性もあります。

経済産業省・公正取引委員会も問題視をしていますので、どちらの立場になるにしても注意が必要です。

最初にインボイス制度の簡単な説明と値引き交渉の背景とその対応について説明します。後半では下請法との関係性について説明しますので最後まで読んでいただけますと幸いです。

是非、参考にされてください。

インボイス制度とは

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、仕入税額控除の適用を受けるために、売り手(取引相手)であるインボイス発行事業者から仕入れの際にインボイス(請求書等)を交付してもらい、そのインボイスを保存しておく制度です。

  • インボイス登録していない免税事業者から仕入れをした場合、仕入税額控除できません。
  • そのため、課税事業者である取引先は消費税の納税負担が増えることになります

取引先が値引き交渉をする意味

インボイス発行をしてもらえないと、取引先は消費税分(10%または8%)の仕入税額控除ができなくなります。

「その不利益を被る分を少しでもカバーしてもらおうとしている」という背景があります。

そのため、次のような交渉をしてくることがあります。

  • インボイス登録していないならその分の値引きをしてほしい。
  • 仮に10%全額ではなくとも、2%だけでも相殺してほしい。

判断のポイントと代替案及び対応例

①判断のポイント

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判断軸内容
価格交渉値引きに応じるかどうかは「ビジネス判断」です。相手との関係性、価格競争力、自社の利益率などを考慮して交渉しましょう。
断続的な関係取引先が「登録してくれないなら取引停止する」と言ってきている場合、今後の取引を継続するためにどうするか検討する必要があります。
法的義務登録しないこと自体は法律違反ではありませんし、取引価格は双方の自由な合意に基づき決定されます。そのため強制力はありません。

②結論

必ずしも言われた通りにする必要はありません。

ただし、次の点に注意してください。

  • 継続的な取引が大切であれば、2%値引きで済むなら応じてもいいと考える人もいます。
  • 逆に、この条件は不利と思うならば、しっかり交渉すべきです。

③代替案・対応例

次のような方法が考えられます。

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代替案/対応例内容
値引き幅の交渉2%の値引きではなく1%の値引きではどうかなどの交渉をする。
インボイス登録の時期を伝える将来的には登録予定であると伝えると交渉の余地があることもある。
別の取引先を検討値引き交渉に納得できなければ、他の取引先を探すのも選択肢のひとつです。

インボイス制度と下請法の関係

佐藤修一

下請法を理解する重要性をお伝えします。

インボイス制度と下請法はそれぞれ独立した法律に基づいていますが、実務上で交差する場面があり、特に注意が必要です。

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項目内容
インボイス制度消費税の仕入税額控除のために、適格請求書(インボイス)の発行・保存を義務づける制度(令和5年10月開始)
下請法(下請代金支払遅延等防止法)元請け(親事業者)が下請け(下請事業者)に対して不当に不利益を与える行為を禁止する法律

問題となるポイント

① インボイス未登録=値引きや不利益扱い

インボイス制度開始後、次のようなケースが問題視されています。

典型的な問題例を紹介します。

  • 「おたく、インボイス登録をしていないなら取引価格を下げて」
  • 「登録していないなら取引をやめます」
  • 「登録をしていないことを理由に一方的に支払いを減額」

これらは、状況によっては下請法違反(不当な減額/不利益取扱)に該当する可能性があります。

② 下請法に違反する可能性のある行為(経産省の指導例)

経済産業省・公正取引委員会は以下のような行為を問題視しています。

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行為内容下請法の観点での問題
インボイス未登録を理由に、代金を一方的に減額不当な減額に該当
未登録を理由に、支払いの一部(消費税相当)を支払わない代金の支払拒否に該当
インボイス登録を強要する(登録をしないと取引停止)不当な取引停止や優越的地位の濫用の疑い

③ 実際のガイドライン(参考)

経済産業省や中小企業庁、公正取引委員会は、インボイス制度の開始に伴う買いたたき行為等に関する注意喚起を出しており、以下の点を強調しています。

Warning

下請事業者が適格請求書発行事業者でないことを理由として、取引価格の引き下げ、取引停止等の不利益な取扱いを行うことは、下請法に違反するおそれがある。

④ 対応のヒント(下請事業者側から見た場合)

値引き要求されたら、記録を残す

  • メール、議事録、チャットなど
  • 言葉だけでの口頭による交渉だけではなく証拠を残す

不当に思える場合は相談する

  • 中小企業庁/公正取非委員会/商工会議所/弁護士などに相談する
  • 「下請かけこみ寺」制度も有効です

交渉の余地があるなら冷静に対応

  • 感情的にならずに、制度の正しい理解を共有することが重要です

まとめ

以下、インボイス制度と下請法のまとめです。

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観点ポイント
インボイス制度税制度であり、登録は任意(特に免税事業者は)
下請法元請による不当な値引きや不利益扱いは禁止されている
登録をしていないことを理由に価格引き下げ等下請法違反となるおそれがある
対策法記録保存/相談/冷静な交渉

最後に

佐藤修一

いかがでしたでしょうか。

インボイス制度と下請法は別の制度ですが、インボイス制度を通じた元請事業者からの不適当な行行為を救済する/される関係にあります。

両方の制度に精通していないといざというときに不利益を被ることになります。

もしご不明な点や具体的な手続きについて知りたい場合は、経済産業省や中小企業庁に問い合わせてみるのもよいですが、最寄りの税理士などの専門家にご相談いただけると幸いです。

是非参考にされてみてください。

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佐藤 修一

税理士法人Accompany 代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。