美容室経営に必要な会計・税金のポイント
経営数字の見方・活用方法
美容室経営を行う上で、必要な会計について説明しています。
美容室は、日銭商売で利益をきちんと出せば、資金繰りが楽になりやすく、多店舗展開を行いやすい業種です。
■売上目標の設定⇒具体的に何をするか
売上高の目標を決める前に売上高を次のように分解してみます。
売上高=カルテ数×平均来店頻度×平均顧客単価。
カルテ数、平均来店頻度、平均顧客単価の3つの数字から売上の最大化を目指します。
例えば、現在の月の売上高が160万円とします。
売上高を分解してみると、カルテ数が320、平均来店回数が1回、平均単価が5,000円だったとします。
月の売上高160万円=320人×1回×5,000円
200万円を売上の目標とします。
この場合、売上の25%アップの40万円が更に必要です。
それには次の①~③を達成すれば、200万円の売上を達成できます。
①新規のカルテを80人分(=320人×25%)増やす
200万円=400人×1回×5000円
②平均来店頻度を0.25回(=1回×25%)上げる
200万円=320人×1.25回×5000円
③平均客単価を1,250円(=5,000円×25%)上げる
200万円=320人×1回×6,250円
①~③のいずれかを達成するには、かなりのお金と労力が必要です。
では3つの目標であるカルテ数、来店頻度、顧客単価を10%ずつアップしたとします。
すると、
月の売上高212万円=352人(320×1.1)×1.1回(1×1.1)×5,500円(5,000×1.1)
売上高は、160万円から212万円と24%も増加します。
このように3つの数字それぞれ目標設定することで、
目標を達成するには、スタッフ全員で何を行う必要があるのかがはっきりしてきます。
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■コストの把握と3か月分の固定費分の資金をストック
美容院では、一方売上は、12月、3月に大きくなる傾向がありますが、経費の発生は売上の増加と必ずしも比例しません。
経費には、毎月発生するものとそれ以外に毎月ではなく、年に数回発生するものがあります。
毎月かかる経費のことを「固定費」といいます。
美容院の固定費には、人件費、社会保険料、地代家賃、広告費、水道光熱費等に加え、借入金の返済等があります。
美容室の集客のための広告宣伝費の考え方は特徴的です。
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毎月かかる経費以外で金額的に重要なものとして、ボーナス、そして消費税があります…
美容院では人件費が大きくなるため、どうしても消費税が大きくなってしまいます。
また、ボーナスも支給する場合は、金額的に大きくなります。
そして、消費税は、中々さげることが難しい税金です。
今後消費税率が10%に上がった場合、そのインパクトは大きくなっています。
消費税は、一時的に預かっている税金ですので、納めるまで手元ストックしておくことが必要です。
手元のお金の割に消費税が大きい、消費税分の資金のストックがない‥という事態は避けなければいけません。
そのためには、毎月かかる経費以外の金額を把握し、その金額分毎月ストックする必要があります。
固定費(=毎月の経費)+毎月の消費税+ボーナスの年間支払見込み金額÷12=実質的な1か月分のコスト
手元資金のストックが少ない場合、目先の売上、資金繰りに考えがとらわれてしまいがちです。
資金繰りに悩まされることなく、将来の売上を増やすための準備のためにも資金をストックしておく必要があります。
美容業の将来の売上を増やすために必要なのは、「人への投資」、つまり、先行的な人の採用、教育などへの投資だと考えております。
これらのためにも、上記の実質的な1か月分のコストに対してその3か月分は、最低手元にストックしておくべきだと考えております。
このように売上と経費をどのようにコントロールしていくのかを数値的に分析し、
戦略的かつ計画的に行うこと将来を見据えた経営を行うことができるようになります。
佐藤 修一
佐藤修一公認会計士事務所代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。