手元資金・預金はいくら必要か
経営数字の見方・活用方法
2015/12/10
2015/12/10
先日、海外を拠点ビジネスをされているお客様からのご相談で次のようなご相談がありました。
「今、労働分配率が30%がなっていますが、どうでしょうか?」
私は、
「なぜ、労働分配率を30%に抑えているのですか?」
とお聞きすると、
「固定費の2年間を手元資金として貯めておかないと不安だからです。」
とおっしゃいました。
中小企業で手元資金をいくら保有するか、ストックしておくべきかを定義することは、非常に大切な問題です。
そこで、次の質問をしました。
「固定費の2年間の根拠は何かあるのですか?」
するとお客様は、
「明確な根拠はないのですが、売上が今のように安定していない時期、2年は必要と自分の中で決めました」
とおっしゃいました。
手元資金をいくら保有するのかについて明確な答えを出すことは非常に困難です。
資金に関する研究をされておられた、早稲田大学の名誉教授の染谷恭次郎先生は、
様々な変動要因を踏まえ、手元現金の保有金額について次のようにおっしゃっています。
「現金収入が止まって、2~3週間、あるいは1~2か月の現金支払にことかかない程度する」
また、ドラッカーは、利益について次のように言っています。
ここでは、利益=資金を同義に考えてみます。
「会社にとっての利益は人間にとっての酸素と同じである…必要以上に酸素を取りすぎると健康を損なう‥」
「手元資金をいくら保有しておくべきか」、つまり、適正保有金額を算出するためには、次の事項を総合的に検討する必要があると考えております。
・売上、粗利益の安定性
・借入金の返済額を含めた固定費の金額
・「攻め」に必要な資金がどの程度か⇒マーケティングコスト、イノベーションコスト、人材コスト(採用、教育コスト)、設備の切り替え、維持メンテナンスコスト
・「守り」に必要な資金がどの程度か⇒突発的なコスト、損失の発生の有無、得意先の貸倒、倒産リスク、為替リスク、損害賠償リスク等の程度
・今後の融資の必要性
・有価証券、株式、簿外の保険など換金できる資産の有無
以上の事項は、業種等によって一律に決めることができる事項ではなく、
その会社の経営理念、ミッション、ビジョン、戦略、成長段階、これまでの経営の内容、認識しているビジネスチャンス及びビジネスリスクによって異なります。
また、これらは、市場、労働環境が変化し続ける限り変化し続けます。
よって、これらを定期的に見直しを行い、
各種ビジネスリスクを抑えつつ、備え、攻め時に攻めることができるよう手元資金を適切に保有する必要があると考えております。
佐藤 修一
佐藤修一公認会計士事務所代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。