個人事業から法人化することを「法人成り」と呼びますが、現在個人事業を行っている人は、法人化について一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

この記事では、法人と個人の違いや法人化のメリット・デメリット、法人化に適するタイミングについて解説します。

法人化のタイミングを検討する際の参考にしてください。

目次

法人と個人事業はどこが違う?

法人と個人企業で主に異なるのは、設立の手続きや社会的信用、税金面です。

法人の場合、所得税や消費税に加えて「法人税」が発生します。

法人化のタイミングを考える場合は、所得税や消費税などが検討するポイントとなるでしょう。

これらを踏まえ、まずは法人と個人事業のメリットやデメリットについて、以下の見出しで比較していきます。

法人化のメリット

法人化することでどのようなメリットがあるのでしょうか。

以下で詳しく解説していきます。

税金に関して個人事業と比べ節税の選択肢が多い

税金に関しては法人化することで個人事業よりも節税の方法のバリエーションが多くなっています。

節税のバリエーションの多さ=納税額が少なくなるわけでありません。

勘違いしていただきたくないのが=法人の方が節税できるわけではないことです。

よって、法人なりの際は、必ず、各種税金負担についてシュミレーションを行うことをお勧めします。

税金の構造が法人と個人では異なります。

ただ、最高税率の違いは知っておくべきです。

たとえば個人の場合、利益に対する税率は最高税率は、57.25%(所得税率、住民税率、事業税率【経費算入後の実質税率】)ですが、

法人の場合の最高税率は35%となるため、かなり多額の利益が出ている場合には、法人ならではの節税が可能となります。

その他、法人と個人の税金負担の違いについて具体的に以下で解説していきます。

経費のバリエーションが増える

法人は経費として処理できる費用の数が増えます。

特に役員報酬の金額設定次第で利益を大きく変化させることが可能です。

しかし、役員報酬に対し、個人法人負担合計で約30%の社会保険料の負担が増加するため、注意が必要です。

出張にかかる費用のみならず出張手当も経費として扱えます。

法人は、退職金制度を設けられるため、退職金の支払いも経費にできます。

交際費が800万円を超える場合、法人では経費出来ない点は注意が必要です。

赤字の繰り越しが最大10年間可能

個人事業の場合は赤字の繰り越しは最大で3年間しか認められていません。

しかし、法人の場合は赤字が出た翌年から9年間、最大10年の繰り越しが可能です。

赤字の繰り越しができることで、課税所得および税金を減らすことができます。

 

社会的な信用を高められる

個人事業主から法人化することで社会的な信用を高めることができます。

特にBtoBの企業間の取引を行う事業の場合、個人事業主としてやりとりを行うより法人の方がプラスに働くことが多いため、企業の取引先を増やしたい場合には法人化するのが望ましいといえるでしょう。

また、雇用の面で、法人と個人事業主では、法人の方が採用面有利です。

最近では、若い方を雇用する際は、親が法人ではないと認めてくれないという話も聞いたことがありました。

社会保険への負担が増加する

法人化をすることにより社会保険の負担が増加することがあります。

どのような場合に負担が増加するのかについて解説します。

社会保険負担が増加する

法人化することで、社会保険負担が増加します。

個人事業主の場合は原則として社会保険の加入義務は従業員を5人雇ったときに発生します。

しかし、法人の場合は人数にかかわらず、給与金額の約15%が法人側の負担として発生するのです。

特に、個人事業の場合には、社会保険料ではなく、国民健康保険料と国民年金を納めます。

国民健康保険料率は、料率が10~14%ほどで、上限が最大1一人当たり99万となっており、国民年金は、年間約20万と健康保険料と年金で合計約120万円です。

法人設立し、社会保険料になると、料率が28~30%ほどで、上限は、330万を超え、その負担は大きくなる可能性があります。

特に社長の給与が高い場合や、従業員数が多い場合には損益分岐点売上高が大きく上昇するため、しっかりとしたシミュレーションを行う必要があります。

「役員貸付金」が発生するケースがある

法人化すると「役員貸付金」が発生するケースがあります。

役員報酬以外に法人からお金を引き出した場合と盲点なのが、法人設立時に貸借対照表の「元入金」がマイナスの場合です。

「元入金」がマイナスの場合、事業資金が借入金に依存しているケースです。

基本的に個人事業の場合は儲かったお金を自由に使えますが、法人の場合は役員報酬を超える金額を使うと「役員貸付金」なってしまう点に注意が必要です。

また「役員貸付金」に対して、1%ちょっとの利益の計上が必要となり、法人税が若干増加します。

法人税負担より、「役員貸付金」があると、銀行融資でマイナス評価となるため、注意が必要です。

 

事務作業やコスト負担が増える

法人化することで経理作業に代表される決算業務や、複式簿記の必要性に応じた事務処理が増えます。

税理士事務所に支払う報酬が発生したり、自動車保険の保険料が高くなります。

設立費用や資本金を必要とする

法人化する際には、定款の作成や登録免許税など、25万円程度の設立費用がかかります。

そのため、法人化を考えている場合は初期費用もある程度、認識しておく必要があります。

また会社の信用が必要な場合は1円〜の資本金もある程度必要です。

行政の許認可が必要な法人もある

法人の中には、行政に許認可を取得することが必要なものもあります。

許認可を取得するには定款の作成と一定の資本金が必要になります。

また、許認可の中にも具体的に「許可」「認可」「届出」「登録」の4種類があります。

それぞれ許可の場合は、飲食店、建築業、人材派遣業が対象で、認可の場合は警備業が対象となります。

届出の場合は、美容院、クリーニング店、時間貸駐車場が必要になり、登録は旅行代理店、ペットショップで必要です。

法人化に適する4つのタイミング

法人化を検討している場合、どのタイミングで行うのがベストでしょうか。

以下では法人化に適した2つのタイミングを解説します。

【1】継続的な利益が多額になってきたタイミング

個人事業主の場合の最高税率は50%を超えますが、法人の最高税率は35%です。

法人を設立すると、個人事業主に戻るのは、かなり大変です。

よって、単年度ではなく、複数年にわたり利益がでる見込みが立った時、法人設立を検討すべきです。

 

【2】事業拡大するタイミング

従業員が増えて事業が拡大するときも法人化のタイミングになります。

従業員や企業間取引を行っている事業で取引先を今後増やす予定の場合には、社会的信頼性の面で法人の方が有利です。

 

法人化を考えるうえでチェックしておきたい2つのこと

以下では、法人化を考えている場合にチェックしておくべき点を2つ解説します。

まずは法人形態による違いをおさえる

事業にあう法人形態にする必要があります。

そのため、法人形態の違いを確認しておきましょう。
たとえば株式会社と合同会社では、いくつかの違いがあります。

具体的に次の見出しで解説します。

株式会社と合同会社のおもな違い

株式会社と合同会社では、まず設立完了までにかかる期間が違います。

株式会社の場合、手続き開始から設立完了までの期間は約1週間です。

それに対して合同会社の場合は、約1~3日となっています。

また株式会社の場合は意思決定が遅いですが、合同会社は意思決定が早いです。

ただし、知名度は株式会社の方が高くなっています。

その他、利益の配当割合の決定や決算公告の義務、役員の任期などがそれぞれ異なります。

法人化にかかる費用はどれくらい?

株式会社の場合は資本金1円から設立可能です。

ただし設立にかかる費用は株式会社の場合25万程度必要となり、合同会社の場合は6万円程度と低くなっています。

登記申請には株式会社の場合、公証人の手数料として5万円、印紙代が4万円、謄本代として1冊1,000円程度必要です。

合同会社の場合は、4万円の収入印紙代が必要になります。

法人化して代表者の銀行債務負担がなくなることも

個人事業主の場合、銀行融資を受ける場合には、代表者が債務となります。

法人が融資を受ける場合には、法人が債務者となり、代表者が連帯保証人なる場合とそうでない場合、無保証の場合があります。

よって、法人化して、無保証制度の融資を利用できれば、もし会社が倒産し、無保証の借入のみが残った場合には、代表者は、債務負担が生じません。

 

まとめ

法人化と個人では、税金の構造自体が異なりますが、最高税率や節税バリエーション、社会的信頼の面で法人の方が有利には働くことがあります。

何を目的として法人化を進めるをまずは明確にすることが大切です。

そして、税金メリット目的で法人化する場合には、必ずシュミレーションを行ってからメリットを明確にして進められてください。

というものこれまで、法人化したけど、1年たたずに個人事業主に戻したケースも見てきましたが、相当な手間がかかることなります。

 

佐藤修一公認会計士事務所では、法人化シュミレーションを始め、「中小企業向け税理士サイト」としてキャッシュフローをベースとした経営内容の見える化、経営改善を行っています。

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