「償却資産税」と「固定資産税」の違いとは?わかりやすく解説!
税務・節税


こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。
「償却資産税って、固定資産税とどう違うの?」
この疑問は、毎年1月に市区町村から届く「償却資産申告書」を見て初めて気づく方も多いかもしれません。
固定資産税と償却資産税は、どちらも「資産にかかる税金」ですが、対象となる資産や申告方法に違いがあります。
この記事では、その違いをわかりやすく解説します。
固定資産税とは?
固定資産税とは、土地や建物などの「固定資産」を所有している人に対して、市区町村が毎年課す地方税です。
毎年1月1日時点で土地や家屋などを所有している人(法人・個人問わず)が納税義務者となります。
対象となる資産
固定資産税の対象となるのは、以下のような資産です。
- 土地(宅地、田畑、山林など)
- 家屋(住宅、事務所、工場など)
- 償却資産(事業用の備品や機械設備など)
このうち、「償却資産」については、別途申告が必要なため、「償却資産税」として区別して扱われることがあります。
つまり、償却資産税とは固定資産税のうち、事業者が保有している事業用の資産にかかる税金のことを言います。
この先は、固定資産税のうち「土地・家屋」を中心に説明していきます。
課税のしくみ
市区町村は、毎年1月1日時点の登記情報などをもとに、その年の固定資産税を計算します。
・評価額の算定
資産の評価額は、総務省が定めた「固定資産評価基準」に基づき、
市町村が3年ごとに見直します(これを「評価替え」といいます)。
・税率
原則として1.4%(標準税率)。ただし、都市計画税などが加わる場合もあります。
・納税通知
毎年4~6月頃に、市区町村から納税通知書が郵送されてきます。
通常は年4回の分割払いとなっています。
申告の必要があるかどうか
土地や建物については、通常、申告の必要はありません。
登記簿などを通じて市区町村が所有者を把握しているため、固定資産税の対象となる場合は、自動的に納税通知書が送られてきます。
ただし、以下のような場合には注意が必要です:
未登記の家屋を所有している場合 → 所有者が自ら市区町村に届け出が必要です。
相続で取得した土地や建物の名義変更が遅れている場合 → 前の名義人に通知が届いてしまうことがあります。
納税者
毎年1月1日時点での所有者が、その年の固定資産税を支払う義務を負います。
たとえば、1月2日に不動産を売却しても、その年の固定資産税は1月1日時点の持ち主(=売主)が全額納めることになります。
このため、不動産売買の際には、固定資産税の「日割り精算」を行うのが一般的です。
償却資産税とは?
ここからは、固定資産税のうち「償却資産税」について説明をしていきます。
償却資産税は、固定資産税の一部であり、土地や建物以外の「事業用資産」にかかる税金です。
法人・個人を問わず、事業を行っている人が対象で、毎年1月1日時点で保有している
備品や機械などが対象となります。
対象となる資産
償却資産税の対象になるのは、事業に使っている「有形固定資産」で、減価償却の対象となるものです。
たとえば次のようなものが該当します。
- 事務用設備類(机、椅子、コピー機、パソコンなど)
- 店舗設備(業務用エアコン、照明、看板、什器、レジなど)
- 工場・厨房機器(製造機械、冷蔵庫、オーブン、フライヤーなど)
- 美容・医療機器(理美容椅子、治療用ベッド、歯科ユニットなど)
これらのうち、取得金額が10万円以上の資産が主な対象となります。
対象となる資産について、詳細はこちらの記事をご覧ください。(記事準備中)
課税のしくみ
市区町村は、1月1日時点で所有されている償却資産の申告内容をもとに評価額を算出し、それに税率をかけて税額を計算します。
・評価額
取得価額を基に、耐用年数に応じた償却率で減価償却して算出(ただし最低でも取得価額の5%は残る)
・税率
原則として 1.4%(固定資産税と同じ)
・非課税限度
1市区町村あたり課税標準額の合計が 150万円未満 の場合は非課税(ただし申告自体は必要なケースあり)
・納税通知
償却資産税は申告をもとに市区町村が税額を計算し、毎年4~6月頃に「納税通知書」が郵送されます。
納付方法や回数は自治体によって異なりますが、一般的に年1回一括または年4回の分割納付(口座振替・納付書払いなど)になります。
申告の必要があるかどうか
償却資産税は、固定資産税(土地・建物)と違って、登記などで所有が把握できないため、毎年の申告が必要です。
申告対象日: 毎年1月1日時点での所有資産
提出期限: 毎年1月31日(原則)
提出先: 資産の所在する市区町村の資産税課など
提出方法: 紙の申告書または「eLTAX(エルタックス)」による電子申告
初回申告後に変更がなければ「翌年以降の申告は不要」となる自治体もありますが、基本は毎年見直し・確認が必要です。
納税者
1月1日時点で償却資産を所有している法人・個人事業主が納税義務者です。つまり、その時点で設備や備品などの償却資産を保有している人・会社が、その年の償却資産税を支払います。
不動産と違って「名義変更」などがないため、設備の売却や廃棄、入れ替えをした場合も、1月1日時点の所有状況が基準となります。
そのため、年末に設備の入れ替えや廃棄予定がある場合は、年内の処分完了を意識することが、税額の抑制にもつながります。
償却資産税の注意点
①申告漏れに注意
不動産のように登記情報で把握されるわけではないため、申告を忘れると未申告扱いになるリスクがあります。悪質と見なされれば追徴課税の対象になることもあるので注意しましょう。
②対象かどうか判断に迷うケースもある
たとえば、建物に取り付けたエアコンや看板などは「建物附属設備」か「償却資産」かで取扱いが分かれます。市区町村や税理士に確認するのがおすすめです。
③非課税でも申告は必要なことがある
課税標準額の合計が150万円未満で非課税になる場合でも、「申告自体は必要」とされている市町村が多いです。
固定資産税と償却資産税の違いまとめ
これまで書いたように、固定資産税と償却資産税はどちら資産にかかる税金ですが、課税対象や申告・納税の方法が異なります。
項目 | 固定資産税 | 償却資産税 |
---|---|---|
対象となる資産 | 土地・建物・償却資産 | 土地・建物以外の事業用資産(機械設備、備品、パソコン等) |
主な資産例 | 土地、建物 | 機械、備品、工具など |
申告の必要 | 通常なし | 毎年1月末までに必要 |
納税者 | 土地・建物の所有者 | 償却資産を所有する法人・個人事業主 |
評価額の計算 | 固定資産評価基準に基づく時価評価 | 取得価額から耐用年数に応じ減価償却した金額(最低5%残す) |
税率 | 標準1.4% | 標準1.4% |
課税主体 | 市区町村 | 市区町村 |
まとめ
固定資産税と償却資産税は、いずれも市区町村が課税する「資産に対する税金」ですが、その対象や手続きには大きな違いがあります。
固定資産税は、主に土地や建物といった不動産に対してかかる税金で、特に申告の必要はなく、市区町村から自動的に納税通知書が届きます。
一方で、償却資産税は、事業用に使っている備品や設備、機械などが対象で、毎年1月に所有者自身が市区町村へ申告しなければなりません。
この申告を怠ると、未申告とみなされる可能性があり、後に税務調査や追徴課税につながるリスクもあります。
事業をしている方にとって、両方の税金の違いを正しく理解しておくことは非常に重要です。特に、開業して資産が増えてきたタイミングでは、毎年の申告スケジュールや対象資産の管理に注意を払い、余計なトラブルを避けるようにしましょう。

佐藤 修一
税理士法人Accompany 代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。