業務の効率化を目指し、クラウド会計の導入を検討している経営者は多いでしょう。

しかし、クラウド会計にはメリットだけでなくデメリットもあります。

この記事では、マネーフォワード会計、freee(フリー)の2つのクラウド会計について弱点も把握したうえで導入したい経営者に向け、クラウド会計のデメリットとその対策を解説します。

また、クラウド会計のメリットや向き・不向き、導入時の注意点なども解説するため、自社への導入検討に役立ててください。

目次

クラウド会計にデメリットはあるのか?

クラウド会計には多くのメリットがあります。

しかし、導入前にはデメリットや向き・不向きもチェックしておきましょう。

クラウドサービスとしてのデメリットがある

クラウド会計は便利であることは確かですが、クラウド上で使うことによるデメリットもあります。

たとえば、従業員や税理士がツールを使いこなせなければ、十分活用できません。

また、インターネット回線が切れてしまえば、一切業務ができなくなります。

確定申告期限近くになると、アクティブユーザーの増加からか、動作が重くなったり、操作ができなくなることがあります。

デメリットを知り、対策を講じておきましょう。

クラウドサービスとしてのメリットもある

クラウド会計は、パッケージ版の会計ソフトと違い、常に最新版のソフトを使えます。

ブラウザ経由で利用するため、パソコンごとのインストールが不要で、OSやデバイスも選びません。

メールアドレス、IDとパスワードを設定するだけで簡単に使い始められます。

また、無料版やトライアル期間があるため、使い勝手を実際に試しながら検討できます。

クラウド会計には向き不向きがある

クラウド会計の導入は、会計業務の属人化を防ぎたい企業や、インターネットを活用して積極的にデータ連携をしたい企業に向いています。

一方、クラウド会計導入に組織としてコミットできていない場合、ペーパーレス化が進んでいない場合や、従業員のITスキルが低く現状の会計システムに慣れている場合は、業務効率が下がるなどの問題が発生する場合があります。

クラウド会計でできる経理業務とは?

クラウド会計でできる経理業務は、帳簿の記載や集計など、手作業でできる業務全般です。

ただし、仕訳や集計のルールを登録でき、入力フォーマットも用意されているため、業務を効率化できます。

帳簿作成と売上の把握

銀行口座やクレジットカードのデータを取得して自動で仕訳が可能です。

また、外部に公表する決算書や内部管理用の会計データなどの作成を一部自動化できます。

給与会計やPOSレジなど、他のツールと連携させることも可能です。

従来の手入力や表計算ソフトによる計算などと異なり、自動化によって業務効率化が図れ、ヒューマンエラーも防ぎやすくなります。

また、経理業務の経験が少なくても、比較的簡単に作業できます。

確定申告書の作成

確定申告書に必要な企業情報や収支を入力していくだけで、確定申告書がほぼ完成します。

各種の控除や損失繰越、予定納税など、ほとんどの項目の入力と自動計算が可能です。

実際に確定申告書の作成にかかった時間をはかってみたところ10分程度で作成完了しました。

確定申告書の作成を専門家に依頼している場合は、自ら作成することで、コスト削減を図れるかもしれません。

クラウド会計のデメリットと対策

ここでは、クラウドサービス特有のデメリットと会計ソフトとしてのデメリットについて、対策とともに解説します。

毎月コストがかかる

クラウド会計は、買い切り型のパッケージ版ソフトウェアと異なり、月単位または年単位で料金を支払います。

初期費用は少ない反面、期間が長くなるほどパッケージ版よりもコストがかかります。

対策

費用対効果を高めるには、クラウド会計を使いこなすことが大切です。

無料のお試し期間を活用し、自社で十分に活用できるか検討しましょう。

パソコン操作に慣れる必要がある

紙媒体や従来の会計ソフトに慣れている場合、最初は使いづらさを感じるかもしれません。

また、常に最新版に自動更新されるため、画面や操作の仕様が突然変更されることもあります。

対策

使い方が特別難しいものではないため、慣れれば活用できるようになります。

手作業に比べれば効率も上がるため、できるだけ毎日使用して早く慣れるようにしましょう。

インターネット環境とセキュリティ対策が必要である

クラウド会計はインターネット通信によってサービスが提供されます。

暗号化通信であるもの、情報漏えいのリスクはゼロではありません。

また、ID・パスワードが、のぞき見などによって流出してしまい、第三者にログインされるリスクもあります。

対策

インターネット回線の通信環境だけでなく、セキュリティソフトの導入や利用方法についてのガイドライン作成などによってセキュアな環境を整えましょう。

セキュリティ対策が必要である

クラウド会計は便利な反面、データの改ざん・消失のリスクが高まる恐れがあります。

インターネットがつながる環境であれば、どこからもアクセスでき、情報を編集・コピー、削除される可能性があるからです。

対策

社内の不正な通信を監視する体制を整えることが重要です。

また、特定のドメインからしかアクセスできないようにするなどのセキュリティ対策も、必要に応じて行いましょう。

導入時の設定が簡単ではない

クラウド会計の自動入力や自動仕訳は便利ですが、導入時に設定を行わなければなりません。

銀行口座やPOSレジなどと連携する必要があります。

また、自社に適した自動仕訳のルールを設定するには、会計についての知識と経験が求められます。

対策

初期設定に不安がある場合は、導入サポートが充実しているサービスを選びましょう。

また、クラウド会計に対応できる税理士に依頼してアドバイスをもらう方法もあります。

対応できない会計処理や不得意ながある

学校法人、社会福祉法人、宗教法人など対応できない業種があります。

また、現金取引が多い場合やクレジット会計をしていない場合なども、クラウド会計の導入に向きません。

対策

自社の業種が特殊な場合は、お試し期間を活用しましょう。

テスト運用することで実際自社の取引の仕訳を入力し、導入メリットがあるか確認できます。

対応してくれる税理士が少ない

クラウド会計は近年急速に普及してきたため、対応できる税理士が少ないのが現状です。

法人の場合は特に、税理士なしで会計処理を完了させることは難しいため、ここがボトルネックとなってシステムを移行できない企業もあります。

対策

依頼先の税理士にクラウド会計に対応できるか確認してみましょう。

クラウド会計の導入メリットが大きいなら、この機会に税理士を変更するのも1つの方法です。

クラウド会計が向かないケース

企業の業種や業務体制によっては、クラウド会計が向かないケースもあります。

クラウド会計に対応していない業種

クラウド会計で出力できる決算書類は、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)になります。

よって、学校法人、社会福祉法人、宗教法人など決算書類自体が貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)とは異なる場合には対応していません。

インターネットに慣れていない

インターネット環境が整っていない企業やセキュリティレベルが低い企業は、クラウド会計の導入に向いていません。

また、クラウドサービスやネットバンクの利用に慣れていないと、業務に支障が出る場合もあります。

会計担当者のスキルだけで対応できないことも多いため、情報システム担当者にあたる人材も必要です。

現状の会計システムに慣れている

現状のインストール型の会計ソフトに慣れている場合は、クラウド会計の導入によって、従業員の負担が一時的に増す場合があります。

画面や操作が変わることで重大なミスが起こるリスクにも注意が必要です。

導入当初は、月次決算の完成が遅くなることも想定されます。

クラウド会計と既存システムの連携ができない場合や、税理士にすべてを任せている場合の導入も慎重になるべきです。

予想外にコストがかかる場合や、業務に大きな支障が出る可能性もあります。

クラウド会計が向いているケース

ある程度インターネットやIT機器を使える企業や、導入に多少負担がかかっても効率的な会計システムに移行したい企業は、クラウド会計導入が向いています。

簿記の知識がない

経験や知識が豊富な経理担当者だけでなく、誰でも業務をできるようにしたい場合に、クラウド会計の導入が向いています。

クラウド会計では多くの入力や集計を自動化できるため、会計知識が乏しい従業員でも担当できる業務を増やせるでしょう。

インターネットを活用したい

ネットバンキング利用やクレジットカード決済など、インターネットを活用した取引が多い企業にクラウド会計は向いています。

データの自動入力、仕訳によって会計業務が効率化できます。

また、会計状況の更新も早いため、不正行為やミスも早期に発見可能です。

会計業務をテレワーク対応にしたい場合も、クラウド会計は向いています。

税理士と簡単にデータ共有したい

帳票・書類・帳簿を紙ベースで税理士に渡さず、電子データでやり取りして共有したい場合もクラウド会計が適しています。

同じクラウド会計に対応している税理士なら、連携は非常にスムーズです。

入力や転記などの税理士の手間が減るため、通常、手数料も安くなります。

クラウド会計のメリット

クラウド会計には、クラウドサービス特有のメリットと、会計ソフトとしてのメリットが数多くあります。

経理知識がなくても使える

複式簿記の知識などの専門知識に乏しくても記帳が簡単にできるため、多くの人が経理担当者になれます。

また、決算書や確定申告書の作成も、必要事項を記帳していくだけで合計や税金控除などが自動で計算され、手間がかかりません。

データの連携・共有が簡単にできる

インターネット環境があれば、いつでもどこでも記帳・確認ができます。

在宅勤務者を含む社内のデータ連携・共有なども簡単です。

また、クラウド会計の多くは、スマートフォンやタブレットなどの端末を選ばないマルチデバイス対応であることも特徴です。

会計データの紛失が防止できる

紙媒体で会計データを管理すると、FAXやプリンタに領収書を置き忘れることや、必要な文書が見つからないことなどのトラブルが起こります。

クラウド会計ではクラウド上にデータを一元管理できるため、紛失を防止できるうえ、管理が容易です。

法改正への対応が不要になる

法改正による税率や控除額の変更などは、クラウド会計の提携業者が対応します。

常に最新版のクラウドサービスを利用できるため、自社で法改正に対応する必要はありません。

常に最新版を利用できる

自社でソフトの再購入やインストールを行うことなく、常に最新版を利用できます。

クラウド会計はサービス提供業者のサーバー上で稼働するため、定期更新や不具合対応などは自動で行われます。

更新時は表示画面などが変わって操作に迷う可能性もありますが、すぐに慣れるでしょう。

おすすめのクラウド会計「freee(フリー)」「マネーフォワード会計」とは?

クラウド会計としておすすめの「freee」「マネーフォワード会計」を紹介します。

両者の違いという観点からご説明します。

freee

freeeは主に個人事業者から中規模事業者を対象としている、シェアNo.1の実績を持つクラウド会計です。

決算書作成と記帳の効率化を実現したい企業に向くのは2,178円/月(税込)のミニマムプランです。

経理全体の効率化や経営データの可視化を実現したい場合は、4,378円/月(税込)のベーシックプランがあります。

それぞれユーザー3名までは無料で利用可能です。

freeeは使いやすさで定評があるため、会計業務に詳しい人材が乏しい企業に向いています。

クレジットカードなど連携対応数、API連携面では、マネーフォワードに劣ります。

ただし、仕訳を完全自動化できる点やAPIを公開しているからか機能改善、機能付加がかなり進んでいます。

会計ソフトとしての基本となる入力機能、分析機能はfreeeに軍配が上がると思います。

 

マネーフォワード クラウド会計(MF会計)

マネーフォワード クラウド会計は、会計知識を持つ人が使いやすい操作仕様と機能が特徴のクラウド会計です。

小規模の法人向けのスモールビジネスプランが3,278円/月(税込)、中規模向け法人向けのビジネスプランが5,478円/月(税込)です。

ビジネスプランは1カ月無料で試せます。

マネーフォワード クラウド会計は簿記の知識を活かしてクラウド会計を利用できるため、会計業務に詳しい人が多く在籍する企業におすすめです。

また、従来の簿記方式からクラウド会計にスムーズに移行したい場合にも向いています。

一方、簿記の知識がない人にとっては使いにくい面があります。

連携機能の面では連携対応数が多いマネーフォワード会計に軍配が上がります。

クラウド会計導入時に気をつけるべきポイント

ここでは、クラウド会計を導入する前にしっかりと検討し、明確にしておきたいポイントを解説します。

機能の確認を十分に行う

課題解決に必要な機能が揃っているかチェックします。

経営レポート作成や部門別会計などの付加機能や、セキュリティ機能も確認しておきます。

入力支援や入力エラー検出など、基本機能の細かな機能も重要です。

情報共有できるかを確認する

社員同士で情報共有がしやすいかチェックしておきます。

給与計算との連携やデータの出力方法などが自社の業務に合っているかなどを確認しましょう。

提携会社や税理士との共有が可能かどうかも重要です。

お試し期間を活用する

導入前に無料のお試し期間を使ってテスト運用をしてみましょう。

今まですべて税理士任せにしていた場合、クラウド会計によって自社業務に移行すると、予想外に負担が増える場合もあります。

まとめ

業務効率化やコスト削減を目的に、クラウド会計を導入する企業が増えています。

セキュリティ対策をしっかり行うことや、対応できない会計処理があるなどの注意点も踏まえて、自社にあったサービスを導入しましょう。

 

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