特別償却と税額控除どちらが有利?

税務・節税

2017/10/18

2014/03/27

太陽光発電設備を設置した場合、高額の機械や設備、ソフトウェアを購入・投資した際に、優遇税制を受けることができる場合があります。

優遇税制は、「特別償却」と「税額控除」の選択となっています。
その場合、どちらを選ぶか‥どちらが有利なのか悩まれることがあると思います。

一般的に税額控除の方が有利になるケースが多いです。
どちらが有利か、資金繰りをどれだけ楽にするかで判断します。
理由を詳しくご説明します。

特別償却とは経費の一部の減価償却費を前倒して計算する方法です。 
税額控除とは経費の金額には影響せず、直接税金を少なくする方法です。⇒実質的な値引き
いまいち分かりにくいと思います。

実際の説明に入る前に前提として 税金の計算方法は以下のようになります。
売上-経費=所得
所得×税率=仮の税金
仮の税金-
税額控除=実際に支払う税金
「特別償却」と「税額控除」では、税金を計算する過程で控除できるタイミングが異なるのです。

ここまでが内容をご説明するための前提です。
以下でどちらが有利か事例で説明します。

【前提】
毎年減価償却前の所得が500万円
取得設備120万円 耐用年数 3年 定額法 特別償却率50% 税額控除率7%
税率23%

表の計算はご興味がある方のみご覧ください。

特別償却を選択した場合
単位:万円
1年目 2年目 3年目 3年合計  説明
①減価償却費控除前所得 500 500 500 1500
②減価償却費  100 20 120 1年目=120÷3年+120×50%特別償却率
③所得 400 480 500 1380 ①-②
④仮の税金 92 110.4 115 317.4 ③×23%
⑤税額控除 0 0 0 0
⑥実際に支払う税金 92 110.4 115 317.4 ④-⑤

 

税額控除を選択した場合
単位:万円
1年目 2年目 3年目 3年合計 説明
①減価償却費控除前所得 500 500 500 1500
②減価償却費  40 40 40 120 120÷3年
③所得 460 460 460 1380 ①-②
④仮の税金 105.8 105.8 105.8 317.4 ③×23%
⑤税額控除  8.4 0  0 8.4 1年目=120万円×7%税額控除率
⑥実際に支払う税金 97.4 105.8 105.8 309 ④-⑤

 

1年目の税金が「特別償却」を選択した方が、実際に支払う税金は、5.4万円(97.4万円92万円)低くなっています。
これは特別償却を選択した場合、減価償却費を前倒しで計算しているからです。
⇒目先の資金繰りを考えると「特別償却」の方が有利になります。

しかし、どちらの場合も、3年合計の減価償却費の金額は120万円と変わりません。

一方、3年目までの合計の実際に支払う税金は314.7万円309万円=8.4万円税額控除を選択した場合の方が低くなっています。
⇒「税額控除」を選択した方が長期的な資金繰りで考えると有利となります。

資金繰りは予測の利益金額、取得資金の金額、借入金が自己資金か、使う税制の特別償却率、税額控除率で変わってきます。
実際には、細かいシュミレーションが必要です。
以上のようにただ目先の税額だけ考え、特別償却を選択すると損をしますのでご注意下さい。

関連記事:特別償却の仕訳についてはこちら

佐藤 修一

佐藤修一公認会計士事務所代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。