飲食店、美容室などの現金商売では「今日の売上」はすぐ見えます。
でも、月末が近づくほど不安が増える店は少なくありません。
- 売上は悪くないのに、支払いが怖い
- 忙しいのに、お金が残らない
- 月末にまとめて対策して、いつもバタバタする
この状態を抜ける一番の近道は、日次で見る数字を変えることです。
結論から言うと、日次で見るべきは「売上」ではありません。
売上だけを見ていると、「儲かっている錯覚」が起きます。
見るべきは、次の3つです。
- ① 粗利額(率ではなく金額)
- ② 口座残高(=実際に動かせる現金)
- ③ 入金待ち(クレカ・PayPay・デリバリー等の“未収入金”)
この3つを毎日5分で追うだけで、月末の怖さはかなり減ります。
目次
1. なぜ「売上」を追っても月末は楽にならないのか
売上はあくまで“結果”です。
売上が上がっても、次の2つがズレると資金繰りは悪化します。
- 入金のタイミング(現金 vs キャッシュレス)
- 支払いのタイミング(仕入・人件費・家賃・税金・借入返済)
特に最近は、クレカ・PayPayなどのキャッシュレス比率が上がり、
「売れた=その日に口座へ入金」ではなくなっています。
だからこそ、「売上」ではなく
“粗利”と“現金”と“入金待ち”をセットで見ます。
2. 日次で見るべき数字①:粗利額(率ではなく金額)
飲食店は粗利が原資です。
家賃・人件費・水道光熱などの固定費も、税金も、借入返済も、粗利から出ます。
粗利額>固定費(人件費、家賃、水光熱、広告、借入返済)
になっていなければ、キャッシュがどんどん減少していきます。
日次で見るのは、粗利“率”よりも 粗利“額”です。
粗利額の最短の出し方(スピード優先でOK)
日次は「100%の正確性」よりも、方向性がズレないことが大切です。
まずは次のどちらかでOKです。
方法A(最速):標準の原価率で概算する
- 粗利額 ≒ 当日売上 ×(1 − 原価率)
例:原価率30%なら、粗利は売上の70%として概算します。
原価率について
用いる原価率は、直近の売上メニュー構成、メニュー価格、食材価格を反映したものが良いと思います。
よって、3か月の実績の平均原価率を用いたり、売れるメニューに季節性が強い場合には前年同月比の平均原価率を用いるのがおすすめです。
方法B(慣れてきたら):食材仕入と在庫の動きを織り込む
- 粗利額 ≒ 当日売上 −(当日使用した食材原価)
※ここは店の管理体制によって精度が変わるので、最初は方法Aで十分です。
3. 日次で見るべき数字②:口座残高(=いま動かせる現金)
飲食店ではレジ現金が増えると安心しがちですが、
資金繰りで守るべきは “口座残高”です。
- 家賃
- 給与
- 社保
- 税金
- 借入返済
は、基本的に口座から落ちます。
口座が守れないと、月末に詰みます。
「使えるお金」を見える化すると、判断が速くなる
口座残高はただの残高で、実は全部が“使える”わけではありません。
月末が怖い店は、口座残高の中に「払うべきお金」が混ざっています。
そこでおすすめは、口座残高を次の2つに分けて考えることです。
- 守るお金(固定費・税金・返済など、必ず払う)
- 使えるお金(追加仕入・販促・修繕など、判断できる)
目安として、まずは月次でいいので
- 毎月の固定費(家賃・人件費・水道光熱など)
- 毎月の借入返済
- 税金や賞与など“たまに来る大きな支払い”の積立
をざっくり把握しておくと、日次の判断がブレません。
4. 日次で見るべき数字③:入金待ち(未収入金)
クレカ・PayPay・デリバリーは「売上」ではなく「入金日」を見る
現金売上は、その日〜翌営業日には入金できます。
一方で、クレカやPayPay、デリバリーは入金までラグがあります。
資金繰りを崩すのは、ここです。
PayPayは通常「当月末締め」。だから“月末にまとめて入る”
PayPayは、通常の振込サイクルが「当月末締め」です。
入金日は金融機関によってズレるため、資金繰り表には“入金される週”にまとめて入れるのが分かりやすいです。
早期振込は「補足」でOK(資金繰りは良くなるがコスト増)
月末締めを待たずに入金する方法(早期振込)もあります。
ただし、追加コストが発生するため、基本は「必要なときだけ使う」という位置づけで十分です。
5. 「月末が怖い」をなくす:日次ダッシュボード(5分テンプレ)
日次は、細かい指標を増やすほど続きません。
毎日5分で回すために、最低限これだけに絞ります。
日次ダッシュボード(例)
- 当日売上(支払方法別:現金/クレカ/PayPay/デリバリー)
- 当日粗利額(概算でOK)
- 口座残高(今日の時点)
- 入金待ち(ざっくり:今月のキャッシュレス売上がどれくらい溜まっているか)
そして、「月末まで残り◯日で、あと粗利いくら必要か」まで出すと、打ち手が明確になります。
6. 25日時点で分かる:残り5日で“何をすべきか”が決まる
月の途中(例:25日)で、次を計算します。
- 月初〜25日までの粗利額(概算でOK)
- 今月必要な粗利額(固定費+返済+税金積立 等)
- 差分(足りない/余っている)
- 残り日数で割って、残り1日あたり必要粗利額を出す
これが出ると、
- 値引きしていいか
- 仕入れを増やしていいか
- シフトをどうするか
- 何を止めるべきか
が“数字で”決まります。
7. 日次で見えると、現場が変わる(売上ではなく粗利で動く)
現場スタッフは「売上を増やす」意識はあっても、
「粗利を増やす」意識が弱いことが多いです。
日次で粗利額を共有し、
- 今日は粗利が足りているか
- 何が粗利を削っているか(ロス・値引き・原価ブレ)
- 明日どうするか
を話せるようになると、店の空気が変わります。
8. 日次だけでは不十分。未来を見るなら「週次の資金繰り表」へ
日次は「今日まで」を守る管理です。
でも、資金ショートは「来週」「来月」に起きます。
だから、次は必ず
- 週次(13週)の資金繰り表
につなげてください。
日次でブレを小さくし、週次で事故を防ぐ。これが一番安定します。
(別記事:【テンプレ】飲食店の資金繰り表(週次13週) )
まとめ:日次で見るべきは「売上」ではない
月末が怖い飲食店が毎日見るべき数字は、次の3つです。
- 粗利額(率ではなく金額)
- 口座残高(=実際に動かせる現金)
- 入金待ち(クレカ・PayPay・デリバリー等)
この3つを5分で回すだけで、
「月末にまとめて焦る」から「月の途中で手が打てる」に変わります。
佐藤 修一
税理士法人Accompany 代表
(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。







