経営状態の把握を「試算表」、「決算書」のみで行ってはいないでしょうか?
試算表や決算書とは、会計ソフトより出力される貸借対照表と損益計算書のことです。
JALの再建に成功した稲盛さんはこのようにおっしゃっています。
「決算書(=試算表と同じこと)に表される損益の数字の動きと、実際のお金の動きが、直結しなくなり、
経営者にとって会計というものがわかりにくいものになってきた」
中小企業の場合、
試算表や決算書は、本当の経営の実態を表しておりません。
経営の実態とは、「日々の経営の人や物やお金の動きや状態」のことです。
また、
試算表や決算書からは経営のために必要な情報が分かりにくいという問題があります。
試算表や決算書が経営の実態を表さない理由は主には2つあります。
1つは、税法ルールによって試算表や決算書が作られている。
例えば、減価償却費は税法のルールで計算された金額です。
税法とは、税金を計算するために国がきめたルールです。
税金を計算するためのルールによって計算された数値は、日々の経営の人や物やお金の動きとは無関係で経営の実態を表すものではありません。
2つ目に、税金対策によるものです。
特に中小企業で多くみられるもので、本来の経営の目的である儲けを増やすこととは別の理由でお金や物が動いてしまい、
純粋な経営の実態をゆがめてしまっているためです。
例えば、本来の経営に不必要な返戻金のある保険加入、税率を最適化するための利益の分散、オーナー間取引等の純粋に「儲け」を得るためのお金の動き以外のものが含まれております。
そして、試算表には税金を計算するためだけの利益が表示されています。
つまり、試算表の利益から直接分かる事はだいたい税金がいくら発生するかということだけなのです。
⇒試算表のみに頼る経営者の関心は税金に向かざるを得ません。
⇒経営者の税理士事務所に期待するものは、税金をいかに減らすかという事になります。
⇒そして、税理士事務所もその期待に応えるために税金を減らすために提案をしようとします。
一番の問題は経営実態の把握の方法がない場合、経営者は何をもって経営が良かったのか、悪かったのかを判断できなくなります。
本当の経営実態を把握せずに経営することは危険です。
方向性を見誤ってしまう恐れがあります。
利益ではなく、資金をベースに経営を行うべきです。
これまで、お会いした経営者で一番業績が良い会社の社長はこうおっしゃっていました。
「規模が拡大してきたころから、試算表では、経営に使っていません」
JALの稲盛さんも
「ペーパー上の利益を待つのではなく、まぎれもなく存在するキャッシュにもとづいて経営の舵取りを行うべき」とおっしゃっております。