3月決算の会社で生産性向上投資促進税制等を使って機械や工場建物等に設備投資を行い、即時償却、特別償却を行う予定の会社は少なくないかと思います。

決算処理で即時償却、特別償却を行う場合の注意点について説明しております。

即時償却、特別償却を行うメリットは、投資額全額又はその大部分を購入した期に経費にでき、その分法人税等を抑えることができます。

一方、デメリットしては、即時償却、特別償却金額分利益が少なくなり、利益剰余金が少なくなるので、純資産の金額が小さくなり、自己資本比率が下がってしまうことです。

自己資本比率=純資産の金額÷総資産の金額

この即時償却、特別償却を用いるケースで金融機関の方から融資面で最近ご相談を受けることがあります。

特に工業建設の場合で即時償却を用いる場合、自己資本比率を低下させてしまうので、

即時償却、特別償却を使い、法人税は少なくなったが、金融機関からの与信が下がり融資を受けにくくなった‥とならないようにする必要があります。

このデメリットを回避する方法があります。

「特別償却準備金」を積み立てる会計処理です。

この方法によれば、即時償却、特別償却による利益剰余金の一時的な減少を回避することができ、自己資本比率の低下を防止します。

企業会計上、即時償却、特別償却を行う場合には、「特別償却準備金」として積み立て会計処理を行う必要があります。

特別償却準備金とは、純資産の勘定科目で、即時償却や特別償却を行う場合に、期間損益が適正に計算されるよう会計処理を行うための勘定科目です。

「特別償却準備金」には損金処理を行う「直接減額方式」と「剰余金の処分方式」の2つの方法があります。

会計処理上は、適切な期間ごとの利益を計算する上では、「剰余金の処分方式」が望ましいとされておりますのでで今回は、「剰余金の処分方式」のご説明を行います。

例えば、以下の条件で即時償却の対象の資産を購入したとします。

対象資産:工場
取得金額:100,000,000円
耐用年数:24年 
償却率:0.042

この場合の会計処理は次のようになります。

【購入時】
(借方)建物 100,000,000 (貸方)現金預金 100,000,000

【期末処理】
(借方)減価償却費 4,200,000 (貸方)建物 4,200,000(取得金額100,000,000×償却率0.042)

   繰越利益剰余金 95,800,000 特別償却準備金 95,800,000(取得価額100,000,000-減価償却費4,200,000)

この場合には、法人税の申告上、別表四で減算処理が必要となりますので、ご注意ください。

【翌期以降】
‥取得した期以降、耐用年数が10年以上の場合は7年、耐用年数が5年以上10年未満の場合は、5年で「特別償却準備金」を取り崩していきます。
今回のケースですと工場の耐用年数が24年>10年となり、7年に渡り取り崩しを行います。

(借方)特別償却準備金 13,685,714 (貸方)繰越利益剰余金 13,685,714(前期計上特別償却準備金95,800,000÷7年)

この金額を7年間に渡り、決算処理で取り崩しを行い、別表四で加算を行います。

生産性向上投資促進税制を利用すれば、法人税を抑えることはできます。

生産性向上投資促進税制を用いる投資対象資産は多額になることが多く、

財務に対する影響が大きくなるケースがあります。

今後の資金調達を今慮して金融機関対策を考え、決算を組まれてみてください。