税理士事務所や会計事務所の仕事に興味がある方、これから税理士事務所へ就職、転職を検討されている方向けに税理士事務所と会計事務所の仕事の内容について説明しています。

税理士事務所の仕事は、税金の申告・相談を中心ですが、税金に多くの専門分野があり、税金の申告に付随する数多くの業務があります。

税理士事務所と言えば一昔前は、どの事務所も専門分野に大きな違いはなかったのですが、

これまでは税金の知識は、分かりにくく、簡単に入手することができなかったのが、インターネットの普及によりだれでも税金に関する情報を簡単に入手できるようになり、また、AI、クラウドの発達により税理士事務所は他の事務所との差別化を迫られています。

よって、最近は、事務所ごとにを入れている専門分野が大きく異なるようになってきました。

 

よって、税理士事務所ごとに力を入れている分野が全く異なるため、どの税理士事務所で働くかによって得られる専門知識が全く異なってきます。

税理士事務所・会計事務所の業務は、専門知識がベースとなる仕事です。

どんな専門性を身につけたいを明確にすることが、自身のキャリアに直結します。

よって、まずは、税理士事務所の仕事内容を理解し、自身のキャリアをにあった事務所探しの参考にしていただければと思います。

 

税理士事務所の仕事とは

一般的な税理士事務所、会計事務所の業務内容は以下のようなものになります。

・記帳代行‥中小企業の経理を行うこと
・法人の決算申告‥会社の1年間の収入、経費をまとめ決算、税務申告
・個人の確定申告‥個人の1年間の収入、経費をまとめ決算、税金申告
・相続税・贈与税の申告・事業承継サポート‥亡くなった方や個人間の資産の授受に対する税金の申告、後継者への移行のサポート
・会計コンサルティング‥数字を用いて中小企業の経営を良くする仕事
・経営コンサルティング‥長期的に儲かるための企業作りのサポート
・税金に関する相談‥税金予測・節税のご提案、税務調査立会
・融資手続サポート‥中小企業の銀行借入のサポート
・年末調整‥従業員の税金計算
・償却資産税の申告‥事業で使っている資産に関する税金の申告

このような会計事務所の仕事は、なかなかイメージしにくいかと思います。

 

これら一般的な税理士事務所の業務内容について具体的な説明をしていきたいと思います。

 

 

記帳代行

税理士事務所の仕事の中で一番時間を費やしている仕事と言えば、記帳代行です。

まずは、記帳代行とは、お客様である中小企業の経営内容を見える化するために、日々のお金の動きである領収書や通帳会計ソフトに入力する業務になります。

お客様から領収書や通帳のコピーをお預かりし、会計ソフトへ入力していきます。

下記のような画面から「日付」、「勘定科目」、「摘要」、「金額」を入力していく作業になります。

 

 

 

税理士事務所に入社したら一番最初に行う業務で多くの事務所一が番時間を費やす作業になります。

仕訳と呼ばれる「簿記」のルールに従って上記のような画面で会計ソフトに入力する業務で、日付、勘定科目、取引内容、金額を入力していきます。

正確性、スピードが問われる業務で、簿記の知識や税金の知識が必要となります。

この記帳代行は、税理士事務所によって、入力方法が大きく異なります。

勘定科目の選び方、取引内容の入力方法などが事務所個々の方針によって大きく異なります。

領収書や通帳などのお金の動く数が多いほど、入力作業の作業量が増えていきます。

ただ、この記帳業務は、クラウド会計によって、入力に関する作業自体がどんどん簡略化されています。

クラウド会計とは、通帳や経費に関する情報などを自動で取り込むことができる会計ソフトです。

通帳や経費などが以下の画面のように自動で取り込まれるため、入力作業の7割~9割の入力作業が必要なくなります。

その理由は、クラウド会計はAIが働いているため、一度、登録した取引は、以下のように次回より推測することができるからです。

このクラウド会計により、税理士事務所の業務で一番時間を費やしていた記帳代行業務が大幅に簡略化されていっています。

弊所では、このクラウド会計を導入していますが、入力する業種によって入力時間が50分の1になることも普通にあります。

そして、クラウド会計の自動推測により、簿記の知識が無い方でもこの記帳代行業務を行うことができるようになってきています。

これが、オックスフォード大学の研究で税理士事務所の仕事はAIによって無くなると言われている理由です。

そして、これがAIによって、税理士事務所の仕事が無くなるとされている大きな理由です。

このクラウド会計は、税理士事務所によって、力を入れている税理士事務所もあれば、全く力を入れていない事務所もあり、事務所の方針によって、それぞれです。

弊所ではこのクラウド会計に非常に力を入れております。

理由は、作業的な業務をより少なくして、後述するコンサルティングなどの別分野に力を入れるためです。

 

法人の決算申告業務

税理士事務所の業務の中で、記帳代行の次に大きな業務としては「法人の決算申告業務」があります。

法人=会社のことで、1年に1回法人は、年間の売上や経費などを集計した「決算書」の作成義務があります。

決算書とは会社の成績表のことで以下の書類のことを言います。
・貸借対照表‥会社の財務=健康状態
・損益計算書‥会社の業績=いくら儲かったのか
・株主資本等変動計算書‥株主の出資や利益の増減
・勘定科目内訳書‥貸借対照表と損益計算書の内訳

 

この決算書に基づいて、税務署に提出するために税金を計算したものを「税務申告書」と言います。

決算書と税務申告書の2つを作成する業務を法人の決算申告業務(「決算書+税務申告書」)と言います。

法人の規模などによって異なりますが、決算書と税務申告書あわせて40ページ~100ページを超えるため、作業的には大変な作業になります。

但し、これら決算書や税務申告書は、手書きで作成するわけではなく、会計ソフトや専用の税金計算ソフトに入力すれば、作成できます。

これらが法人の決算申告業務となります。

この決算業務で法人が支払う税金が確定し、会社の1年間の成績表が明らかになるため、税理士事務所・会計事務所の重要な業務の一つです。

決算申告を行う月は会社を設立するときに自由に選ぶことができます。

日本の企業の決算月ごとの企業数の数と割合は以下のようになっています。

 

決算月が3月にしている会社が全体の21%とダントツで多いのが実情です。

決算月の2か月後以内に税務署へ法人の決算書と申告書を提出しなければいけませんので、税理士事務所は、4月の後半から5月末まで繁忙期になる事務所が多いと思います。

そして、この3月決算が多い事務所になると5月のGWは、休みをとれず、休日出勤になる事務所も中にはあるようです。

 

個人の確定申告

給与をもらっている方は、後述する所属する会社が行う年末調整で税金計算を行います。

一方、個人で事業を行っている方、不動産投資や太陽光投資を行っている方は、自分で1年間の収入や経費などを税務署に報告することで税金が決定されます。

この給与以外の収入がある方で税金の確定するために1年間の収入や経費に関して税務署に報告する手続きのことを「確定申告」と言います。

確定申告は毎年2月16日~3月15日の1か月間で行われます。

この時期に1年分の処理を集中して行うため、税理士事務所・会計事務所では繁忙期になる事務所が多いようです。
ただし、個人事業主にあまり力を入れていない税理士事務所もあるので事務所によってまちまちです。

相続税申告・事業承継サポート

相続税とは、亡くなった方が持つ資産を配偶者、子供、兄弟等を引き継ぐ際にかかる税金の事です。

相続税は、誰でも対象になるわけではなく、一定の金額以上の資産を持つ方がなくなった時にかかる税金です。

相続税は、平成27年に改正があり、相続税の対象になる方の範囲が広がり、税率がアップしました。

この税制改正により、相続税の申告の対象者が増えたこと、そして、いわゆるベビーブーム、団塊の世代の方々が80歳を迎える2030年を控え、この相続税の申告が必要となる「大相続時代」が来ると言われていることから相続税に特化している税理士事務所が急成長しています。

また、これに伴い、事業承継が今後増加すると言われています。

事業承継とは、会社が代替わりにする際に、後継者に経営を引き継ぐことを言います。

会社を継続するための資産などをスムーズに後継者に引き継げるよう、税理士事務所が税金等の対策を行うこともあわせてサポートするのがこの相続税・事業承継特化型の税理士事務所の特徴です。

なぜ、この分野の税理士事務所が成長しているのかというと、上記のように相続税、事業承継のニーズの高まりがあること、そして、相続税、事業承継の分野は、知識・ノウハウの非常に専門性が高いことが挙げられます。

様々なパターンの相続、事業承継があり、幅広く、難解な税務知識が必要とされると同時に、明確な回答がある分野ではなく、税理士事務所としての問題解析力、ノウハウ・知識・提案力の差がでる分野です。

ちなみに弊所では、この分野には力を入れていません。

 

会計コンサルティング

この分野は力を入れている税理士事務所とそうでない事務所で分かれるところになります。

以上のように「法人の決算申告」「個人の確定申告」は、義務なので必ず行う必要があります。

経理は、「法人の決算申告」「個人の確定申告」を行うための義務として行っている方が多いのが現状です。

しかし、経理は本来は、儲けるために使うものです。

そして、「会計コンサルティング」は、経理を儲けるために使うための業務です。

中小企業の経営者は、以下のような経営していると、以下のような悩みが生じることがあります。

  • 「売上が伸びているのに考えていたほど利益が伸びていない」
  • 「儲かっているはずなのに預金が増えていない」

儲かっているかどうかは、経理を行わない限り把握することはできません。

儲かっている状態は利益が出ている状態です。

そして、現金=利益ではないため、経理を行い、集計しなければ、把握できない情報です。

会計コンサルティングは、「社長の頭の中を整理する仕事」です。

社長の頭の儲かっているどうかのイメージと実際に経理を行い計算した数字と実際の取引にズレがないかを確認し、ズレがあれば軌道修正することをサポートし、儲かるようにすることが会計コンサルティングの仕事です。

このズレの調整がないと、ズレたまま、儲からないまま経営してしまい、忙しいけど儲かっていない事態になりかねません。

この会計コンサルティングは、経営者とのコミュニケーションが重要になります。

経営者に十分にヒアリングを行うことがスタートとなる仕事だからです。

クラウド、AIによって、税理士事務所の仕事が無くなると言われています。

しかし、個人的はこの分野は残っていく仕事だと思いますし、経理を申告のための義務として行うのではなく、会計を将来の経営に役立てるために活用し、やりがいある仕事だと感じています。

そして、奥深い仕事で答えのない仕事ですが、弊所では、最も力を入れている分野の業務になります。

経営コンサルティング

経営コンサルティングとは、上記の会計コンサルティングより一歩を経営側に視点を置いた、どうやったら長期的に儲かる企業を作ることができるかという視点がベースにサポートする業務です。

この視点をベースに、何を優先的に行うべきか、どの市場を狙うべきか、どの商品に力を入れるべきか、どのような人材を採用し、育成するかなどを企業としての様々な目標を明確にしたうえで、数字面を含めた達成すべき目標を達成するためにサポートする分野のことを言います。

いわゆる経営コンサルティング分野です。

この経営支援分野は、百戦錬磨の経営者との対話を重ねるためのコミュニケーションスキル、経営に必要な戦略的な思考ができるかどうかなど、数多くの失敗を重ねながら、行うことができるようになるため、身に付ける分野は、幅広く、奥深いものとなるため、一人前になるまでには相当の時間を要することになります。

ここまで出来ればOKというスキルではないため、一生勉強し続ける必要がありますが、この経営コンサルティング分野で成果をだし、活躍できるようになれば、自身を持って、非常にやりがいある仕事を行うことができるようになるでしょう。

経営支援と言っても、その内容、レベル感は事務所によって大きく異なることなる点は注意が必要です。

 

 

税金に関する相談

税金に関する相談や手続きを行うことができるのは、税理士のみです。

この領収書は経費になるのか、このままだといくらの税金になるのか、節税するのはどうやったらいいのか、相続税の相談‥等の税金に関する悩みをお聞きして、税金に関する法律=税法をベースに相談に乗る仕事になります。

税法には多くの種類がありますが、税理士事務所で取り扱う税金に関する法律には以下のようなものがあります。

 

内容業務での重要度
法人税法法人の税金のルールを定める法律
所得税法個人の税金のルールを定める法律
消費税法消費税に関して定める法律
相続税法相続・贈与の税金のルールを定める法律
事務所の方針によって異なる

 

法人税法、消費税法、所得税法は、一般の税理士事務所で良く使う税法になるので、大切な税法で、会計事務所で働く上で避けては通れない税法です。

その他、税金に関する手続きを税理士が代理行う業務や、個人や法人に税務署から税務調査が入る際の立会業務があります。

税金のルールは、色んな捉え方があるので、人によって見解が異なります。

税務調査は、きちんと税金を納めているかを調査するために行われます。

税務調査は、税務調査官が行いますが、税務調査官が絶対正しいとは限りません。

税理士の立会は任意ですが、税務調査官の主張に対して税金のルールに基づき主張するのが「税務調査立会」と言い、これも税理士の大切な仕事の一つになります。

 

融資手続きサポート

この融資手続きは、行っている税理士事務所とそうでない事務所に分かれます。

経営を行っていて、銀行から融資を受けることがあります。

融資を受けるのは、出店するとき、大きな仕入を行う時などですが、どのような使い道で、お金を貸した結果、返済することができるかどうかについて銀行に計画書を提出する場合があります。

この計画書の作成をサポートしたり、融資を受けやすい決算書の作り方などで銀行からの融資を受けやすくするためのサポートを行う業務が融資手続きサポートです。

年末調整

年末調整とは、中小企業の経営者の雇用している従業員の税金計算を行い、税務署や都道府県、市区町村へ届出を行う業務です。

これにより、サラリーマンの税金を確定させることができます。

この年末調整は、会計事務所業界未経験で入所した方がどの事務所でも必ずと言っていいほど行う業務になります。

従業員それぞれの家族情報や生命保険の加入状況、給与金額などを年末調整用のソフトに入力する業務になります。

年末調整は、色んな資料を扱うことになるので、たくさんの資料の見方、整理方法や作業の正確性が重要で、結構大変な作業です。

 

大体、11月~1月末頃まで行う手続きになります。

この手続きは入力業務が全般となりますが、手数が必要とされる業務なので、この時期は忙しくなる事務所が多いかと思います。

よって、確定申告が2月中旬にスタートすることを考えると、11月~翌年の3月15日までが税理士事務所一般的な繁忙期になるかと思います。

 

償却資産税の申告

事業を行っている個人や法人で事業に使っている資産が高額な場合、年に1回、1月末に市区町村へ報告する必要があります。

この報告のことを「償却資産税の申告」と言います。

この償却資産税の申告に基づいて、市区町村が償却資産税が計算し、事業用の資産を持っている方が納めることなります。

税理士事務所の年間スケジュール

以上を踏まえて、一般的な税理士事務所の業務ごとのスケジュールと全体的な忙しさをまとめてみました。

 

6月から少し涼しくなる10月ごろまでが一般的に閑散期になり、比較的ゆとりのある時期です。

この時期に8月の税理士試験の勉強を集中的に行う方も多いようです。

また、11月から翌年3月15日まで年末調整の準備に入り、年末調整が終わったと思えば、確定申告の準備に入るため、繁忙期に突入します。

年明けから繁忙期に本格突入で、残業が増加し、平日以外の出勤が増えてくる事務所も多いようです。

あくまで上記は、一例なので、個人の確定申告、年末調整をあまり行っていない事務所もあるようなので、その場合には、法人の決算申告が集中する4月、5月に繁忙期が集中することになります。

業界未経験者の方にとってつらい時期になるかと思います。
しかし、これらの繁忙期を乗り越えた後は、一段とたくましくなり、自信をもって仕事を行えるようになるかと思います。

このように税理士事務所・会計事務所の特徴としては、年間を通じて平均して仕事があるというよりも、特定の期間に業務が集中します。

ただ、中には、年間を通じて忙しい事務所もあります。

それは、従業員の入退者が多い事務所やお客様が増え続けており、成長している事務所です。

税理士事務所の仕事の特徴としては、個々の従業員に仕事が帰属することが多いため、人の入れ替わりが多く入退者が多いと引き継ぎ業務に追われ忙しくなります。

また、成長している税理士事務所は、新規のお客様が増え続けています。

新規のお客様が増えると、お客様の業種、会社、経理の特徴を理解し、それにあったサービスを検討し、色んなことを試しながら業務を行うため、業務量が増加するため、忙しくなってしまいます。

 

税理士事務所の仕事のまとめ

以上が一般的な税理士事務所・会計事務所の仕事の一覧になります。

行っている業務の範囲も、「記帳代行+税金業務」の事務所もあれば、「記帳代行+税金業務+コンサルティング」を行っている事務所もあり、得意分野、特徴それぞれ大きく異なります。

他にもクラウド会計を使っている事務所かそうでないか‥

所長が若手で30代なのか、高齢で70代なのか‥

飲食店、美容業、医業など特定の業種に特化している事務所なのか‥

行なっている業務内容、事務所の雰囲気は税理士事務所によって全く異なります。

税理士事務所への就職を検討されている方は、ぼんやりとでも良いので、これらの違いを踏まえ、行きたい税理士事務所のイメージをもって就職活動されることをお勧めします。

そして、面接時など聞く機会があれば、できるだけ事務所の特徴を聞いてみられてはいががでしょうか。

この記事が税理士事務所への就職を検討されている方のご参考になれば幸いです。

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