相続の手続きをするには費用がかかります。

専門家に作業を依頼する場合は、手続きそのものの費用だけでなく依頼にかかる費用についても目安を知っておくことが大切です。

そのうえで、適切な資金計画を立てる必要があります。

この記事では、相続手続きにかかる費用について詳しく解説するため、ぜひ役立ててください。

相続手続きの流れは、基本的に以下のとおりです。

1.遺言書の内容を確認する
2.相続人調査を行う
3.相続財産調査を行う
4.遺産分割協議をする
5.各遺産の名義を変更する


1.遺言書を確認する

亡くなった人が生前に遺言書を残しているかどうか確認しましょう。

生前整理が行われていれば、遺言書が作成されている可能性があります。

遺言書を確認する際は、種類に気をつける必要があります。

たとえば、自筆遺言証書なら家庭裁判所による検認が必要です。

遺言書についての問い合わせ先は、公証役場、法務局、家庭裁判所などです。

遺言書に関する相談は、司法書士や行政書士なども対応しています。

なお、遺言書を作成するときは無効にならないよう要件を満たす必要があります。

相続の手続きをする際も勝手に開封してはいけません。

2.相続人調査を実施する

相続人調査は、法定相続人の人数を確定させるための調査です。

亡くなった人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本をはじめとする書類を集め、誰に相続の権利があるのかチェックします。

相続人調査は、相続税の基礎控除額や生命保険金の非課税限度額にも関係する重要なものです。

把握できていない相続人がいる可能性もあるため、入念に調査する必要があります。

相続人調査を実施する際の問い合わせ先は、市区町村役場です。

税理士、司法書士、行政書士などと協力すれば、よりスムーズに調査を進められます。

なお、相続が発生すると被相続人(故人)名義の預金の引き出しに制限がかかるため、注意が必要です。

3.相続財産調査を実施する

相続財産調査では、具体的にどのような財産を相続できるのか確認します。

財産はプラスのものだけでなくマイナスなものもあり、それぞれの内容を詳しく調査することが大切です。

たとえば、プラスの財産としては預貯金や不動産、マイナスの財産としてはローンや債務などがあげられます。

財産にはさまざまな種類があるため、漏れなく把握する必要があります。

財産の種類に応じて、銀行、法務局、市区町村役場、証券会社、保険会社、被相続人(故人)の勤務先などへ確認をとりましょう。

万が一、マイナスの財産が多ければ、相続放棄の検討も必要です。

相続財産調査や税務申告については、税理士に依頼できます。

また、不動産の鑑定評価を行う際は不動産鑑定士に依頼可能です。

4.遺産分割協議を行う

預貯金、不動産、証券などの財産をどのように分割するか協議します。

基本的には、法定相続分の割合をもとに財産を分割します。

たとえば、亡くなった人の子どもが法定相続人になる場合、配偶者と子どもの取り分は半分ずつです。

亡くなった人の親が生きていれば、配偶者は2/3、親は1/3の財産を相続する権利を持ちます。

亡くなった人に兄弟姉妹がいるなら、配偶者は3/4 兄弟姉妹は1/4の財産を相続します。

遺産分割協議書を作成する際は、記載漏れに注意して無効にならないようにしてください。

司法書士、行政書士、税理士などに相談しながら遺産分割協議を行うと安心です。

遺産分割協議書には法定相続人全員の印鑑証明が必要であり、市区町村役場に問い合わせて確認しましょう。

5.各遺産の名義変更を行う

話し合いがまとまったら実際に遺産を分割します。

分割の割合に応じ、保険、自動車、不動産、会員などの名義変更を行いましょう。

法務局、市区町村役場、銀行、証券会社、保険会社、社会保険事務所、陸運局などで手続きする必要があります。

名義変更は、司法書士や行政書士と連携しながら進めるとスムーズです。

なお、相続登記は2024年4月1日から義務化されます。

正当な理由がないにもかかわらず登記を怠ると過料が科される恐れがあります。

【依頼先別】相続手続きの費用の目安

ここでは、相続手続きを専門家に依頼する場合にかかる費用の目安について解説します。

司法書士

司法書士には相続登記を依頼できます。相続登記は、不動産などの名義を変更する手続きです。

司法書士に依頼して相続登記を行うためには、書類取得の実費や登録免許税などに加え、司法書士に支払う費用もかかります。

司法書士に支払う費用の目安は6万円以上です。依頼する司法書士によっても、実際にかかる費用は異なります。

たとえば、案件の内容が複雑であったり相続人の数が多かったりする場合、通常よりも費用が高くなるケースもあります。

また、財産の価値によっても費用は変動するため、要注意です。相続する財産の価値が高ければ、司法書士に支払う費用が10万円程度になる可能性もあります。

行政書士

行政書士は、相続に関わるさまざまな手続きを代行できます。

そのため、具体的に何を依頼するかによって、行政書士へ支払う費用は変化します。

行政書士の基本報酬の目安は6万円以上です。

遺産分割協議書の作成は3万円から、預貯金に関する手続きは3万円から、有価証券の相続の手続きは3万5,000円からが目安となっています。

ただし、相続手続きの中には行政書士が対応できないものもあります。

具体的には、不動産の相続登記は司法書士しかできません。

不動産の相続登記も必要な場合は、別途司法書士にも依頼する必要があります。

先に行政書士へ依頼していれば、司法書士を紹介してもらえる可能性もあります。

税理士

税理士に対しては、税金の申告書の作成を依頼できます。

税理士は税の専門家であり、税金の申告書を代行して作成する権限が特別に認められている資格です。

そのため、相続にあたって税金の申告書の作成を専門家に依頼したい場合は、必ず税理士に依頼する必要があります。

税理士に税金の申告書の作成を依頼する際の費用の目安は、遺産の総額の0.5~1.0%程度です。

実際に依頼する税理士によっても、設定されている費用の割合が違います。

なお、税金にはさまざまな種類があり、税理士によって得意な分野は異なります。

相続を専門に扱っており、正しい知識のもとで税務調査に対応することができる、節税につながる提案ができる税理士を選ぶことが大切です。

銀行

銀行には、財産目録の作成や遺産分割協議書に基づく遺産分割手続きなどの代行を依頼できます。

銀行にもよりますが、相続に関するサービスをまとめて提供しているところが多いです。

対応してもらえる手続きの幅が広いため、他の依頼先よりも費用が割高になる傾向があります。

銀行に相続の手続きを依頼する場合の具体的な費用の目安は、約100万円です。

なお、専門家による手続きが必要な場合は、対応できる専門家を紹介してもらえます。

費用を抑えるためには、手続きに応じて最適な依頼先を選択する必要があります。

【財産の種類・手続き別】相続手続きの費用の目安

ここでは、財産の種類や手続きごとの費用の目安について具体的に解説します。

不動産

不動産を相続するためには相続登記が必要です。

相続登記の手続きをする際は、登録免許税がかかります。

登録免許税は、不動産を登記する際に必ずかかる費用です。

ただし、不動産を取得した経緯や理由によってそれぞれ異なる税率が設定されています。

相続によって不動産を取得した場合にかかる登録免許税は、不動産の固定資産評価額の0.4%です。

たとえば、相続した不動産の固定資産評価額が1,000万円であれば、登録免許税は4万円です。

なお、100円未満の端数が発生した場合は切り捨てとなります。

預貯金

相続の際は、亡くなった人の銀行口座に対しても手続きが必要です。

亡くなった人の銀行口座は凍結されており、解除するには必要書類を提出しなければなりません。

必要書類は銀行によって異なるうえに、種類も多いです。

そのため、司法書士や行政書士などの専門家へ依頼するケースが一般的になっています。

凍結された銀行口座を再び使えるようにする作業の代行にかかる費用の目安は、5~10万円程度です。

ただし、実際の依頼先によっても金額は異なります。安心して依頼できる専門家を選び、納得したうえで依頼する必要があります。

自動車

自動車を相続する場合は移転登録手数料や車庫証明の取得費用などが必要であり、かかる費用の目安は1万円弱です。

専門家に依頼して手続きを進める場合は、2~5万円程度の費用がかかります。

ただし、実際の費用は具体的な依頼内容によっても異なるため、よく確認しましょう。

たとえば、車庫証明の取得代行やナンバープレートの変更の有無によって、代行の費用は変化します。

遺産分割協議書

遺産分割協議書は、遺産分割協議で取りまとめた内容を記載する書類です。

遺産分割協議書は相続に関する重要な書類であり、必要な内容を正しく記載する必要があります。

自分で作成しても構いませんが、適切に作成するためには専門家に依頼したほうが無難です。

そのため、多くの人が専門家に依頼して遺産分割協議書を作成しています。

遺産分割協議書の作成を専門家に依頼する場合にかかる費用の目安は、5~10万円程度です。

有価証券

有価証券については、遺産分割協議書を作成して詳しく記載する必要があります。

遺産分割協議書の作成を専門家に依頼する場合の費用は依頼先によっても幅がありますが、最低でも5万円以上かかります。

戸籍・住民票

戸籍や住民票の取得にかかる手数料は数百円です。

ただし、取得先が多かったり平日に時間をとれなかったりすると、自分で集めるのが難しい可能性もあります。

相続ではさまざまな書類が必要になるため、注意が必要です。

手間や時間をかけずに書類を取得したい場合は、専門家に依頼するとスムーズになります。

戸籍や住民票などの取得を専門家に依頼する際にかかる費用の目安は、2~3万円程度です。

注意点:税理士などの相続手続きパッケージを利用する前に

相続手続きについてはパッケージでサービスが提供されている場合もあります。

ここでは、事前に確認したい注意点を解説します。

契約前にどこまで依頼できるのか確認する

依頼先によって、パッケージに含まれている内容はそれぞれ異なります。

具体的にどのような業務が含まれているのか、契約前に必ず確認しましょう。

自分たちに必要な内容をカバーできていなければ別途費用がかかる恐れがあります。

見積もりをとったうえで、サービスの内容を正確に把握してください。

相続トラブルで費用があがる可能性あり

相続では揉め事が起こるケースもあります。

たとえば、相続人同士の関係が良好ではないために相続の手続きにおいてトラブルが生じた場合、さらに費用がかかる可能性があります。

パッケージの範囲内で相続の依頼ができないケースもあるため、要注意です。

相続の費用を抑えるコツと税理士などへ依頼前に気を付けたいポイント

ここでは、専門家へ依頼する前に抑えておきたいポイントについて解説します。

自分たちでやれば費用負担は軽減される

相続の手続きを自分たちで行えば、専門家に報酬を支払う必要はありません。

登録免許税や必要書類の取得にかかる実費などを支払うだけで手続きを進められます。

ただし、相続の手続きには専門知識が必要であり、自分たちで対応しようとすると時間がかかる可能性があります。

慣れない作業に苦労しやすい

相続手続きにはさまざまな人やものが関係しており、時間と手間がかかります。

特に仕事をしている人は平日の日中に時間をとりづらく、手続きをスムーズに進めにくいです。

また、専門知識も必要であるため、専門家に依頼したほうが手続きを確実に進めやすくなります。

まとめ

相続の手続きにはさまざまな作業が必要であり、それぞれにかかる費用も異なります。

内容を理解したうえで正しく手続きができるよう、準備を整えることが大切です。

正確かつスムーズに手続きを進めるためには、専門家への依頼も積極的に検討しましょう。

佐藤修一公認会計士事務所では、相続に関するさまざまな相談が可能です。

初回相談は無料になっております。さまざまな手続きについて費用の目安が気になっている場合も、ぜひ相談してください。

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