はぐくみ年金のメリット徹底解説|小規模企業に最適な退職金制度

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佐藤修一

こんにちは。税理士法人Accompany代表の佐藤修一です。

退職金制度や福利厚生を整えたいけれど、
「自社に合った制度が見つからない」「手間やコストが心配」
そんな悩みを抱える経営者の方も多いのではないでしょうか。

はぐくみ年金は、企業規模や業種に関わらず導入できる、柔軟で安心感のある企業年金制度です。
しかも、従業員だけでなく、経営者自身の老後資金づくりにも使えるというメリットもあります。

この記事では、はぐくみ年金を導入することで得られる主なメリットをわかりやすくご紹介します。
制度を検討するうえでの判断材料として、ぜひ参考にしてみてください。

はぐくみ年金を導入するメリット

早速、はぐくみ年金を導入するメリットを紹介していきます。

1.社員の“働き続けたい理由”になる

はぐくみ年金を導入することで、会社に退職金制度があるという安心感を持ってもらえます。
これにより、社員のモチベーションや定着率アップにつながるのはもちろん、採用時のアピール材料にもなります。

はぐくみ年金は、「ここでなら安心して働けそう」と思ってもらえる要素のひとつだと思います。
社員にとって、自分の未来も見据えながら働ける環境をつくることができます。

2.経営者や役員も加入できる

一般的な退職金制度では対象外になりやすい経営者や役員も、自ら掛け金を積み立てられるのが特徴です。
老後資金の準備ができるのはもちろん、掛金を損金にでき、退職金として受け取ることができるため、節税面でもメリットがあります。

「社員のためだけでなく、自分の将来のためにもなる制度」として、導入の価値があると思います。

3.企業規模・業種を問わず導入可能

通常の確定給付企業年金は大企業向けのことが多いですが、はぐくみ年金は中小企業でも導入しやすい柔軟な制度設計になっています。
就業規則の変更や複雑な制度設計が不要で、すでに用意された制度にそのまま加入する形式なので、特別な準備はいりません。

さらに、掛金は月1,000円から始められて、社員ごとに金額設定も可能です。
会社の規模や財務状況に合わせて柔軟に設計できるので、従業員が数名の事業所でも安心して導入できます。

事務手続きもシンプルで、専任担当者がいなくても運用しやすいのも、業種・規模を問わず選ばれている理由のひとつです。
これにより、規模や業種にかかわらず幅広い会社で利用できます。

4.掛金の設定が柔軟で始めやすい

前述したとおり、掛金は月1,000円単位で設定可能で、給与や役員報酬の20%(上限40万円)まで拠出できるため、小規模企業でも無理なく導入しやすいです。
社員ごとの金額調整や、会社の経営状況に合わせて無理なく設計できるのも魅力です。

さらに、原則として年に2回(役員は年1回)掛金の見直しができるため、状況に応じて調整しやすいのもポイントです。

5.安心の元本保証でリスクが少ない

はぐくみ年金では、積み立てた資金は大手生命保険会社の一般勘定で安全に運用されます。
また、制度のしくみとして、もし給付に必要な金額が不足した場合には、事業主がその差額を補てんするルールになっており、加入者にとっては実質的な“元本保証”がある安心な制度です。
これは市場運用を前提とした確定拠出年金などにはない特徴です。

もちろん、補てんが必要になる場合は企業側にとっては一定のリスクではありますが、運用先が安定しているため、そのリスクはかなり小さく抑えられています。

将来のための積立制度でありながら、社員にとっては「損をする不安がほぼない」、企業にとっても「無理のない形で備えられる」バランスのよい仕組みです。

「資産運用はちょっと不安…」という社員でも安心して参加できる制度設計になっています。

6.非正規社員も加入可能

厚生年金の被保険者であれば、パートやアルバイトなどの非正規社員も加入できるのが特徴です。
多様な働き方が増えるなか、幅広い社員に退職金制度を提供できるのは、企業の大きな強みになります。

7.途中で退職・休職しても受け取れる

はぐくみ年金は、加入から1か月以上経過していれば、退職や休職などで会社を離れても積み立てたお金は全額受け取り可能です。

これにより、出産・育児・介護などライフイベントがあっても安心です。
社員一人ひとりの人生設計に寄り添った福利厚生制度として機能します。

8.他の年金制度と併用できる

はぐくみ年金は、企業型確定拠出年金(企業型DC)やiDeCo、中小企業退職金共済などと併用可能です。
すでに他の退職金制度を導入している企業でも、従業員や経営者の将来設計に合わせて、プラスアルファの老後資金づくりができるのが魅力です

ただし、確定拠出年金やiDeCoと併用する場合は、それぞれに掛けられる金額に上限があります。

たとえば、はぐくみ年金に加入している方がiDeCoを使う場合、以前は月12,000円が上限でしたが、2024年12月の制度改正により、月20,000円まで引き上げられました。
これは「他制度と併用する人も、もっと老後資金を積み立てられるように」と設けられた新しいルールです。

なお、iDeCo・企業型DC・はぐくみ年金などの合計掛金の上限は月55,000円。制度ごとのバランスを見ながら設計することがポイントになります。

とはいえ、どれか一つに絞らずに柔軟に選べるのは、はぐくみ年金の大きな強みです。

9.受給方法が選べる

はぐくみ年金は、積み立てたお金を年金形式で受け取るだけでなく、一時金として受け取ることも可能です。

  • 年金形式
    生活費の安定を重視したい場合は、毎月または一定期間にわたって分割で受け取る「年金形式」が選べます。
    老後の収入源として計画的に利用でき、長く安心して生活を支えます。
  • 一時金形式
    一方で、まとまったお金が必要なときや、住宅購入や教育資金などのライフイベントに合わせて、一括で全額または一部を受け取ることも可能です。
    自由度が高く、使い道に応じて柔軟に対応できます。

社員のライフプランに合わせて、より使いやすい給付方法を選べるのは大きなメリットです。

他の退職金制度との違いは?

はぐくみ年金は、他の代表的な退職金制度と比べて、導入のしやすさと安心感のバランスが取れた制度です。
ここでは、中小企業でよく比較対象となる制度と並べて、その特徴を見てみましょう。

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比較項目はぐくみ年金中小企業退職金共済(中退共)企業型確定拠出年金(企業型DC)確定給付企業年金(DB)
導入のしやすさ制度設計・就業規則の変更不要/小規模でも可申込は簡単/掛金や運用は共通で柔軟性なし規約作成・届出・運営管理が必要制度設計が複雑/届出も必要/中小企業には重い
経営者・役員の加入○可能×不可×不可×不可
掛金の柔軟性月1,000円~/個人ごとに設定可能月額5,000円~/個人ごとに設定可能だが公平性に配慮が必要会社が拠出(上限あり)/変更には制限あり定めた給付額に基づいて会社が拠出
短期退職者の取り扱い加入1か月以降であれば受取可能12か月未満の退職は不支給原則60歳まで引き出せない一定期間未満だと給付なしの場合あり
元本保証・リスク負担○企業が補てん(実質元本保証に近い)△条件付きで元本保証×市場運用で損失リスクあり○企業が責任を負う(ただし負担重)
受け取り方法の選択肢年金形式 or 一時金(選べる)一時金中心(選択不可)年金形式が基本/一時金にできる商品もあり給付設計によるが柔軟性は少なめ
運用の主体保険会社
(安定運用)
中退共
(安定運用)
従業員本人が運用
(投資信託など)
年金基金等
(企業の責任で管理)

はぐくみ年金は、他の年金制度と比較すると下記のような特徴があります。

  • 制度設計・管理がいらず、導入のハードルが非常に低い
  • 短期離職者やパートも対象にできる柔軟な仕組み
  • 元本保証に近い仕組みで、従業員にとって安心感が強い
  • 経営者や役員も一緒に加入できるのが大きな特徴

こうした特徴から、以下のような企業に特におすすめです。

  • 制度の手間や負担をかけずに、退職金制度を整えたい
  • 経営者自身の退職準備も視野に入れたい
  • 従業員規模が少なく、柔軟な運用を求めている
  • 福利厚生として、安心感のある制度を用意したい

はぐくみ年金導入の注意点

ここまで、はぐくみ年金のメリットや特徴を説明してきましたが、導入の手間が少ないとはいえ、いくつか押さえておきたいポイントがあります。

掛金の運用で不足が出た場合、企業が補てんするため完全な元本保証ではない

はぐくみ年金は保険会社が掛金を安定的に運用しますが、運用成績が予想を下回った場合には企業が不足分を補てんする仕組みがあります。これは、企業にとって一定のリスク要因となります。
業績悪化や資金繰りが厳しい時期には、予期せぬ負担が発生する可能性があることを理解しておく必要があります。

他の年金制度との併用時は掛金上限やルールの確認が必要

中退共やiDeCoなど他の年金制度と併用する場合は、掛金の合計上限や制度ごとのルールを事前に確認し、適切に調整する必要があります。これにより、制度の重複や掛金超過を防ぐことができます。

掛金の変更は年2回までで、頻繁な変更は避けることが望ましい

掛金の見直しは年2回まで可能ですが、頻繁な変更は望ましくないため、計画的に運用することが大切です。

制度の設計や運営は簡単とはいえ、導入前には専門家に相談し、制度内容や手続きについて十分理解しておくことをおすすめします。

はぐくみ年金についてまとめ

はぐくみ年金は、小規模から中堅企業まで幅広く導入しやすい退職金制度です。
制度設計や就業規則の変更が不要で、経営者や役員も加入できる点が大きな魅力だと思います。
掛金は月1,000円から従業員ごとに設定でき、年2回まで見直しが可能なので、経営状況に合わせて柔軟に運用できます。
掛金は全額損金算入できるため、節税効果も期待できます。

また、保険会社が安定した運用を行い、万が一の際には企業が不足分を補てんする仕組みがあるため、リスクを抑えつつ安心して導入できるのもポイントです。
さらに、中退共やiDeCoなど他の制度とも併用でき、従業員にとっても会社にとっても使いやすい退職金制度といえます。

退職金制度の新設や見直しを検討している企業には、ぜひ一度検討していただきたい制度です。

佐藤 修一

税理士法人Accompany 代表

(九州北部税理士会福岡支部所属:登録番号028716) 公認会計士・税理士。全国の中小企業にこれまでクラウド会計導入実績累計300社超、クラウド会計導入率70%超。2022年freee西日本最優秀アドバイザー、マネーフォワードプラチナメンバー。 (株)インターフェイス主催第18回経営支援全国大会優秀賞。 全国各地の中小企業に対して、会計から利益とキャッシュを稼ぐ力を高め、キャッシュフローを重視した節税提案、利益とキャッシュを稼ぐ力を高めるサポートや事業再生支援を行っている。 総勢30名のスタッフで「Warm Heart(温かい心)&Cool Head(冷静な頭)」をコンセプトに個々のお客様ごとにカスタマイズしたお客様に寄り添うサービスを提供している。