事業をされている方で、青色申告の場合、確定申告で65万円の控除を受けるために貸借対照表を作成し、提出しなければなりません。

貸借対照表を作成するにあたって、以下のような質問をいただくことあります。

貸借対照表の作成の際の多いご質問で、現金がマイナスになってしまっている…

現金が実際の金額より大きくなってしまっている…

 

会計ソフトに年間分をまとめて入力する場合、貸借対照表の現金残高が実際の現金残高と一致しないこと自体はよくあることです。

 

これまで500人以上の確定申告書の作成をお手伝いしてきましたが、正直、現金残高は一致する方が少ないです。

 

不一致が生じていて、現金残高を把握していない場合には、貸借対照表の現金がゼロになるよう、貸借対照表の現金残高の金額を以下の仕訳を会計ソフトに入力すると貸借対照表の現金はゼロになります。

 

現金残高がプラスの場合の仕訳 (借方)事業主貸 ×× / (貸方) 現金 ××

現金残高がマイナスの場合の仕訳 (借方)現金 ×× / (貸方) 事業主借 ××

 

現金の不一致が生じても税務調査で問題にならないのかと気になる方も多いかと思います。

これまでの経験上、税務調査で現金残高の不一致が生じていても大きな問題になることはほとんどありませんでした。

そして、これから詳しく説明しますが、貸借対照表の現金と実際の現金の不一致が少額の場合にはそんなに気にする必要はありません。

不一致が生じる原因は様々ですが、不一致が多額になる場合には、その原因をしっかり把握する必要があります。

 


なぜなら、手許現金がほとんどないのに貸借対照表の現金が多額になっている場合、又は多額のマイナスになっている場合など貸借対照表の現金と実際の現金のズレが多額の時は、経理処理に大きなミスが生じている可能性があります。

そして、特に貸借対照表の現金残高が大きなマイナスになっている場合には、事業が大赤字になっている可能性があるため注意が必要です。

 

これらは、いずれも重要な問題につながりかねないため、なぜ貸借対照表の現金が多額のプラスになっているのか、マイナスになっているのかを明確にすることが必要です。

よって、本ブログでは、現金残高の不一致の原因について要因別に説明してきたいと思います。

 

 

現金不一致の場合に想定される経理ミス

貸借対照表の現金<実際の現金になっている時

貸借対照表の現金より実際の現金が大きくなっている場合には、以下のような経理ミスが生じている可能性があります。

      1. 現金の売上がダブっている
      2. 現金経費、現金給与の支払い(未払費用、未払金)、現金仕入支払いが漏れている

この2つが生じてしまうと所得が実際より多額になってしまっており、支払うべき税金より高くなるため注意が必要です。

貸借対照表の現金>実際の現金になっている時

現金がマイナスになる場合も含みますが、貸借対照表の現金が実際の現金より小さくなっている場合には、以下のような経理ミスが生じている可能性があります。

    1. 現金の売上が漏れている
    2. 現金払い、クレカ払い、預金払いなどの経費がダブっている

 

この2つが生じてしまうと所得が実際より少額になってしまっており、支払うべき税金より少なくなってしまいます。

 

その他「現金」、「事業主貸」、「事業主借」の勘定科目の使い方を間違っている時に、貸借対照表の現金と実際の現金の差額が生じます。

「現金」:純粋に事業にかかるお金が動いた時に使う勘定科目
「事業主貸」:事業主の財布や口座にお金を入れたときに使う勘定科目
「事業主借」:事業主の財布や口座からお金を出したときに使う勘定科目

これらをしっかり使い分け、正確に経理処理するのは、年間の経理をまとめて行う場合には至難の業です。

よって、お勧めは、「事業主貸」、「事業主借」を一切使うことなく、全て「現金」を使って経理処理を行う方法です。

確定申告を行うことによって、事業が儲かっているかどうかについてぼんやりした情報を把握することが可能です。

ただ、確定申告書から見えてくるのは、ぼんやりした情報に過ぎないのです。

 

 

「事業主貸」、「事業主借」を使わず、全て「現金」の勘定科目を使うことによって、事業のリアルな儲けが十分なのかそうでないのかがはっきりと明確に見えてくるようになります。

つまり、貸借対照表の現金と実際の現金のズレ=儲けに関する情報に変化するのです。

この場合の貸借対照表の現金と実際の現金のズレからどのような情報が見えてくるのかについて説明していきます。

 

経理処理にミスがない場合の現金のズレの原因

貸借対照表の現金<実際の現金になっている時

注意すべきなのが、現金がマイナスになっている場合も含みますが、貸借対照表の現金<実際の現金となっている場合です。

この場合には、事業が赤字になっている可能性があります。

赤字とは、所得がマイナスになっている時だけでなく、所得がプラスの場合でも、所得<生活費となっている時も含みますのでご注意ください。

つまり、1年間に必要な生活費が稼げていない状態になっているのです。

そして、貸借対照表の現金と実際の現金の差額は、1年間で事業を回すために不足が生じ、補填した金額となります。

貸借対照表の現金>実際の現金になっている時

一方、貸借対照表の現金>実際の現金となっている場合には、不一致額が事業からの儲けを年間の生活費に回した金額となります。

実際の手許現金がほとんどない場合には、貸借対照表の現金残高が、年間の生活費(使ったお金)の金額になります。

一方、「使えるお金」である1年間の事業の儲けをベースとした生活費に回すことができるお金の計算方法は、以下の式で計算することができます。

使えるお金=所得金額+減価償却費+青色申告特別控除(65万円or10万円)+青色専従者給与-借入返済額

 

上記で計算した「使えるお金」より、貸借対照表の現金と実際の現金の不一致額(手元現金がない場合には貸借対照表の現金残高)が小さい場合には、儲けの範囲内で生活できていることになり、特に問題ありません。

一方、上記で計算した「使えるお金」より、貸借対照表の現金と実際の現金の不一致額(手元現金がない場合には貸借対照表の現金残高)が大きい場合には、儲けの範囲内で生活できていないことになり、注意が必要です。

 

現金不一致のまとめ

以上のように現金不一致の原因は様々です。

貸借対照表を作るという目的とはずれてきますが、現金の不一致の原因を把握することで時に重要な情報が見えてくることがあります。

「現金」「事業主貸」「事業主借」を利用せず、全て「現金」で入力すると、経理ミスや儲けが足りているかなど情報がより明確になります。

特に、儲かったお金が足りているかどうかの情報を把握することは、非常に重要です。

お客様より「なぜ、お金が足りないか分かりません」との質問をいただくことがありますが、

その理由は、使えるお金以上に使っているからです。

「使えるお金」と「使ったお金」の両方を明確にすることでお金が足りない理由が見えてきます。

複雑な計算が含まれてますが、ぜひ、試してみてください。